最判昭和62年10月8日
無断転貸を理由とする土地賃貸借の解除権は債権に準じて消滅時効にかかり、転借人の使用収益開始時から時効が進行する。
出題:司法H26・司法R7
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 昭和58(オ)457 建物収去土地明渡
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第41巻7号1445頁
- 参照法条
- 民法166条1項,民法612条2項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
無断転貸を理由とする土地賃貸借契約の解除権の消滅時効の起算点
裁判要旨
無断転貸を理由とする土地賃貸借契約の解除権の消滅時効は、転借人が転貸借契約に基づき当該土地の使用収益を開始した時から進行する。
解説
事案
土地所有者Dは、自ら設立した訴外会社に本件(一)土地の管理をさせていた。上告人(賃貸人側)は、昭和34年に相続でこの土地の所有権を取得した。
Fは昭和11年、訴外会社から本件(一)土地を賃借し、地上に建物を所有していた。被上告人B1は家督相続によりFの地位を承継し、賃貸借は法定更新されていた。
昭和25年12月7日、被上告人B2社がB1から建物の一つを譲り受け、その敷地にあたる本件(四)土地を訴外会社の承諾なく転借した。B2は同日以降、この土地を使用収益している。
訴外会社は昭和51年7月16日到達の書面で、B1に対し、無断転貸を理由に賃貸借契約を解除する旨の意思表示をした。上告人は建物収去土地明渡を請求したが、被上告人ら(B2・B3を除く)は解除権の消滅時効を援用した。原審は上告人の請求を排斥し、上告人が上告した。
争点
- 無断転貸を理由とする賃貸借契約の解除権(民法612条2項)は消滅時効にかかるか、かかるとして適用される時効期間はどれか
- 上記解除権の消滅時効の起算点はいつか
- 無断転借人が賃貸人に対抗できる転借権を時効取得しうるか
判旨
上告棄却。
- 規範(性質):無断転貸を理由とする賃貸借契約の解除権は、賃借人の契約義務違反を原因として、賃貸人の一方的意思表示により契約関係を終了させる形成権である。その消滅時効には、債権に準ずるものとして民法(旧)167条1項が適用され、権利を行使できる時から10年で消滅する。
- 規範(起算点):解除権は、転借人が転貸借契約に基づき当該土地の使用収益を開始した時から行使可能となる。したがって消滅時効はその時から進行する。
- あてはめ:B2が使用収益を開始した昭和25年12月7日から10年後の昭和35年12月7日の経過で、解除権は時効消滅した。昭和51年の解除の意思表示は効力を生じない。
- 付随して、B2は訴外会社ひいて上告人に対抗できる転借権を時効取得したとした原審判断も、結論において是認した。
判決文から
「賃貸土地の無断転貸を理由とする賃貸借契約の解除権は、賃借人の無断転貸という契約義務違反事由の発生を原因として、賃借人を相手方とする賃貸人の一方的な意思表示により賃貸借契約関係を終了させることができる形成権であるから」
解除権を形成権と性質決定した部分
「その消滅時効については、債権に準ずるものとして、民法一六七条一項が適用され、その権利を行使することができる時から一〇年を経過したときは時効によつて消滅するものと解すべき」
形成権を債権に準じて扱い時効期間を導く
「右解除権は、転借人が、賃借人(転貸人)との間で締結した転貸借契約に基づき、当該土地について使用収益を開始した時から、その権利行使が可能となつたものということができるから、その消滅時効は、右使用収益開始時から進行するものと解するのが相当である。」
起算点=転借人の使用収益開始時という核心
「被上告人B2は、訴外会社ひいて上告人に対抗できる転借権を時効により取得したものということができる」
無断転借人による転借権の時効取得を肯定
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