最判昭和60年3月26日
報酬総額を株主総会で定め配分を取締役会に委ねることは適法。使用人分給与を除いた報酬決議も、一定の要件の下で適法とした判例
出題:司法H24・予備H24
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 昭和59(オ)1100 株主総会決議無効確認
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 集民 第144号247頁
- 参照法条
- 商法269条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
取締役の報酬額には使用人兼務取締役の使用人分給与は含まれない旨を明示してされた取締役の報酬額改訂の株主総会決議と商法二六九条
裁判要旨
取締役の報酬額には使用人兼務取締役の使用人分給与は含まれない旨を明示して取締役全員の報酬総額を改訂する株主総会決議がされた場合において、少なくとも使用人として受ける給与の体系が明確に確立されており、かつ、使用人として受ける給与がそれにより支給されている限り、右株主総会決議は、商法二六九条に違反せず、また、同条の脱法行為に当たらない。
解説
事案
被上告会社では、株主総会で取締役全員の報酬総額を改訂する決議がされた。この決議は、取締役の報酬額には使用人兼務取締役が使用人として受ける給与(使用人分給与)を含まないことを明示していた。同社では、使用人として受ける給与の体系が明確に確立されており、使用人分給与はその体系に従って支給されていた。
上告人は、この決議の無効確認を求めた。上告人の主張は次の3点である。
- 決議は商法269条(現会社法361条)に違反し、またはその脱法行為に当たる。
- 代表取締役以外の取締役が使用人を兼ねることは、会社の機関の本質に反する。
- 以上を前提とする違憲の主張。
原審(東京高裁)は上告人の主張を退け、上告人が上告した。
争点
- 株主総会決議で取締役全員の報酬総額のみを定め、具体的配分を取締役会に委ねることが商法269条に反しないか
- 使用人分給与を含まない旨を明示して取締役の報酬額を決議することが、商法269条違反または脱法行為に当たるか
- 代表取締役以外の取締役が使用人を兼ねることは会社の機関の本質に反するか
判旨
上告棄却。最高裁は、次の原審の判断を正当として是認した。
- 総額決議:商法269条(現会社法361条)の趣旨はお手盛りの弊害防止にある。したがって、株主総会決議で取締役全員の報酬総額を定め、具体的配分は取締役会の決定に委ねることができる。各取締役の報酬額を個別に定める必要はない。
- 使用人兼務取締役:少なくとも、①使用人として受ける給与の体系が明確に確立されており、かつ、②使用人分給与がその体系によって支給されている限り、取締役として受ける報酬額のみを株主総会で決議しても、同条に違反せず、脱法行為にも当たらない。
- 兼任の可否:代表取締役以外の通常の取締役が使用人を兼ねることは、会社の機関の本質に反しない。
判決文から
「商法二六九条の規定の趣旨は取締役の報酬額について取締役ないし取締役会によるいわゆるお手盛りの弊害を防止する点にある」
報酬規制の趣旨=お手盛り防止を明示
「株主総会の決議で取締役全員の報酬の総額を定め、その具体的な配分は取締役会の決定に委ねることができ、株主総会の決議で各取締役の報酬額を個別に定めることまでは必要ではなく」
総額決議・配分の取締役会一任を適法とした規範
「取締役としての実質的な意味における報酬が過多でないかどうかについて株主総会がその監視機能を十分に果たせなくなるとは考えられない」
使用人分給与を除く決議が脱法でない理由
「代表取締役以外の通常の取締役が当該会社の使用人を兼ねることが会社の機関の本質に反し許されないということもできない」
使用人兼務取締役の許容性
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