令和8年 予備試験 短答式 刑法 第7問 解説
問題
原因において自由な行為に関する各【見解】に従って各【事例】における甲の罪責を検討した場合、1から5までの各【記述】のうち、誤っているものはどれか。【見 解】A説:責任能力がある状態で行われた、責任無能力状態の自分を道具として利用しようとする原因行為を、構成要件該当行為と捉えるが、限定責任能力状態の自分については道具とは捉えない。B説:責任無能力状態あるいは限定責任能力状態で行われた結果行為を構成要件該当行為と捉えつつ、責任能力は意思決定時に存在すれば足りる。【事 例】Ⅰ.甲は、心神喪失状態の自分を道具として利用してXを殺害することを意図し、X宅に赴く前に多量に飲酒してX宅に赴き、心神喪失状態でXを殺害した。Ⅱ.甲は、Xを殺害することを意図し、心神耗弱状態に陥る可能性があることを認識しつつ、X宅に赴く前に多量に飲酒してX宅に赴き、心神耗弱状態でXを殺害した。Ⅲ.甲は、Xを殺害することを意図し、心神喪失状態に陥る可能性があることを認識しつつ、X宅に赴く前に多量に飲酒したが、酔いつぶれて眠ってしまい、X宅に赴くことができずXの殺害に及ばなかった。Ⅳ.甲は、酒に酔うと他人に危害を加えることがある性癖があることを自覚していたが、今回は酔わないだろうと軽信して飲酒したところ、心神喪失状態に陥った際にXと口論になり、Xに対する殺意が生じ、Xを殺害した。Ⅴ.甲は、酒に酔うと他人に危害を加えることがある性癖があることを自覚していたが、今回は酔わないだろうと軽信して飲酒したところ、心神耗弱状態に陥った際にXと口論になり、Xに対する殺意が生じ、Xを殺害した。【記 述】
- ①A説によれば、事例Ⅰ及び事例Ⅱのいずれも、甲にXに対する殺人既遂罪が成立し得るが、事例Ⅱでは、刑法第39条第2項が適用されて刑が減軽される。
- ②B説によれば、事例Ⅰでは、甲にXに対する殺人既遂罪が成立し得るが、事例Ⅲでは、甲にXに対する殺人未遂罪は成立しない。
- ③B説によれば、事例Ⅱでは、甲にXに対する殺人既遂罪が成立し得るが、刑法第39条第2項が適用されて刑が減軽される。正解
- ④A説によれば、事例Ⅳでは、甲にXに対する殺人既遂罪は成立しないが、過失致死罪が成立し得る。
- ⑤B説によれば、事例Vでは、甲にXに対する殺人既遂罪が成立し得るが、刑法第39条第2項が適用されて刑が減軽される。
解説
要点
原因において自由な行為の論点では、原因行為時説(A説=道具理論)と結果行為時説(B説=意思決定時に責任能力があれば足りるとする説)とで、実行行為をどこに求めるか、39条2項の適用の有無がどう変わるかを、各事例で機械的にではなく学説の趣旨から導けるようにする。
結論
選択肢3が誤り。B説は「意思決定時に完全な責任能力があれば足りる」とする説であり、その趣旨は完全責任を問うために39条の適用を排除する点にある。事例Ⅱは原因行為時(意思決定時)に殺意と完全責任能力がある事案なので、B説によれば39条2項は適用されず、むしろ完全な既遂罪の責任を問える。したがって「39条2項が適用されて刑が減軽される」とする選択肢3は誤りである。
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出典:法務省「令和8年予備試験」(問題文は表示のため改行等を整えています)。解説は AI を用いて作成し、条文との照合と再検証を経ていますが、誤りを含む可能性があります。
