ガソリン撒布事件
横浜地判昭和58年7月20日
現住建造物内に大量のガソリンを撒いた段階で、点火前でも現住建造物等放火罪の実行の着手を認めた裁判例
刑法放火罪未遂・中止犯・不能犯本試験で 2 問(短答 2・論文 0)
出題:司法R2・司法R3
解説
事案
被告人が、人の現住する建造物の室内に大量のガソリンを撒布した事案である。被告人はガソリンを撒いたが、まだ点火行為(ライター等で火をつける行為)には及んでいない段階にあった。
放火罪では、通常は媒介物への点火行為が実行行為の中心と考えられる。そのため、点火前のガソリン撒布行為がなお予備にとどまるのか、それとも現住建造物等放火罪(刑法108条)の実行の着手(刑法43条本文)に当たるのかが問題となった。
争点
- 点火行為の前の、現住建造物内への大量のガソリン撒布の段階で、現住建造物等放火罪の実行の着手が認められるか
- 放火罪における実行の着手時期の判断基準(焼損の結果発生の客観的危険性)
判旨
結論:現住建造物の室内に大量のガソリンを撒布した段階で、現住建造物等放火罪(刑法108条)の実行の着手を認めた。
規範(答案用):
- 実行の着手は、構成要件的結果(放火罪では建造物の焼損)発生の客観的・現実的危険性が生じた時点で認められる。
- 放火罪では、必ずしも点火行為を待つ必要はない。ガソリンのような引火性の高い物質を室内に大量に撒布し、何らかの火気によって引火・焼損に至る客観的危険性が生じた場合には、点火前でも実行の着手が認められる。
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