平成22年 司法試験 論文式 商法 出題の趣旨・論点・解説
問題
〔第2問〕(配点:200〔〔設問1〕から〔設問5〕までの配点の割合は,3.5:4:3.5:6.5:2.5〕)
論点の一覧
出題の趣旨・採点実感をもとに、採点で問われる点を整理したものです(配点は 100 点満点に換算した目安)。
設問1
- Fの二つの主張の法的構成(有権代理構成と権限外の行為の表見代理構成)の把握と区別5点
- 有権代理構成における事実①・事実②の法律上の意義7点
- 表見代理構成における事実①・事実②の法律上の意義6点
設問2
- 小問⑴ 抵当権侵害における損害の有無・捉え方6点
- 小問⑴ 損害の確定時期(弁済期前の侵害の評価)4点
- 小問⑵ 対抗問題と不法行為成立要件との関係の位置付け4点
- 小問⑵ 民法177条の「第三者」からの排除(背信的悪意者)とEの該当性6点
設問3
- 当事者の確定とGの訴訟行為の訴訟法上の位置付け8点
- 効力帰属の結論(追認の可否・手続安定への配慮)8点
設問4
- 小問⑴ 前提としての最高裁判例の立場と既判力の作用の確認4点・簡潔に
- 小問⑴ 法律構成①(請求認容範囲の限定)の長所・短所8点
- 小問⑴ 法律構成②(請求の一部放棄構成)の長所・短所8点
- 小問⑵ 条件付給付判決の可否(処分権主義・民訴法246条、将来給付と135条)9点
- 小問⑵ 条件付給付判決と全部棄却判決の既判力の比較4点
設問5
- 認知届未提出と認知の効力(EがAの子か)4点
- 自筆証書遺言の解釈(Eへの割合的包括遺贈とCの地位)4点
- 可分金銭債務の承継とHへの支払義務の範囲5点
出題の趣旨(法務省公表)
民事系科目(第2問)は,工場を個人で営むAとその家族らの取引と民事訴訟をめぐる事例
に関して,民法上及び民事訴訟法上の問題点についての基礎的な理解を問う総合問題である。
具体的事実を法的な観点から評価し構成する能力,具体的な事実関係に即して基本問題を考察
する能力及び論理的に一貫した論述をする能力などを試すものである。
設問1は,第1に,Fが第1訴訟において選択的にする二つの主張の法的構成が,有権代理
構成と権限外の行為の表見代理構成(民法第110条)であることを理解した上で,二つの法
的構成を区別することができるかどうか,第2に,各法的構成において,事実①及び事実②の
性質を的確に把握することができるかどうかを問うものである。まず,有権代理構成において,
事実①はAがCに代理権を授与したことを推認させる間接事実である意義を有すると考えら
れ,これに対し,事実②は特段の意義を有しない。次に,権限外の行為の表見代理構成におい
ては,事実①は2000万円の融資についてCに代理権があるものと信ずる正当な理由がある
とする評価を根拠付ける事実である意義を有し,それとともに,事実①はAがCに1500万
円の限度における代理権を授与したことを推認させる間接事実である意義を有するとも考えら
れる。また,事実②はCに2000万円の借入れの権限があるかどうかをFが調査しようと試
みたことを意味するものであるから,他の事情とあいまって,正当理由を根拠付ける一つの事
実である意義を有するものとも考えられる。反対に,事実②のうち携帯電話がつながらないこ
とは,Cの不審な挙動を示唆するものとみることができないものではないから,それにもかか
わらずA本人との接触に成功しないまま融資を敢行したこととあいまって,正当理由の評価障
害事実になるとする性質把握も一定の説得力を持つ。そこで,適切な理由が付されて解答され
ているかが問われることになる。
設問2は,抵当不動産の第三取得者が抵当目的物件を故意に滅失させた事案について,抵当
権侵害による不法行為に基づく損害賠償の成否を問うものである。
小問(1)の考察においては,Eによる丙建物の取壊し後におけるFの被担保債権額と甲乙
土地の価額との関係を考慮しつつ,抵当権侵害における損害の発生について,抵当権の担保権
的性質の基本的理解との関連を意識しつつ論ずることが望まれる。ここでは,【事実】及び〔設
問〕のいずれにおいても,甲乙土地及び丙建物の価額は示されていないので,解答は抽象的な
理論操作に基づく記述で足りる。加えて,抵当権侵害における損害はどの時点で確定すること
ができるかについて論ずることが望まれる。この点については,【事実】に基づくと,Eによ
る丙建物の取壊しは平成19年8月19日であり,Fに対するAの債務の第1回弁済期は平成
20年3月15日であるため,Eの行為が抵当権の被担保債権の弁済期前であることをどのよ
うに評価するかが問われることになる。
小問(2)の考察では,民法第177条の第三者からはどのようなものが排除されるべきか,
その上で,【事実】に示された法律上有意な事実を過不足なく指摘しながら,EがFとの関係
で,民法第177条の第三者から排除すべき者に当たるかを論ずることが求められる。加えて
その前提として,不動産物権変動の第三者対抗の問題が,不法行為の成立要件との関係でどの
ように位置付けられるかを論ずることが求められる。すなわち,不法行為の成立要件との関係
において,抵当権者Fのために抵当権の設定の登記が行われていないことをどのように評価す
