最判昭和58年12月19日
離婚に伴う財産分与は、不相当に過大で財産分与に仮託した財産処分といえる特段の事情がない限り、詐害行為とならない。
出題:司法H26・司法R7・予備H26
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 昭和57(オ)798 詐害行為取消
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第37巻10号1532頁
- 参照法条
- 民法424条,民法768条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
離婚に伴う財産分与と詐害行為の成否
裁判要旨
離婚に伴う財産分与は、民法七六八条三項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為とはならない。
解説
事案
DとYは昭和22年に婚姻した。昭和31年からクリーニング業を営んでいたが、昭和49年ころからDは家業をYに任せ、自らは不動産業・金融業を始めた。DはX信用組合と信用組合取引契約を結んで手形貸付等を受けていたが、昭和51年11月に手形不渡りを出して倒産した。Dは他の女性と情交関係を結んで子までもうけたうえ、多額の負債を抱えて倒産した。そのためYは離婚を決意した。協議の結果、Yが家業を続けて子の面倒をみることとし、その基盤となる本件土地2筆を、慰謝料を含めた財産分与としてDからYに譲渡した。同年12月に離婚し、代物弁済を原因とする所有権移転登記がされた。
- 本件土地は、いずれもクリーニング業の利益で取得したもので、Dの不動産業とは関係がない。
- 本件土地はDにとって唯一に近い不動産で、価格は約989万円である。Yは根抵当権を抹消するために約536万円を支払った。
Xは、この譲渡が詐害行為にあたるとして取消しを求めた。
争点
- 分与者が債務超過の状態にある場合、離婚に伴う財産分与は詐害行為(民法424条)として取消しの対象となるか
- 財産分与の額・方法の決定において、分与者の債務超過・無資力をどう考慮するか(民法768条3項)
判旨
上告棄却(詐害行為にあたらないとした原審の判断を是認)。
- 財産分与の性質:夫婦が婚姻中に有していた実質上の共同財産の清算と、離婚後の相手方の生活維持(扶養)を目的とする。さらに、有責行為による離婚の精神的損害を賠償する給付(慰謝料)の要素を含めることも妨げられない。
- 財産分与の額・方法は「一切の事情」を考慮して定める(民法768条3項)。この点は協議上の分与でも裁判上の分与でも同じである。分与者の債務超過・無資力も考慮事情の一つにすぎない。したがって、債務超過という一事で財産分与をすべて否定するのは相当でなく、相手方はなお相当な財産分与を受けられる。
- 規範:分与者が債務超過で、分与により共同担保が減少するとしても、それが民法768条3項の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為として取消しの対象とならない。
判決文から
「分与者が債務超過であるという一事によつて、相手方に対する財産分与をすべて否定するのは相当でなく」
債務超過でも相当な分与は受けられるとした核心
「それが民法七六八条三項の規定の趣旨に反して不相当に過大であり、財産分与に仮託してされた財産処分であると認めるに足りるような特段の事情のない限り、詐害行為として、債権者による取消の対象となりえないものと解するのが相当である。」
答案に書く詐害行為否定の規範そのもの
「分与者が、離婚の際既に債務超過の状態にあることあるいはある財産を分与すれば無資力になるということも考慮すべき右事情のひとつにほかならず」
債務超過を768条3項の考慮事情に位置づけた
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