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税関検査事件

最大判昭和59年12月12日

検閲の定義を示して絶対的禁止とし、税関検査は検閲に当たらず、「風俗を害すべき書籍」は猥褻物に限定解釈して合憲とした

憲法表現の自由幸福追求権・プライバシー違憲審査制・憲法訴訟本試験で 14 問(短答 12・論文 2)

出題:司法H22・司法H24・司法H26・司法R1・司法R3・司法R7・予備R3・予備R4・予備R7

裁判所
最高裁判所大法廷
事件番号
昭和57(行ツ)156 輸入禁制品該当通知処分等取消
裁判
判決・棄却
判例集
民集 第38巻12号1308頁
参照法条
関税定率法21条1項3号,関税定率法21条3項,関税定率法(昭和55年法律第7号による改正前のもの)21条4項,関税定率法(昭和55年法律第7号による改正前のもの)21条5項,行政事件訴訟法3条2項,憲法21条,関税法67条,関税法76条

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

一 関税定率法二一条三項の規定による税関長の通知と抗告訴訟の対象 二 憲法二一条二項前段の検閲禁止の趣旨 三 憲法二一条二項にいう「検閲」 四 関税定率法二一条一項三号所定の物件に関する税関検査と憲法二一条二項にいう「検閲」 五 関税定率法二一条一項三号の規定による猥褻表現物の輸入規制と憲法二一条一項 六 表現の自由を規制する法律の規定について限定解釈をすることが許される場合 七 関税定率法二一条一項三号の「風俗を害すべき書籍図画」等との規定の意義及びその合憲性

裁判要旨

一 関税定率法二一条三項の規定による税関長の通知は、抗告訴訟の対象となる行政庁の処分にあたる。 二 憲法二一条二項前段の検閲禁止は、公共の福祉を理由とする例外の許容をも認めない趣旨と解すべきである。 三 憲法二一条二項にいう「検閲」とは、行政権が主体となつて、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査したうえ、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものを指すと解すべきである。 四 関税定率法二一条一項三号所定の物件に関し、輸入手続において税関職員が行う検査は、憲法二一条二項にいう「検閲」にあたらない。 五 関税定率法二一条一項三号の規定による猥褻表現物の輸入規制は、憲法二一条一項に違反しない。 六 表現の自由を規制する法律の規定について限定解釈をすることが許されるのは、その解釈により、規制の対象となるものとそうでないものとが明確に区別され、かつ、合憲的に規制しうるもののみが規制の対象となることが明らかにされる場合でなければならず、また、一般.国民の理解において、具体的場合に当該表現物が規制の対象となるかどうかの判断を可能ならしめるような基準をその規定から読みとることができるものでなければならない。 七 関税定率法二一条一項三号の「風俗を害すべき書籍、図画」等とは、猥褻な書籍、図画等を指すものと解すべきであり、右規定は広汎又は不明確の故に憲法二一条一項に違反するものではない。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

外国から上告人宛てに郵便物が届いた。その中に、関税定率法21条1項3号の輸入禁制品「公安又は風俗を害すべき書籍、図画、彫刻物その他の物品」(3号物件)に当たると認めるのに相当の理由がある貨物(猥褻な書籍・図画)があるとされた。函館税関長の委任を受けた札幌税関支署長は、同条3項に基づきその旨を上告人に通知し、上告人は郵便物の配達・交付を受けられなくなった。

上告人は、通知とこれに対する異議申出への決定の取消しを求めて提訴した。主張の内容は次のとおりである。

  • 税関検査は検閲に当たり、または知る自由を事前に規制するもので、憲法21条2項前段・1項に違反する。
  • 「公安又は風俗を害すべき」との文言は著しく不明確で、憲法21条1項・29条・31条に違反する。
  • 郵便物の検査は信書の秘密(憲法21条2項後段)を侵す。

原審(札幌高裁)は請求を認めず、上告人が上告した。

争点

  • 関税定率法21条3項の税関長の通知は抗告訴訟の対象となる「処分」に当たるか
  • 憲法21条2項前段の検閲禁止の趣旨(絶対的禁止か)と「検閲」の意義
  • 3号物件に関する税関検査は「検閲」に当たるか
  • 猥褻表現物の輸入規制は憲法21条1項に違反するか
  • 表現の自由を規制する法律の規定を限定解釈できる要件
  • 「風俗を害すべき書籍、図画」の規定は広汎・不明確ゆえに違憲か
  • 郵便物の税関検査は信書の秘密(憲法21条2項後段)を侵すか

判旨

上告棄却。

  • 処分性:21条3項の通知は輸入申告に対する最終的な拒否の態度の表明であり、実質的な拒否処分として機能する。よって通知と異議申出に対する決定は抗告訴訟の対象となる。
  • 検閲:憲法21条2項前段は、公共の福祉を理由とする例外も認めない絶対的禁止である。「検閲」とは、行政権が主体となって、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止することを、その特質として備えるものをいう。税関検査はこれに当たらない。
  • 21条1項:猥褻表現物の輸入規制は、単なる所持目的の輸入を含めても違憲でない。
  • 合憲限定解釈の要件:限定解釈が許されるのは次の二つを満たす場合に限る。①規制対象とそうでないものが明確に区別され、合憲的に規制し得るもののみが対象となることが明らかにされること。②一般国民の理解において、具体的場合に規制対象となるかの判断を可能にする基準を規定から読み取れること。
  • 「風俗を害すべき書籍、図画」等は猥褻な書籍・図画等に限られ、広汎・不明確ゆえに違憲とはいえない。
  • 本件郵便物は信書でないから、信書の秘密も侵さない。

判決文から

「公共の福祉を理由とする例外の許容(憲法一二条、一三条参照)をも認めない趣旨を明らかにしたものと解すべきである。」

検閲の絶対的禁止を示す部分

「行政権が主体となつて、思想内容等の表現物を対象とし、その全部又は一部の発表の禁止を目的として、対象とされる一定の表現物につき網羅的一般的に、発表前にその内容を審査した上、不適当と認めるものの発表を禁止すること」

検閲の定義。要素ごとに暗記必須

「その意味において、税関検査は、事前規制そのものということはできない。」

事前規制の側面は認めつつ、事前規制そのものではないとした

「その流入を一般的に、いわば水際で阻止することもやむを得ないものといわなければならない。」

単純所持目的の輸入も規制可とした結論

「表現の自由を規制する法律の規定について限定解釈をすることが許されるのは、その解釈により、規制の対象となるものとそうでないものとが明確に区別され、かつ、合憲的に規制し得るもののみが規制の対象となることが明らかにされる場合でなければならず」

合憲限定解釈の要件①

「一般国民の理解において、具体的場合に当該表現物が規制の対象となるかどうかの判断を可能ならしめるような基準をその規定から読みとることができるものでなければならない」

合憲限定解釈の要件②(一般国民基準)

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。