平成24年 司法試験 短答式 刑法 第7問 解説
問題
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討し,誤っているものを2個選びなさい。
1.甲は,Aを川の中に突き落として溺死させようと思い,橋の側端に立っていたAを突き飛ばしたところ,Aは落下する途中で橋脚に頭部を強打して即死した。甲には殺人既遂罪が成立する。
2.甲は,乙に対し,Aを殺害するよう唆したところ,乙は,その旨決意し,夜道で待ち伏せした上,歩いてきた男をAだと思って包丁で刺し殺したが,実際には,その男はBであった。甲には殺人既遂罪の教唆犯が成立する。
3.甲は,隣人Aの居宅の玄関前に置いてあった自転車を,Aの所有物と認識して持ち去ったが,実際には,同自転車は無主物だった。甲には遺失物等横領罪が成立する。
4.甲は,駐車場に駐車中のA所有の自動車を見て,Aに対する腹いせに傷つけてやろうと思って石を投げたが,狙いがそれて,その隣に駐車中のB所有の自動車に石が当たってフロントガラスが割れた。甲には器物損壊罪が成立する。
5.甲は,乙との間で,Aに暴行を加えることを共謀したところ,乙は,Aに対して暴行を加えている最中に興奮のあまり殺意を生じ,Aを殺害してしまった。甲には傷害罪の共同正犯が成立するにとどまる。
※ 該当するものを2個選ぶ問題です。2個の組合せを選んでください。
- ①1と2
- ②1と3
- ③1と4
- ④1と5
- ⑤2と3
- ⑥2と4
- ⑦2と5
- ⑧3と4
- ⑨3と5正解
- ⑩4と5
解説
要点
法定的符合説は同一構成要件内の錯誤(客体の錯誤・方法の錯誤)や因果経過の錯誤を故意阻却事由としないが、客観的構成要件要素(他人の物であること等)自体が欠ける場合は錯誤論では処理できず、未遂処罰規定の有無が決め手となる。また暴行の共謀に基づき死亡結果が生じた場合、殺意のない共謀者には傷害致死罪の共同正犯が成立する。
結論
誤っている記述は3と5であり、選択肢9(3と5)が正しい。3は客体が無主物で「占有を離れた他人の物」という構成要件要素を欠くため同罪は成立せず(未遂処罰規定もない)、5はAが死亡している以上、傷害罪ではなく傷害致死罪の共同正犯が成立するはずだからである。
この分野を、あなたの弱点に合わせて演習
無料で始める間違えた問題は忘れかけた頃に出し直し。論文の AI 採点も(Pro)。
出典:法務省「平成24年司法試験」(問題文は表示のため改行等を整えています)。解説は AI を用いて作成し、条文との照合と再検証を経ていますが、誤りを含む可能性があります。
