菊田医師事件
実子あっせんをした指定医師について、法律に明文の規定がなくても医師会が指定を撤回できるとした判例
出題:司法H23・予備R3・予備R4・予備R6・予備R7・予備R8
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 昭和60(行ツ)124 優生保護法指定医の指定取消処分取消等請求事件
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 集民 第154号201頁
- 参照法条
- 優生保護法14条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
いわゆる実子あつせんをしたことを理由に優生保護法一四条一項による指定医師の指定を撤回することができるとされた事例
裁判要旨
優生保護法一四条一項による指定を受けた医師が、虚偽の出生証明書を発行して他人の嬰児をあつせんするいわゆる実子あつせんを長年にわたり多数回行つたことが判明し、そのうちの一例につき医師法違反等の罪により罰金刑に処せられたため、右指定の撤回により当該医師の被る不利益を考慮してもなおそれを撤回すべき公益上の必要性が高いと認められる場合に、指定権限を付与されている都道府県医師会は、右指定を撤回することができる。
解説
事案
上告人は産婦人科医院を開設する医師である。昭和28年に被上告人医師会から優生保護法14条1項の人工妊娠中絶を行いうる医師(指定医師)の指定を受け、2年ごとの更新を経て、最終的に昭和51年11月1日付で指定を受けていた。
上告人は、中絶の時期を逸した女性に勧めて出産させ、子を欲しがる他の婦女が出産したとする虚偽の出生証明書を発行し、戸籍上その婦女の実子として登載させていた(実子あっせん行為)。件数は公表前で約100件に及ぶ。昭和49年に今後は繰り返さないと言明したが、緊急避難であるとしてその後も続け、さらに約120件を行った。
そのうち1件について、医師法違反・公正証書原本不実記載・同行使の罪により罰金20万円の略式命令を受け、確定した。医師会は昭和53年、上告人が指定医師として不適当であることを理由に昭和51年付の指定を「取り消す」処分をした。さらに、上告人のその後の指定申請も同じ理由で却下した。上告人はこれらの処分の取消し等を求めた。
争点
- 法令に撤回の明文規定がない場合に、授益的処分である指定医師の指定を撤回できるか
- 撤回が許される要件(相手方の不利益と公益上の必要性の衡量)
- 実子あっせん行為を理由とする本件取消処分(撤回)と、同じ理由による申請却下処分は適法か
判旨
上告棄却。本件取消処分と本件却下処分は適法である。
規範:指定の後に、相手方が指定医師としての適格性を欠くことが明らかとなり、指定を存続させることが公益に適合しない状態が生じた場合には、撤回が許されうる。具体的には、指定の撤回によって相手方が被る不利益を考慮しても、なお撤回すべき公益上の必要性が高いと認められる場合には、法令上その撤回について直接明文の規定がなくとも、指定の権限を付与されている者は、その権限において指定を撤回することができる。
あてはめ:実子あっせん行為の法的問題点と指定医師の指定の性質に照らすと、撤回の公益上の必要性は高い。したがって、医師会は指定を撤回できる。
判決文から
「上告人が法秩序遵守等の面において指定医師としての適格性を欠くことが明らかとなり、上告人に対する指定を存続させることが公益に適合しない状態が生じたというべきところ」
撤回の前提となる後発的事情の認定部分
「指定医師の指定の撤回によつて上告人の被る不利益を考慮しても、なおそれを撤回すべき公益上の必要性が高いと認められるから」
撤回の可否を決める利益衡量の基準
「法令上その撤回について直接明文の規定がなくとも、指定医師の指定の権限を付与されている被上告人医師会は、その権限において上告人に対する右指定を撤回することができるものというべきである。」
明文不要と撤回権者(指定権限者)を示す核心部分
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
