よど号ハイジャック記事抹消事件
未決拘禁者の新聞閲読の自由の制限には、放置できない程度の障害が生ずる相当の蓋然性を要するとした判例
出題:司法H22・司法H26・司法H28・司法H29・司法R1・予備R6・予備R7
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 昭和52(オ)927 損害賠償
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第37巻5号793頁
- 参照法条
- 監獄法31条2項,監獄法施行規則86条1項,憲法13条,憲法19条,憲法21条,国家賠償法1条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 未決勾留により拘禁されている者の新聞紙、図書等の閲読の自由を監獄内の規律及び秩序維持のため制限する場合における監獄法三一条二項、監獄法施行規則八六条一項の各規定と憲法一三条、一九条、 二 一条二拘置所長が未決勾留により拘禁されている者の購読する新聞紙の記事を抹消する措置をとつたことに違法はないとされた事例
裁判要旨
一 監獄法三条二項、監獄法施行規則八六条一項の各規定は、未決勾留により拘禁されている者の新聞紙、図書等の閲読の自由を監獄内の規律及び秩序維持のため制限する場合においては、具体的事情のもとにおいて当該閲読を許すことにより右の規律及び秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められるときに限り、右の障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲においてのみ閲読の自由の制限を許す旨を定めたものとして、憲法一三条、一九条、二一条に違反しない。 二 いわゆる公安事件関係の被拘禁者らによる拘置所内の規律及び秩序に対するかなり激しい侵害行為が当時相当頻繁に行われていたなど原判示の事情のもとにおいては、公安事件関係の被告人として未決勾留により拘禁されている者の購読する新聞紙の記事中いわゆる赤軍派学生によつて行われた航空機乗取り事件に関する部分について、拘置所長が原判示の期間その全部を抹消する措置をとつたことに違法があるとはいえない。
解説
事案
上告人らは、いわゆる公安事件関係の被告人として、未決勾留により東京拘置所に拘禁されていた。東京拘置所長は、上告人らが購読する新聞紙のうち、赤軍派学生による航空機乗っ取り事件(よど号事件)に関する記事の全部を、一定の期間抹消する処分をした。当時、拘置所内では、公安事件関係の被拘禁者らによる規律・秩序へのかなり激しい侵害行為が相当頻繁に行われていた。
上告人らは国家賠償法1条1項に基づき損害賠償を請求した。そのなかで、閲読制限の根拠である次の法令等が憲法19条・21条に違反し無効であると主張した。
- 監獄法31条2項
- 監獄法施行規則86条1項
- 法務大臣訓令・法務省矯正局長依命通達
原審は請求を退け、上告人らが上告した。
争点
- 新聞紙・図書等の閲読の自由は憲法上保障されるか(根拠条文)
- 未決拘禁者の閲読の自由を監獄内の規律・秩序維持のため制限できるか、その要件
- 閲読制限を定める監獄法31条2項・同施行規則86条1項等は憲法13条・19条・21条に違反するか
- 拘置所長の本件記事抹消処分は違法か(長の裁量判断の審査方法)
判旨
上告棄却。
閲読の自由の保障:新聞紙・図書等の閲読の自由は、憲法19条・21条の趣旨・目的から派生原理として当然に導かれ、13条の趣旨にも沿う。
制限の可否と一般的枠組み:未決拘禁者の閲読の自由も、逃亡・罪証隠滅の防止という勾留目的のほか、監獄内の規律・秩序維持のために一定の制限を受ける。その可否は、制限の必要性の程度と、制限される自由の内容・性質、具体的制限の態様・程度とを較量して決する。
規範(答案用):規律・秩序維持のための閲読制限には、次の2点を要する。
- 一般的・抽象的なおそれでは足りない。被拘禁者の性向・行状、監獄内の管理・保安の状況、当該新聞紙等の内容その他の具体的事情のもとで、閲読を許せば規律・秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があること。
- 制限の程度が、障害発生の防止のために必要かつ合理的な範囲にとどまること。
法令の合憲性:監獄法31条2項・施行規則86条1項等は、上記の要件・範囲内でのみ制限を許す趣旨と解するのが相当であり、そう解することも可能である。よって憲法に違反しない(合憲限定解釈)。
適用の審査:蓋然性の有無と必要な制限の内容は、監獄の長の裁量的判断にまつ点が少なくない。そこで、長の認定に合理的根拠があり、制限措置の必要性の判断に合理性が認められる限り、措置は適法である。本件抹消処分に裁量権の逸脱・濫用はない。
判決文から
「新聞紙、図書等の閲読の自由が憲法上保障されるべきことは、思想及び良心の自由の不可侵を定めた憲法一九条の規定や、表現の自由を保障した憲法二一条の規定の趣旨、目的から、いわばその派生原理として当然に導かれるところであり」
閲読の自由の憲法上の根拠(19条・21条の派生原理)
「当該拘禁関係に伴う制約の範囲外においては、原則として一般市民としての自由を保障されるべき者であるから」
被拘禁者も原則として一般市民の自由を持つ
「当該閲読を許すことにより右の規律及び秩序が害される一般的、抽象的なおそれがあるというだけでは足りず」
抽象的おそれでは足りないことを明示
「その閲読を許すことにより監獄内の規律及び秩序の維持上放置することのできない程度の障害が生ずる相当の蓋然性があると認められることが必要であり」
「相当の蓋然性」基準の核心部分
「上に述べた要件及び範囲内でのみ閲読の制限を許す旨を定めたものと解するのが相当であり、かつ、そう解することも可能であるから」
法令の合憲限定解釈の論理
「障害発生の相当の蓋然性があるとした長の認定に合理的な根拠があり、その防止のために当該制限措置が必要であるとした判断に合理性が認められる限り、長の右措置は適法として是認すべきものと解するのが相当である」
適用段階で監獄の長の裁量を尊重する審査方法
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
