平成28年 司法試験 短答式 刑法 第20問 解説
問題
次の【事例】に関する後記アからエまでの各【記述】を判例の立場に従って検討した場合,正しいものの組合せは,後記1から5までのうちどれか。【事 例】甲は,内縁の妻Aと同居していたところ,遊興費に窮し,A所有のドレス20着及び指輪1個と,A管理のA名義のクレジットカード1枚(その規約上,会員である名義人のみが利用でき,他人への譲渡,貸与等が禁じられ,また,加盟店は,利用者が会員本人であることを善良な管理者の注意義務をもって確認することが定められている。)を,Aの部屋から盗み出した。甲は,丙にドレス及び指輪の売却を仲介してもらおうと考え,これらの盗品を丙方に運ぼうとした。しかし,甲は,ドレスの数が多く一人で運ぶのが困難であったため,乙に対し,ドレスと指輪が盗品であることを話した上で,丙宅への運搬を手伝ってほしいと頼んだ。乙がこれを了解したので,甲及び乙は,指輪とドレスのうち10着を甲が,残りのドレス10着を乙が,それぞれ運転する自動車に載せて丙宅へ運ぶこととし,これらの盗品を丙宅へ運んだ。丙は,ドレス及び指輪を,甲がAから盗んできたものであることを承知した上で甲から預かり,甲からの依頼どおりに売却先を探すこととしたが,指輪についてはAが母親の形見として大切にしていたものであることを知っていたことから,高値でAに売り付けようと考え,後日,Aに対し,代金50万円で指輪を売却し,その売却代金を甲に渡した。また,甲は,Aから盗んだクレジットカードを担保として丁から現金30万円を借りたが,その際,丁に対し,「これはA名義のクレジットカードだけど,Aから使用を許されており,お前がこのカードを利用して買物をしても,その利用代金はAにおいて決済される。」と伝えた。その後,甲が丁に対して金を返さなかったことから,丁は,甲の話を信じ,デパートにおいて,Aに成り済まして同カードを用いて腕時計1個を購入した。【記 述】
ア.甲がAの指輪を盗んだことにつき,甲の行為は窃盗罪に該当するが,Aは甲の内縁の妻であるから,刑法第244条第1項により刑が免除される。
イ.乙が盗品のドレス10着を,窃盗犯人である甲が指輪とドレス10着を,それぞれ丙宅まで運搬したことにつき,乙は甲と共同してこれら盗品を運搬したのであるから,乙にはドレス20着全てと指輪につき盗品等運搬罪が成立する。
ウ.丙がAを相手方として指輪の売却をあっせんしたことにつき,Aは窃盗の被害者であるが,丙には盗品等処分あっせん罪が成立する。
エ.丁がA名義のクレジットカードで腕時計を購入したことにつき,丁は,Aから同カードの使用を許されており,かつ,自らの使用に係る同カードの利用代金がAにおいて決済されるものと信じていたので,丁に詐欺罪は成立しない。
- ①ア イ
- ②ア ウ
- ③イ ウ正解
- ④イ エ
- ⑤ウ エ
解説
要点
244条1項の親族相盗例は法律上の親族関係を前提とし、内縁配偶者には適用されない(最決平成18年8月30日)。盗品等運搬罪は本犯者自身には成立しないが、非本犯者が本犯者と共同して運搬した場合は一部実行全部責任の原則により運搬された盗品全体について共同正犯が成立する。被害者を相手方とする有償処分のあっせんも同罪に当たり(最決平成14年7月1日)、名義人になりすましたクレジットカード利用は名義人の承諾があると誤信していても加盟店に対する詐欺罪が成立する(最決平成16年2月9日)。
結論
正しいのは記述イとウであり,選択肢3が正解である。内縁配偶者には244条1項の親族特例は適用されず(記述ア誤り),本犯者以外の者が本犯者と共同して盗品を運搬すれば一部実行全部責任の原則から全体について盗品等運搬罪の共同正犯が成立し(記述イ正しい),被害者本人を相手方とするあっせんでも盗品等有償処分あっせん罪は成立し(記述ウ正しい),名義人になりすましたカード利用は名義人の承諾があると誤信していても加盟店に対する欺罔行為として詐欺罪が成立する(記述エ誤り)。
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出典:法務省「平成28年司法試験」(問題文は表示のため改行等を整えています)。解説は AI を用いて作成し、条文との照合と再検証を経ていますが、誤りを含む可能性があります。
