令和4年 司法試験 短答式 刑法 第20問ウ 解説
問題
次の【事例】に関する後記アからオまでの各【記述】を判例の立場に従って検討し、正しい場合には1を、誤っている場合には2を選びなさい。【事 例】甲(女性、16歳)は、高校の同級生A(女性、16歳)が非行グループと交際し、飲酒喫煙を繰り返していることを知り、それらのAの具体的行動を、特に口止めもせずに同級生2名に告げたところ、同人らを介して、Aの同行動がクラスの全生徒30名の知るところとなった。甲のせいで自己の行状に関するうわさが広まったことを知ったAは、甲を呼び出して暴行を加えた。そのことを知った甲の兄乙は、Aに報復しようと考え、ある日の深夜、A宅付近に自己の車を停め、Aを待ち伏せていたところ、Aの姉B(20歳)がA宅に入ろうとするのを見て、BをAと誤信し、Bを無理やり同車のトランクに押し込んで数キロメートル走行した上、郊外の廃工場に連行した。乙は、上記廃工場において、Bの顔面を数発殴打するとともに、はさみを使ってBの頭髪を10センチメートル程度切断した。乙は、Bが泣き出したのを見て満足し、その場から立ち去ることにしたが、その際、Bのバッグの中から財布を抜き取り、これを持ち去った。乙は、上記財布内にB名義の運転免許証やキャッシュカードが入っていたため、BをAと間違えたことに気付いたが、同カードを不正に使用し、Bの預金で乙の友人Cへの借金を返済しようと考えた。乙は、コンビニエンスストアの現金自動預払機に同カードを挿入し、暗証番号としてBの誕生日を入力したところ、取引ができる状態になったので、その場で、同現金自動預払機を操作し、B名義口座から直接C名義口座へ50万円を送金した。その後、甲の交際相手丙は、乙が警察に逮捕されるのではないかと不安に思った甲からの依頼に応じ、乙の上記一連の犯行について、乙の身代わり犯人として警察に出頭した。【記 述】
ウ.乙が、はさみを使ってBの頭髪を切断した行為は、人の生理的機能を損なうものではないから、傷害罪は成立せず暴行罪が成立するにとどまる。
- ①正しい正解
- ②誤っている
解説
要点
傷害罪の『傷害』を人の生理的機能を害することと解する判例の立場(生理的機能障害説)によれば、頭髪の切断は外観・美観を損なうにとどまり生理的機能に障害を生じさせないから傷害罪は成立せず、身体に対する有形力の行使として暴行罪が成立するにとどまる(大判明治45・6・20)。なお学説には身体の完全性侵害説もあり、同説では傷害となる点に注意。
結論
乙がはさみでBの頭髪を切断した行為は、判例の立場(生理的機能障害説)によればBの生理的機能を害するものではないため傷害罪は成立せず、暴行罪が成立するにとどまる。したがって記述ウは正しく、選択肢1が正解である。
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出典:法務省「令和4年司法試験」(問題文は表示のため改行等を整えています)。解説は AI を用いて作成し、条文との照合と再検証を経ていますが、誤りを含む可能性があります。
