お綱の譲り渡し事件
所有の意思は外形的客観的に定まり、186条1項の推定は他主占有権原か他主占有事情の証明で覆るとした判例
出題:司法H26・司法H30・司法R5・予備H26
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 昭和57(オ)548 土地所有権移転登記手続
- 裁判
- 判決・破棄差戻
- 判例集
- 民集 第37巻2号131頁
- 参照法条
- 民法162条,民法186条1項,民訴法185条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
民法一八六条一項の所有の意思の推定が覆される場合
裁判要旨
民法一八六条一項の所有の意思の推定は、占有者がその性質上所有の意思のないものとされる権原に基づき占有を取得した事実が証明されるか、又は占有者が占有中、真の所有者であれば通常はとらない態度を示し、若しくは所有者であれば当然とるべき行動に出なかつたなど、外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかつたものと解される事情が証明されるときは、覆される。
解説
事案
Dの長男である被上告人は、結婚後、夫婦が主体となってDと共に農業に従事していた。昭和33年元旦、本件各不動産の所有者Dから、熊本県郡部の慣習である「お綱の譲り渡し」を受け、各不動産の占有を取得した。「お綱の譲り渡し」は、所有権を移転する面と家計の収支の権限を譲渡する面の両方にわたって多義的に用いられている。
被上告人はその後、農業経営と家計の収支一切を取りしきった。農協からの借入金の名義を自己に変更して自己の一存で融資を受け、農協の要望に応じてD所有の山林の一部を自己名義に移転するなどしており、各不動産の贈与を受けたと信じていた。Dは昭和40年に死亡し、被上告人と上告人ら(他の子)が相続した。
被上告人は、時効取得を原因とする所有権移転登記手続を上告人らに請求した。原審は、財産の処分権限の付与は認めたが、贈与までは断じ難いとした。そのうえで、所有権取得を信じたのは無理からぬとして、自主占有・善意無過失による10年の取得時効を認め、請求を認容した。
争点
- 民法186条1項による所有の意思の推定は、どのような場合に覆されるか
- 所有の意思の有無は、占有者の内心によるのか、外形的客観的に定まるのか
- 家長から「お綱の譲り渡し」を受けた同居の子の不動産占有は、自主占有といえるか
判旨
原判決を破棄し、原審に差し戻した。
規範
- 民法186条1項により占有者は所有の意思をもって占有するものと推定される。自主占有でないことを理由に取得時効を争う者が、他主占有であることの立証責任を負う。
- 所有の意思は、占有者の内心の意思ではなく、占有取得の原因である権原又は占有に関する事情により外形的客観的に定められる。
- 推定は、次のいずれかが証明されれば覆り、占有者の内心の意思を問わず所有の意思が否定される。
- 他主占有権原:その性質上所有の意思のないものとされる権原に基づいて占有を取得した事実
- 他主占有事情:占有中、真の所有者であれば通常はとらない態度を示し、又は所有者であれば当然とるべき行動に出なかったなど、外形的客観的にみて他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかったと解される事情
本件では、登記や農地法上の許可申請手続を経ていないこと等の事情が認定されれば、所有の意思が否定される可能性が十分にある。したがって、原審には法令の解釈適用の誤りと審理不尽・理由不備の違法がある。
判決文から
「右の所有の意思は、占有者の内心の意思によつてではなく、占有取得の原因である権原又は占有に関する事情により外形的客観的に定められるべきもの」
所有の意思の判断基準(外形的客観的判断)
「占有者が占有中、真の所有者であれば通常はとらない態度を示し、若しくは所有者であれば当然とるべき行動に出なかつたなど、外形的客観的にみて占有者が他人の所有権を排斥して占有する意思を有していなかつたものと解される事情が証明されるときは」
推定を覆す「他主占有事情」の定式
「占有者の占有が自主占有にあたらないことを理由に取得時効の成立を争う者は右占有が所有の意思のない占有にあたることについての立証責任を負う」
他主占有の立証責任は時効を争う側にある
「本件各不動産の所有権移転登記手続はおろか、農地法上の所有権移転許可申請手続さえも経由されていない」
他主占有事情の具体例として重視された事実
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
