平成28年 司法試験 短答式 刑法 第10問 解説
問題
公務執行妨害罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。
- ①窃盗犯人甲は,その窃盗行為を目撃した警ら中の制服警察官乙からその窃盗の機会に現行犯逮捕されそうになり,逮捕を免れるため,乙に対して,その反抗を抑圧するに足りる程度の暴行を加えて抵抗し,そのまま逃走した。甲には事後強盗罪が成立し,これに公務執行妨害罪は吸収されるから,同罪は成立しない。
- ②甲は,税務署の職員乙が甲宅において税務調査をしていたところ,乙の近くでその調査を補助していた民間人である丙に対し,「殺すぞ。」などと危害を加える旨申し向け,これにより乙の職務の執行を一時中断させた。甲は乙を直接脅迫したものではないから,甲には公務執行妨害罪は成立しない。
- ③甲は,制服警察官乙から職務質問を受けている丙の右手をつかんで引っ張り,その場から一緒に走って逃走したところ,これを追い掛けた乙が,走りながら,丙の肩をつかもうとして手を伸ばしたが,その肩をつかめずにバランスを崩して路上に転倒した。甲の丙に対する行為は乙に対する暴行とはいえないから,甲には公務執行妨害罪は成立しない。正解
- ④甲は,警ら中の制服警察官乙が職務質問をしようとしてきたことから,これを免れるため,乙の職務質問開始前に乙に暴行を加え,乙がひるんだ隙に逃走した。乙が職務質問を開始する前に暴行を加えたにすぎないから,甲には公務執行妨害罪は成立しない。
- ⑤甲は,制服警察官乙から丙が職務質問を受けているのを見て,これをやめさせようと拳大の石塊を乙に向けて投げ,その臀部に命中させたが,乙が職務質問を中断することはなかった。現実に乙の職務の執行を妨害するに至っていないから,甲には公務執行妨害罪は成立しない。
解説
要点
公務執行妨害罪の暴行・脅迫は公務員の身体に直接加えられる必要はないが、職務執行中の公務員に向けられたもの(間接的に影響を与えるもの)と評価できることを要する。第三者への有形力行使の結果として公務員が自ら転倒したにすぎない場合は暴行に当たらない。他方、補助者への脅迫、職務執行着手直前の暴行、現実の妨害結果がない場合はいずれも成立を認めるのが判例の立場である。
結論
正しいのは選択肢3である。職務質問を受けていた第三者を引っ張って逃走した行為は当該第三者に向けられたものであり、追跡してきた警察官が自らバランスを崩して転倒したにすぎない場合には、行為者の行為を警察官に対する暴行と評価することはできず、公務執行妨害罪は成立しない。他の選択肢はいずれも「成立しない」と結論付けているが、判例の立場では成立を認める場面であり誤りである。
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出典:法務省「平成28年司法試験」(問題文は表示のため改行等を整えています)。解説は AI を用いて作成し、条文との照合と再検証を経ていますが、誤りを含む可能性があります。