るか,また,丙建物の所有者Eによる取壊しが抵当権を侵害する行為に該当するか否かについ
ての考察が必要となる。
設問3は,訴状に被告として記載されていた人物Eとは異なる人物Gが,被告本人として訴
訟(第2訴訟)の手続に関与していたという事例について,Gが行った行為の効力がEに及ぶ
かを論じさせるものである。
ここでは,Gの行為の効力が問われているから,そもそもGの行為は,訴訟法上どのような
ものとして位置付け評価され得るのかという点について,いわゆる当事者確定の基準論の理解
を前提に,自説の考え方(ないし問題となる点)を明らかにしつつ,論理を展開することが求
められる。特に,設問3の事例では,Gは被告Eとして行為しており,その行為が外形的には
訴訟代理の形式をとっていないことをどのように評価するのか,仮に,Gの行為を,Eを本人
とする訴訟代理行為(ないしその類似行為)ととらえようとするのであれば,その効力を,弁
護士代理の原則ないしその趣旨との関係でどのように考えるべきかなどといったことが問題と
なろう。そして,その検討過程においては,既にEになりすましているGの行為を前提として
複数回の期日が重ねられてしまっていることへの配慮の要否という実質的な問題もある。
設問4は,抵当権設定登記抹消請求訴訟(第3訴訟)を題材として,被担保債権に係る債務
の不存在確認請求について審理・判断された前訴(第1訴訟)確定判決の既判力がどのように
作用するかという問題点及び質的一部認容判決である条件付給付判決をすることができるかど
うかという問題点について,考えさせる問題である。
前訴における請求は,いわゆる自認部分がある債務不存在確認請求であったが,最高裁の判
例は,自認部分は訴訟物とならず,自認部分の存否は既判力によって確定されないとの立場を
採用している。小問(1)は,第3訴訟の被告Fの訴訟代理人弁護士Qが提示した最高裁判例
とは異なる内容の法律構成①と法律構成②のそれぞれについて,被告側の法律主張(つまり,
党派的な主張)としての適否を検討することを求めている。そこでは,最高裁判例の立場を確
認した上で,法律構成①については,量的に可分な給付請求権に関する一部請求後の残部請求
をめぐる議論状況との対比の下に,全部認容判決である前訴確定判決が自認部分についても判
断を下しているといえるかどうかを検討することが求められ,法律構成②については,請求の
放棄構成の技巧性について検討するほか,請求の放棄について既判力が認められるかどうかを,
そこで問題となる既判力の概念と絡めながら検討する(その際,調書の作成がないことや既判
力の基準時についても検討する)ことが求められている。
小問(2)では,条件付給付判決ができるかどうかを論ずるに際して,少なくとも以下の三
つの論点を検討することが必要である。まず,①原告Aが無条件の給付判決を求めているのに
対し,質的一部認容判決である条件付給付判決をすることが,民事訴訟法第246条との関係
で許容されるかどうかを検討すべきである。その際,②現在の給付を命じることを内容とする
引換給付判決とは異なり,条件付給付判決が将来の給付を命ずる判決であることとの関係で,
同法第135条の要件を検討し,また,③条件付給付判決と全部棄却判決のそれぞれの既判力
の客観的範囲(裁判所が認定した残債務額が既判力の対象になるかどうかという問題点を含
む。)を比較検討することも求められる。
設問5は,次のような三つの法律問題についての考察を順に求めるものである。第1に,認
知者が認知の意思を表示し認知届を作成して使者に届出を委託した後に死亡し,この間に認知
届が提出されていない場合,認知の効力は生じるかを問うものである。認知届の提出が身分変
動の効果が発生するための要件であるため,父の認知の意思が確認できたとしても,認知届が
提出されていない以上,認知の効力は発生しない。第2に,自筆証書遺言の解釈として,遺言
者の子ではない者に遺言者の遺産の3分の1を分けるということが何を意味するか,その場合
に遺言者の相続人の法的地位はどのようなものかを問うものである。平成20年4月6日付の
Aの遺言に記載されている内容は,Eに対しては割合的包括遺贈であり,唯一の相続人である
Cに対しては遺産の残余部分が相続により帰属することの確認となる。第3に,割合的包括遺
贈が行われた場合,受遺者は相続人として扱われ被相続人の債務も承継するところ,被相続人
が負っていた金銭債務は相続人と受遺者にどのように承継されるかを問うものである。割合的
包括遺贈における金銭債務の承継については,金銭債務について共同相続が生じた場合の規律
を参照しつつ,金銭債務の債権者はだれに対してどのように履行請求をすることができるのか
について考察することが望まれる。
参考答案と AI 採点
この問題の参考答案(出題の趣旨と照合済み)は Pro で読めます。自分で答案を書けば、論点の一覧に沿って AI が採点し、参考答案と項目ごとに見比べられます。
答案を書いて AI 採点する出典:法務省「平成22年司法試験」(問題文・出題の趣旨。表示のため改行等を整えています)。論点の一覧・参考答案は AI を用いて X-Law合同会社が作成したもので、誤りを含む可能性があります。
