最判昭和60年3月28日
建造物等以外放火罪(刑法110条1項)の故意には、焼損の認識があれば足り、公共の危険発生の認識は要しないとした判例
出題:司法R3・司法R6・予備H25・予備H29
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 昭和58(あ)937 建造物等以外放火
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 刑集 第39巻2号75頁
- 参照法条
- 刑法110条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
刑法一一〇条一項の罪と公共の危険発生の認識の要否
裁判要旨
刑法一一〇条一項の罪の成立には、公共の危険発生の認識は必要でない。
解説
事案
被告人は、Aを介してB・Cと順次共謀したとされ、その指示内容は「Dらの単車を潰せ」「Eの単車でもかまわない」「燃やせ」というものであった。これを受けたB・Cは、E方1階応接間南側のガラス窓から約30センチメートル離れて同家軒下に置かれていたE所有の自動二輪車に放火した。
原審(東京高裁)は、被告人に建造物等以外放火罪(刑法110条1項)の共謀共同正犯の成立を認めた。
弁護人は上告し、次の点などを主張した。
- 共謀共同正犯論を採用したことは憲法31条に違反する
- 供述調書の証拠採用は憲法38条2項・31条に違反する
最高裁は、これらの上告趣意をいずれも退けて上告を棄却した。そのうえで「なお」書きにより、110条1項の故意の内容について職権で判断を示した。
争点
- 刑法110条1項の罪の成立に、公共の危険発生の認識(予見)が必要か
- 共謀共同正犯を認めることが憲法31条に違反するか
判旨
上告棄却。
規範:刑法110条1項の放火罪が成立するためには、火を放って同条所定の物を焼損(判決原文は「焼燬」)する認識が必要である。しかし、焼損の結果として公共の危険を発生させることまで認識する必要はない。
あてはめ:同旨の見解に立って被告人に本件放火罪の共謀共同正犯を認めた原判断は、正当として是認できる。
なお、共謀共同正犯の合憲性については、共謀に参加した事実が認められる以上、直接実行行為に関与しない者でも共同正犯の刑責を負うと解しても憲法31条に違反しないとした。これは最大判昭和33年5月28日を引用したものである。
答案用の規範:「110条1項の故意としては、同条所定の物を焼損する認識があれば足り、公共の危険発生の認識は不要である。」
判決文から
「刑法一一〇条一項の放火罪が成立するためには、火を放つて同条所定の物を焼燬する認識のあることが必要であるが、焼燬の結果公共の危険を発生させることまでを認識する必要はないものと解すべきである」
焼損の認識は必要、公共の危険の認識は不要という規範
「被告人に対して成立する共謀の内容は器物損壊の限度に止まるものというべきであろう。」
谷口意見が示す認識不要説の問題点
「この結論は明らかに不当である。右の場合は、いわゆる共犯における錯誤の問題として処理するのが正しい方法というべきではなかろうか。」
認識必要説から共犯の錯誤で処理すべきとする指摘
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