再入国許可申請書事件
定着した通称でも、本名の使用が要求される再入国許可申請書に用いれば人格の同一性を偽り私文書偽造になるとした判例
出題:司法H27・司法R6・司法R8
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 昭和58(あ)257 外国人登録違法違反、有印私文書偽造、同行使
- 裁判
- 判決・破棄差戻
- 判例集
- 刑集 第38巻3号336頁
- 参照法条
- 刑法159条1項,刑法161条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
被告人を指称するものとして相当広範囲に定着していた名称を用いて再入国許可申請書を作成行使した所為が私文書偽造同行使罪にあたるとされた事例
裁判要旨
本邦に密入国し外国人の新規登録申請をしていないにもかかわらず、甲名義で発行された外国人登録証明書を他から取得し、その名義で登録事項確認申請を繰り返すことにより、自らが外国人登録証明書の甲その人であるかのように装つて本邦に在留を続けていた被告人が、甲名義を用いて再入国許可申請書を作成、行使した所為は、被告人において甲という名称を永年自己の氏名として公然使用した結果、それが相当広範囲に被告人を指称するものとして定着していた場合であつても、私文書偽造、同行使罪にあたる。
解説
事案
被告人は朝鮮人で、昭和24年ころ日本に密入国し、新規の外国人登録をしていなかった。Gという実在の人物がAという仮名で登録していたA名義の登録について、一斉切替の際に何者かが被告人の写真をAの近影として提出した。これにより、被告人の写真が貼られたA名義の外国人登録証明書が発行され、実兄を通じて被告人の手に渡った。
被告人はその後、9回にわたりA名義で登録事項確認申請(写真提出・指紋押捺)を繰り返した。25年以上、妻子・近隣・職場・報道関係・行政機関など公私の広い場面でAを自己の氏名として使い、Aは被告人を指す名称として定着していた。ただし、少数の親族・同郷者には本名Iで接していた。
被告人は北朝鮮へ出国しようとして、法務大臣宛ての再入国許可申請書にAと署名してA印を押し、入国管理事務所に提出した。第一審と原審(大阪高裁)は、通名に高度の特定識別機能があり名義人と作成者に人格の同一性があるとして、この点の私文書偽造・同行使罪を否定した。検察官が事件受理の申立てをした。
争点
- 私文書偽造罪(刑法159条1項)にいう「偽造」の意義
- 永年使用して広く定着した通称名を用いて文書を作成した場合に、名義人と作成者の人格の同一性に齟齬が生じるか
- 文書の性質(公の手続で用いられ、本名の使用が要求される文書)が人格の同一性の判断に与える影響
判旨
原判決を破棄し、大阪高裁に差し戻した。
規範:私文書偽造とは、作成名義を偽ること、すなわち名義人でない者が権限なく名義人の氏名を冒用して文書を作成することをいう。その本質は、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にある(原判決のこの定義は正当とされた)。
あてはめ:
- 再入国許可申請書は、再入国許可という公の手続で用いられる文書である。審査では申請人の地位・資格の確認が不可欠であるから、事柄の性質上、当然に本名を用いて作成することが要求される。
- 被告人は外国人登録の関係でAになりすましていた。そのため、文書上のAから認識される人格は「適法に在留を許されているA」であり、在留資格のない密入国者である被告人とは別人格である。
- したがって、Aという通称が広く定着し高度の特定識別機能を持っていても、人格の同一性に齟齬があり、私文書偽造・同行使罪(刑法159条1項、161条1項)が成立する。
判決文から
「私文書偽造とは、その作成名義を偽ること、すなわち私文書の名義人でない者が権限がないのに、名義人の氏名を冒用して文書を作成することをいうのであつて、その本質は、文書の名義人と作成者との間の人格の同一性を偽る点にある」
偽造の定義。答案の規範としてそのまま使える
「再入国の許可を申請するにあたつては、ことがらの性質上、当然に、本名を用いて申請書を作成することが要求されているといわなければならない。」
文書の性質から本名使用の要求を導いた部分
「本件文書に表示されたAの氏名から認識される人格は、適法に本邦に在留することを許されているAであつて、密入国をし、なんらの在留資格をも有しない被告人とは別の人格であることが明らかである」
名義人の人格を文書の性質に即して捉えた核心部分
「そこに本件文書の名義人と作成者との人格の同一性に齟齬を生じているというべきである。」
人格の同一性の齟齬を認めた結論部分
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
