旅券発給拒否事件
根拠条項を示すだけの旅券発給拒否通知は理由付記の不備で違法とし、理由付記の趣旨と求められる程度を示した判例
出題:司法H23・司法H25・予備H27・予備H28・予備R5・予備R6
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 昭和57(行ツ)70 一般旅券発給拒否処分取消等
- 裁判
- 判決・破棄自判
- 判例集
- 民集 第39巻1号1頁
- 参照法条
- 旅券法13条1項,旅券法14条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一般旅券発給拒否処分が理由付記の不備のため違法とされた事例
裁判要旨
一般旅券発給拒否処分の通知書に、発給拒否の理由として、「旅券法一三条一項五号に該当する。」と記載されているだけで、同号適用の基礎となつた事実関係が具体的に示されていない場合には、理由付記として不備であつて、右処分は違法である。
解説
事案
Xは昭和52年1月8日、渡航先をサウジアラビアとする一般旅券の発給を申請した。これに対しYは、同年2月16日付けの書面で、発給しない旨をXに通知した。書面に付された理由は「旅券法一三条一項五号に該当する。」というものだけだった。旅券法14条は、外務大臣が同法13条により発給しないと決定したときは、理由を付した書面で申請者に通知しなければならないと定めている。
Xは発給拒否処分の取消しを求めて提訴し、次の2点を主張した。
- 旅券法13条1項5号は憲法22条2項に違反する。
- 理由付記が不備である。
第一審は処分を取り消した。原審(大阪高裁)は、この程度の理由の記載でも旅券法14条の理由付記として欠けるところはないとして、第一審判決を取り消した。Xが上告した。
争点
- 旅券法13条1項5号は外国旅行の自由を保障する憲法22条2項に違反するか
- 旅券法14条が求める理由付記はどの程度の記載を要するか
- 根拠条項(旅券法13条1項5号)を示すだけの理由付記は適法か、不備があれば処分は違法となるか
判旨
結論:原判決を破棄し、Yの控訴を棄却した(処分取消しの第一審判決が確定)。
- 合憲性:外国旅行の自由は憲法22条2項が保障するが、公共の福祉のための合理的な制限に服する。旅券法13条1項5号はその合理的制限を定めたもので、合憲である(最大判昭和33年9月10日を踏襲)。
- 理由付記の程度(一般論):法律が行政処分に理由付記を求める場合、どの程度の記載が必要かは、処分の性質と理由付記を命じた法律の規定の趣旨・目的に照らして決める。
- 規範:一般旅券発給拒否通知書の理由は、いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して拒否したかを、申請者がその記載自体から了知できるものでなければならない。単に根拠規定を示すだけでは、それで適用の基礎となった事実関係も当然分かる場合を除き、不十分である。
- あてはめ:5号は概括的・抽象的な規定である。したがって、いかなる事実関係を認定して5号に該当すると判断したかを具体的に記載しなければならない。「5号に該当する」とだけ付記した本件通知書は旅券法14条の要件を欠き、処分は違法として取り消される。
判決文から
「どの程度の記載をなすべきかは、処分の性質と理由付記を命じた各法律の規定の趣旨・目的に照らしてこれを決定すべきである」
理由付記の程度を決める一般的判断枠組み
「拒否事由の有無についての外務大臣の判断の慎重と公正妥当を担保してその恣意を抑制するとともに、拒否の理由を申請者に知らせることによつて、その不服申立てに便宜を与える趣旨に出たものというべきであり」
理由付記制度の二つの趣旨(恣意抑制・不服申立て便宜)
「いかなる事実関係に基づきいかなる法規を適用して一般旅券の発給が拒否されたかを、申請者においてその記載自体から了知しうるものでなければならず」
答案に書くべき理由付記の程度の規範
「単に発給拒否の根拠規定を示すだけでは、それによつて当該規定の適用の基礎となつた事実関係をも当然知りうるような場合を別として、旅券法の要求する理由付記として十分でないといわなければならない」
根拠条項のみの提示は原則不十分という結論と例外
「外国旅行の自由は憲法二二条二項の保障するところであるが、その自由は公共の福祉のために合理的な制限に服するものであり」
外国旅行の自由の憲法上の根拠条文(法廷意見)
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
