平成28年 予備試験 短答式 刑法 第10問 解説
問題
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。
- ①甲は,警察官から職務質問をされそうになったのでその場から急いで立ち去ろうと考え,たまたま路上に駐車されていた他人所有の自動車に乗り込み,適当な場所で乗り捨てるつもりで,同自動車を運転してその場から走り去った。この場合,甲には,不法領得の意思が認められ,窃盗罪が成立する。正解
- ②甲は,タクシーの売上金を奪おうと考えて,乗客を装ってタクシーに乗り込み,行き先を指定して人気のない場所に誘導した上,同所で,乗車料金を請求してきた運転手の首元に鋭利なガラス片を突き付けて売上金を渡すよう要求したが,同運転手から抵抗されて売上金を手に入れることができず,そのままその場から立ち去った。この場合,甲には強盗未遂罪のみが成立する。
- ③甲は,視力回復の効果が全くない飲料について,その効果が絶大で入手困難なものと偽って,信じた客にこれを販売し,その代金として現金の交付を受けたが,その販売価格は適正,妥当なものであった。この場合,甲には詐欺罪は成立しない。
- ④甲は,乙がその同居の親族から盗んできたカメラを,盗品であると知りながら乙から購入した。この場合,乙は,窃盗罪についての刑が免除されることから,甲には盗品等有償譲受け罪は成立しない。
- ⑤甲は,乙所有の土地について,価格が暴落すると偽って,これを信じた乙との間で,時価の半額で同土地を買い受ける旨の売買契約を締結した。この場合,その売買契約が成立したことのみをもって,甲には詐欺既遂罪が成立する。
解説
要点
不法領得の意思は「権利者排除意思」と「利用処分意思」の両方が必要だが、一時使用でも相当期間乗り回し乗り捨てる意図があれば権利者排除意思が認められ窃盗罪が成立する。詐欺罪は、価格が相当であっても、真実を告げれば交付しなかったといえる重要事項を偽って財物を交付させれば成立し、財物詐欺の既遂時期は現実の交付・処分行為があった時点である。
結論
選択肢1が正しい。他人所有の自動車を、警察官から逃げるためとはいえ乗り込み、乗り捨てるつもりで走り去った甲には、権利者排除意思と利用処分意思の双方が認められ、判例上不法領得の意思が肯定されて窃盗罪が成立する。
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出典:法務省「平成28年予備試験」(問題文は表示のため改行等を整えています)。解説は AI を用いて作成し、条文との照合と再検証を経ていますが、誤りを含む可能性があります。
