令和3年 司法試験 短答式 刑法 第20問ア 解説
問題
次の【事例】に関する後記アからオまでの各【記述】を判例の立場に従って検討し,正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。【事 例】暴力団A組の組員甲は,クラブで飲酒していた際,たまたま入店してきた旧知の暴力団B組の組員乙に因縁を付けられて口論になり,乙に拳で殴りかかった。乙は,これを避けた上,更に殴りかかろうとしてきた甲の胸部を拳で数回強打した。その数分後,B組の組員丙は,乙と待ち合わせをしていた上記クラブに到着し,その直後に甲の態度に激高し,いきなり甲の胸部を拳で数回強打した。甲は,全治約1か月間を要する肋骨骨折の傷害を負ったが,同傷害が乙と丙のいずれの暴行によって生じたのかは不明であった。甲は,一旦帰宅したものの怒りが収まらず,何か嫌がらせをしてやろうと考え,金属バットを持ち,覆面で顔を隠してB組事務所に行き,その玄関ドアを同バットでたたいて凹損させた。その直後,甲は,A組事務所に行き,A組の組員丁に対し,B組組員から殴られた腹いせにB組事務所の玄関ドアを凹損させたことを話した。丁は,B組との関係悪化を避けるとともに,甲の刑事責任を免れさせるため,甲との間で,犯行時間帯に甲がA組事務所にいたことにする旨の口裏合わせをした。また,丁は,B組組員複数名による襲撃を受ける可能性もあると考え,万が一に備えて,着衣のポケットに護身用として果物ナイフを入れた。他方,乙及び丙は,上記ドアが凹損させられたとの連絡を受け,甲の仕業だろうと考え,A組事務所へ向かった。乙は,応対に出た丁に対し,「甲を出せ。」と言った。丁は,「何の話だ。」と応じたが,乙は,その態度に憤激し,「しらばっくれるな。」と言い,持っていた拳銃を取り出して丁に突き付けた。丁は,自己の身を守るため,上記ナイフで乙の腹部を1回突き刺し,乙に全治約1か月間を要する腹部刺創の傷害を負わせた。丁は,駆けつけた警察官に逮捕され,その後,逃走していた甲も上記ドアを凹損させた事実で逮捕された。丁は,甲の身柄拘束中,甲の犯行に関する参考人として取調べを受けた際,上記口裏合わせに従い,上記ドアが凹損させられた時間帯に甲がA組事務所にいた旨のうその供述をした。【記 述】
ア.乙が甲の胸部を拳で強打した行為については,甲からの侵害が,乙が甲に因縁を付けたことにより招かれたものである以上,正当防衛又は過剰防衛が成立することはない。
- ①正しい
- ②誤っている正解
解説
要点
自招侵害であっても、先行行為が言葉による挑発など軽微なものにとどまり、現に攻撃を仕掛けたのは相手方であって反撃が防御的なものである場合には、直ちに正当防衛・過剰防衛の成立が否定されるわけではない。判例(最決平成20年5月20日)は、自ら不正の行為により侵害を招いたこと、侵害が先行暴行の程度を大きく超えないことなど具体的事実関係を踏まえて判断している。
結論
選択肢アは誤り(正解は②)である。乙が甲に因縁を付けたという事実だけでは、乙の反撃行為につき正当防衛・過剰防衛の成立を一律に否定する理由にはならない。乙の反撃は、甲から現実に殴りかかられたことに対する防御的な対応であり、自ら暴行を加えて侵害を招いた事案につき正当防衛の成立を否定した最高裁判例(最決平成20年5月20日)の枠組みを機械的に当てはめることはできない。
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出典:法務省「令和3年司法試験」(問題文は表示のため改行等を整えています)。解説は AI を用いて作成し、条文との照合と再検証を経ていますが、誤りを含む可能性があります。
