毒物郵送事件
大判大正7年11月16日
毒物を郵送して殺害しようとした事案で、発送時ではなく被害者への到達時に殺人罪の実行の着手を認めた(到達時説)
刑法未遂・中止犯・不能犯生命・身体に対する罪罪刑法定主義本試験で 5 問(短答 5・論文 0)
出題:司法H23・司法H26・司法R6・予備H23・予備R6
解説
事案
被告人は、人を殺害する目的で、毒物を混ぜた砂糖を被害者宅に郵送した。毒物入りの砂糖は被害者のもとに届き、被害者がこれを受け取った。
殺人罪の実行の着手(刑法43条本文、203条)は、毒物を発送した時点で認められるのか、それとも毒物が被害者に届いた時点で認められるのかが問題となった。被告人の行為(発送)と結果発生の可能性が生じる時点(到達)が時間的・場所的に離れる、いわゆる離隔犯の事案である。大審院は、被害者が受け取った時点で殺人未遂罪の実行の着手を認めた(刑録24輯1352頁)。
争点
- 毒物を郵送して人を殺害しようとする離隔犯において、殺人罪の実行の着手時期はいつか(発送時か到達時か)
判旨
結論:毒物入り砂糖が被害者に到達し、被害者が受け取った時点で殺人罪の実行の着手を認め、殺人未遂罪の成立を肯定した。
規範(答案用):毒物を郵送して人を殺害しようとする場合、殺人罪の実行の着手が認められるのは次の時点である。
- 毒物が被害者に到達し、
- 被害者がこれを食用(摂取)しうる状態に置かれた時点
発送した時点では、まだ実行の着手は認められない。一般に到達時説に立つ判例と理解されている。
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