平成28年 司法試験 短答式 刑法 第14問 解説
問題
次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合,正しいものはどれか。
- ①甲は,Aの太ももを蹴って怪我をさせたが,甲には,Aに傷害を負わせるまでの意思はなかった。甲には傷害罪は成立しない。
- ②甲,乙及び丙が,互いに意思の連絡をすることなく,同一の機会にそれぞれAに暴行を加えて怪我をさせたところ,その怪我は,乙又は丙いずれかの暴行によるものであり,甲の暴行によるものではなかった。Aがその怪我により死亡した場合,乙及び丙には傷害致死罪が成立し,甲には傷害罪が成立する。
- ③甲は,四畳半の室内で,Aを脅す目的で,さやから抜いた日本刀をその面前で数回振り回したところ,誤ってその日本刀の刃先がAの腕に当たり,Aに怪我を負わせた。甲には傷害罪は成立しない。
- ④甲は,路上でトラブルとなったAの顔面を1回殴ったところ,Aは,その暴行によりバランスを崩し,足下にあった石につまずいて路上に転倒し,頭部を強く打ち付けて怪我をし,これにより数時間後に死亡した。甲がAの死亡の結果を全く予見していなかった場合でも,甲には傷害致死罪が成立する。正解
- ⑤甲は,Aら数名が殴り合いのけんかをしているところにたまたま通り掛かり,「もっとやれ。」と言ってはやし立てた。Aらけんかの当事者が怪我をせず,Aらの暴行が互いの相手に対する暴行罪にとどまる場合でも,甲には現場助勢罪(刑法第206条)が成立する。
解説
要点
傷害罪は暴行の故意で足り(暴行の結果的加重犯的性質)、傷害致死罪も暴行・傷害と死亡との因果関係があれば足りて死亡結果の予見は判例上不要である。207条(同時傷害の特例)は傷害を生じさせた者が不明な場合の特則であり、自己の暴行が原因でないと判明した者には適用されない。206条の現場助勢罪は傷害罪・傷害致死罪が行われる場合に限られる。
結論
選択肢4が正しい。傷害致死罪(刑法205条)は暴行・傷害の結果的加重犯であり、暴行と死亡結果との間に因果関係が認められれば足り、行為者が死亡結果を予見していたことは要件とならない(判例。最判昭和32年2月26日参照)。顔面を殴打しバランスを崩して転倒し頭部を打って死亡した事案では、暴行と死亡結果との間に因果関係が肯定されるため、予見していなくても傷害致死罪が成立する。
この分野を、あなたの弱点に合わせて演習
無料で始める間違えた問題は忘れかけた頃に出し直し。論文の AI 採点も(Pro)。
出典:法務省「平成28年司法試験」(問題文は表示のため改行等を整えています)。解説は AI を用いて作成し、条文との照合と再検証を経ていますが、誤りを含む可能性があります。
