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宜野座村工場誘致事件

最判昭和56年1月27日

個別具体的な勧誘を伴う施策を、代償的措置なしに変更した地方公共団体は、やむをえない客観的事情によるのでない限り不法行為責任を免れないとした(破棄差戻し)。

行政法行政法の一般原則行政立法・行政計画本試験で 2 問(短答 2・論文 0)

出題:司法H22・予備H30

裁判所
最高裁判所第三小法廷
事件番号
昭和51(オ)1338 損害賠償
裁判
判決・その他
判例集
民集 第35巻1号35頁
参照法条
民法709条,国家賠償法1条1項

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

一 地方公共団体が一定内容の継続的な施策を決定し特定の者に対し右施策に適合する特定内容の活動を促す個別的具体的な勧告ないし勧誘をしたのち右施策を変更する場合と右特定の者に対する地方公共団体の不法行為責任 二 村が特定の工場の誘致を決定したのち新たに就任した村長において工場建設に対する協力を拒否する方針をとりこれによつて工場を設置しようとした者に損害を与えることが違法な加害行為にあたるものとされた事例

裁判要旨

一 地方公共団体が定めた一定内容の継続的な施策が、特定の者に対して右施策に適合する特定内容の活動をすることを促す個別的、具体的な勧告ないし勧誘を伴うものであり、かつ、その特定内容の活動が相当長期にわたる右施策の継続を前提としてはじめてこれに投入する資金又は労力に相応する効果を生じうる性質のものである場合において、右勧告等に動機づけられて右活動又はその準備活動に入つた者が右施策の変更により社会観念上看過することができない程度の積極的損害を被ることとなるときは、これにつき補償等の措置を講ずることなく右施策を変更した地方公共団体は、それがやむをえない客観的事情によるのでない限り、右の者に対する不法行為責任を免れない。 二 村長が特定の者に対しその者が村内で行う工場の建設・操業に全面的に協力することを言明し、村有地を工場敷地の一部として提供する旨の村議会の議決を経由したうえ積極的に工場建設を促し、右特定の者は右協力が継続するものと信じて工場敷地の確保・整備、機械設備の発注等を行い、村の側もこれを予想していたなど、判示の事実関係のもとにおいて、右工場建設に反対する村民の支持を得て当選した新村長が、右特定の者に生ずべき多額の積極的損害について補償等の措置を講ずることなく、右工場建設の途中でこれに対する協力を拒否した場合には、右協力拒否は、やむをえない客観的事情が存するのでない限り、右特定の者に対する違法な加害行為たることを免れない。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

上告人Xは、被上告人B村内に製紙工場の建設を計画し、当時のD村長に工場の誘致と村有地の譲渡を陳情した。D村長は、工場誘致と村有地譲渡を内容とする村議会の議決を経たうえ、Xに対し工場建設に全面的に協力すると言明した。

Xは、村の協力のもとで敷地を選定し、水利権申請について村長の同意書を得た。さらに、村有地の耕作者への補償料の支払い、機械設備の発注、整地工事の完了まで進めた。D村長もこれを了承し、融資促進の依頼文書を金融公庫に送るなど、協力を続けていた。

ところが、工場設置に反対する住民の支持を得て当選したF新村長は、工場建設への反対を固めた。F村長は、Xの建築確認申請書を建築主事に送付せず、住民の反対・社会情勢の急変等を理由に不同意を通知した。Xは工場建設を断念し、機械代金相当額等の積極的損害(元本約5574万円)の賠償を求めた。

第一審・原審は請求を排斥した。最高裁は、協力拒否を理由とする請求の部分を破棄し、差し戻した。

争点

  • 地方公共団体はいったん決定した継続的施策に拘束されるか
  • 施策変更が特定の者との関係で不法行為(違法な加害行為)となる要件
  • 住民自治の原則・選挙による政治情勢の変化は「やむをえない客観的事情」に当たるか

判旨

原則として、地方公共団体は一定の継続的施策を決定しても、その決定に拘束されない。施策が社会情勢の変動等で変更されるのは当然である。

もっとも、次の場合には、施策の変更が当事者間の信頼関係を不当に破壊するものとして違法性を帯び、不法行為責任を生じる。

  • 要件1:施策の決定が、特定の者に施策に適合する特定内容の活動を促す個別的・具体的な勧告ないし勧誘を伴う。
  • 要件2:その活動が、相当長期にわたる施策の継続を前提として初めて投入資金・労力に相応する効果を生じうる性質のものである。
  • 要件3:勧告等に動機づけられて活動に入った者が、施策変更により社会観念上看過できない程度の積極的損害を被る。
  • 要件4:損害を補償するなどの代償的措置を講じずに施策を変更した。
  • 例外:やむをえない客観的事情による変更であれば、違法とならない。

政治情勢の変化は、直ちにはこの「やむをえない客観的事情」に当たらない。本件では、協力拒否は、やむをえない客観的事情がない限り違法な加害行為となるとした。そのうえで、やむをえない事情の有無・因果関係・損害の程度を審理させるため差し戻した。

判決文から

「右施策が社会情勢の変動等に伴つて変更されることがあることはもとより当然であつて、地方公共団体は原則として右決定に拘束されるものではない。」

施策変更自由の原則を確認した出発点

「たとえ右勧告ないし勧誘に基づいてその者と当該地方公共団体との間に右施策の維持を内容とする契約が締結されたものとは認められない場合であつても」

契約の成立がなくても信頼保護が及ぶ

「右のように密接な交渉を持つに至つた当事者間の関係を規律すべき信義衡平の原則に照らし、その施策の変更にあたつてはかかる信頼に対して法的保護が与えられなければならないものというべきである。」

信頼保護の根拠は信義衡平の原則

「代償的措置を講ずることなく施策を変更することは、それがやむをえない客観的事情によるのでない限り、当事者間に形成された信頼関係を不当に破壊するものとして違法性を帯び」

違法性判断の中核規範

「地方公共団体の施策決定の基盤をなす政治情勢の変化をもつてただちに前記のやむをえない客観的事情にあたるものとし、前記のような相手方の信頼を保護しないことが許されるものと解すべきではない。」

選挙による方針転換も直ちには免責されない

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。