SaySayLaw無料で演習する

平成27年 司法試験 短答式 刑法 第7問 解説

問題

学生Aと学生Bは,次の【事例】における甲の罪責について後記【会話】のとおり検討している。【会話】中の①から⑧までの( )内から適切な語句を選んだ場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。【事 例】甲は,乙に対し,殺意をもって,拳銃の引き金を引いて銃弾1発を発射し,乙の胸部に命中させて乙を殺害した。甲が拳銃で乙に狙いを付ける直前,乙は,甲に対し,殺意をもって,拳銃で狙いを付けて引き金を引こうとしていたものの,甲が発射した銃弾によって死亡したことから,引き金を引くには至らなかった。なお,甲は,乙が拳銃で自己に狙いを付けていることを知らなかった。【会 話】学生A.甲の行為は,殺人罪の構成要件に該当する。そして,正当防衛の成立要件として,防衛の意思が必要であると考えると,甲には①(a.殺人既遂罪が成立し・b.正当防衛が認められ),防衛の意思は不要であると考えると,甲には②(c.殺人既遂罪が成立する・d.正当防衛が認められる)ことになる。学生B.最近では,防衛の意思必要説,不要説のいずれからも,甲には殺人未遂罪が成立し得るという見解が有力に主張されている。防衛の意思必要説からの殺人未遂罪説は,違法性は行為無価値と結果無価値の総合から構成されるという違法二元論を根拠とし,③(e.行為無価値の存在と結果無価値の欠如・f.行為無価値の欠如と結果無価値の存在)を理由に,一方,防衛の意思不要説からの殺人未遂罪説は,④(g.適法・h.違法)な結果が発生する具体的危険があることを理由に,それぞれ殺人未遂罪が成立し得ると説明している。学生A.しかし,防衛の意思不要説からの殺人未遂罪説に対しては,⑤(i.「侵害はよいが侵害を試みることは許されない」・j.「侵害を試みることはよいが侵害は許されない」)ことになるとの批判がある。学生B.もともと,防衛の意思不要説からの殺人未遂罪説が問題にしている危険は,⑥(k.別のあり得た違法結果・l.当該結果)を発生させる危険ではなく,⑦(m.別のあり得た違法結果・n.当該結果)を発生させる危険と言われている。だから,その批判は当たらない。学生A.いずれにせよ,殺人未遂罪説は,実際に乙が死亡しているのだから,罪刑法定主義上,問題があると思う。学生B.刑法第43条は,「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった」と規定しており,これを,⑧(o.構成要件的結果・p.構成要件に該当する違法な結果)が発生しなかったという意味に理解すれば,文言解釈としての問題はないと思う。
  1. ①①a ②d ③e ④h ⑤i ⑥k ⑦n ⑧o
  2. ②①b ②c ③e ④g ⑤j ⑥k ⑦n ⑧p
  3. ③①b ②c ③f ④g ⑤j ⑥k ⑦n ⑧o
  4. ④①a ②d ③e ④h ⑤i ⑥l ⑦m ⑧p正解
  5. ⑤①a ②d ③f ④h ⑤j ⑥l ⑦m ⑧p

解説

要点
偶然防衛では、防衛の意思必要説なら既遂罪、不要説なら正当防衛成立が原則の帰結だが、近年の有力説はいずれの立場からも殺人未遂罪の成立を説明する。未遂罪説は『既遂結果自体は適法だが、行為時点では別のあり得た違法結果(侵害されるという結果)が発生する危険があった』という構成で、刑法43条の『遂げなかった』を『構成要件に該当する違法な結果が発生しなかった』と読み替える点がポイント。

結論

正解は選択肢4(①a②d③e④h⑤i⑥l⑦m⑧p)である。事例は典型的な偶然防衛(甲は乙が自分を狙っていたことを知らずに発砲し、結果的に急迫不正の侵害を排除した形になった事案)であり、防衛の意思必要説・不要説それぞれの帰結と、それに代わる近年の有力な殺人未遂罪説の論理構造を正確にたどれば選択肢4に行き着く。

この分野を、あなたの弱点に合わせて演習
間違えた問題は忘れかけた頃に出し直し。論文の AI 採点も(Pro)。
無料で始める

出典:法務省「平成27年司法試験」(問題文は表示のため改行等を整えています)。解説は AI を用いて作成し、条文との照合と再検証を経ていますが、誤りを含む可能性があります。