平成30年 司法試験 短答式 刑法 第20問オ 解説
問題
次の【事例】に関する後記アからオまでの各【記述】を判例の立場に従って検討し,正しい場合には1を,誤っている場合には2を選びなさい。【事 例】甲は,別居している実弟Aとの間で,自己が所有するX市内の土地(以下「本件土地」という。)を代金3000万円で売却する売買契約を締結し,Aから代金全額の支払を受けたものの,本件土地の所有権移転登記は未了のままであった。そこで,甲は,自己が経営する会社の資金繰りのため,自らが保管していた本件土地の登記済証を利用し,事情を知らないBに対して,本件土地に抵当権を設定するので,それを担保に1000万円を融資してほしい旨申し入れたところ,Bは,これを了承した。数日後,甲は,Bから1000万円の融資を受けた上,Aに無断で本件土地の抵当権設定登記を完了した。X市の土木部長である乙は,本件土地を乙個人として購入したいと考え,甲に対して,その旨を申し入れた。甲は,乙に対して,本件土地は既にAに売却済みであるが,登記名義は自分に残っているので,代金2000万円で売却してもよい旨を伝えたところ,乙は,これを了承した。そして,乙は,Y市内に時価700万円の農地(以下「本件農地」という。)を所有していたことから,本件土地の購入資金を調達するため,それまでにX市発注の公共工事の受注に際して,土木部長として便宜を図ってきた建築業を営むCに対して,本件農地を時価で買い取ってほしい旨を依頼した。Cは,本件農地にはそれまで買手が全く見付からず,乙が苦労していることを知りながら,かねてX市発注の公共工事の受注に際して乙が有利な取り計らいをしてくれたことに対する謝礼の趣旨に加え,時価であれば損をすることもないと考えて,乙の依頼を了承した。そして,Cは,乙と本件農地の売買契約を締結した上で,乙に現金700万円を手渡した。その後,甲は,Aに無断で乙と本件土地の売買契約を締結し,乙から代金全額の支払を受けた上,本件土地の所有権が売買により乙に移転した旨の登記を完了した。【記 述】
オ.乙は,甲から本件土地が既にAに売却済みであることを知らされながら,Aに無断で本件土地を購入し,所有権移転登記を完了したのであるから,乙に横領罪の共同正犯が成立する。
- ①正しい
- ②誤っている正解
解説
要点
不動産の二重売買等で第二の買主が売主の横領行為を単に知って(悪意で)買い受けただけでは横領罪の共同正犯は成立しない。共同正犯成立には、単なる知情を超えて売主の横領行為に積極的に加功・共謀したことが必要である(福岡高判昭47.11.22参照)。
結論
乙は甲が本件土地をAに売却済みであることを知りながら購入し登記まで完了させたが,これは単なる悪意の買主にすぎず,甲の横領行為に積極的に加功した事情はない。よって乙に横領罪の共同正犯は成立せず,記述オは誤り(選択肢2が正しい)。
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出典:法務省「平成30年司法試験」(問題文は表示のため改行等を整えています)。解説は AI を用いて作成し、条文との照合と再検証を経ていますが、誤りを含む可能性があります。
