令和5年 司法試験 短答式 刑法 第15問 解説
問題
文書偽造の罪に関する次の1から5までの各記述を判例の立場に従って検討した場合、正しいものはどれか。
- ①公務員でない甲は、行使の目的で、情を知らない市役所の係員Aに虚偽の申立てをして、市長名義の虚偽の課税証明書を作成させた。この場合、甲に虚偽公文書作成罪は成立しない。正解
- ②甲は、無免許で自動車を運転中に取締りを受けた際、かねてより知人Aから氏名等の使用の許諾を受けていたことから、Aの氏名等を称し、行使の目的で、交通事件原票中の供述書欄末尾に「A」と署名した。この場合、甲に私文書偽造罪は成立しない。
- ③甲は、Aに100万円を貸し付けていたが、Aから借用書を徴していなかったため、行使の目的で、Aに無断で、甲から100万円を借用した旨のA名義の借用書を作成した。この場合、甲に私文書偽造罪は成立しない。
- ④甲は、民間団体Aから国際運転免許証の作成を委託され、行使の目的で、外観が正規の国際運転免許証に酷似するA名義の文書を作成したが、Aに正規の国際運転免許証を発給する権限はなく、甲もそのことを知っていた。この場合、甲に私文書偽造罪は成立しない。
- ⑤甲は、同姓同名の弁護士がいることを利用して弁護士を装い、不動産業者Aから土地調査の依頼を受け、行使の目的で、作成名義人として「弁護士甲」と記載した土地調査に関する書面を作成しAに交付した。この場合、甲に私文書偽造罪は成立しない。
解説
要点
虚偽公文書作成罪(156条)は公務員の身分犯であり、判例(最判昭27.12.25)は、非公務員が情を知らない公務員に虚偽の申立てをして虚偽の公文書を作成させても同罪の間接正犯は成立しないとする(157条が虚偽申立て類型を公正証書原本等に限って軽く処罰している趣旨との均衡)。他方、補助公務員が情を知らない作成権限者を利用した場合には間接正犯を認める(最判昭32.10.4、最判昭51.5.6)。これに対し私文書偽造罪では、名義人の承諾や同姓同名といった事情があっても、文書の性質・社会的機能に照らして名義人と作成者の人格の同一性を偽ったと評価されれば偽造が成立する点が対照的である。
結論
選択肢1が正しい。公務員でない者が、虚偽の申立てをして情を知らない公務員に虚偽の公文書を作成させても、判例上、虚偽公文書作成罪(156条)の間接正犯は成立しないとされているためである。
この分野を、あなたの弱点に合わせて演習
無料で始める間違えた問題は忘れかけた頃に出し直し。論文の AI 採点も(Pro)。
出典:法務省「令和5年司法試験」(問題文は表示のため改行等を整えています)。解説は AI を用いて作成し、条文との照合と再検証を経ていますが、誤りを含む可能性があります。
