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砂末吸引事件

大判大正12年4月30日

首を絞めて死亡したと誤信し砂上に放置したところ砂末吸引で死亡した事案で殺人既遂を認めた判例

刑法故意・錯誤構成要件該当性・因果関係生命・身体に対する罪本試験で 9 問(短答 9・論文 0)

出題:司法H23・司法H24・司法H27・司法R4・予備H23・予備H24・予備H27・予備H28・予備H30

解説

事案

被告人は、殺意をもって被害者の首を絞めた(第1行為)。被告人は被害者が死亡したと誤信し、海岸の砂上に放置した(第2行為)。しかし被害者は第1行為の時点ではまだ生きており、砂上に放置されたことで砂末を吸引し、それによって死亡した。

行為者の認識では、死亡は第1行為(絞頸)によって生じたはずであった。現実には、第1行為の後の第2行為(放置)が介在して死亡結果が生じている。この認識と現実のずれが問題となった。

学説上は「ヴェーバーの概括的故意」(遅すぎた構成要件実現)と呼ばれる事案類型である(※全文が手元にないため、事案の細部はここに記した範囲にとどめる)。

争点

  • 殺意ある第1行為の後、死亡したと誤信して行った第2行為により結果が生じた場合、第1行為と死亡結果との間に因果関係が認められるか
  • 行為者が認識した因果経過と現実の因果経過がずれた場合(因果関係の錯誤)、殺人の故意は阻却されるか
  • 殺人既遂罪(刑法199条)一罪となるか、殺人未遂罪と過失致死罪(刑法210条)となるか

判旨

結論:殺人既遂罪(刑法199条)が成立する。

教材によれば、判例の規範は次のように整理される。

  • 行為者の行為と結果との間に因果関係が認められる場合、行為者が想定した因果経過と現実の因果経過とのずれは、故意を阻却しない。
  • 答案用の表現にすると、「行為者の認識した因果経過と現実の因果経過とが構成要件的に重要な点で符合していれば(=因果経過の錯誤が構成要件的に重要でない限り)、故意既遂犯の責任を認める」となる。

したがって、殺意をもって首を絞め、死亡したと誤信して砂上に放置し、砂末吸引で死亡させた行為者は、殺人未遂罪と過失致死罪ではなく、殺人既遂罪の責任を負う。

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