保険金詐取目的事件
被害者の承諾による傷害罪の違法性阻却は諸般の事情で判断する。保険金詐取目的の承諾は違法性を阻却しない。
出題:司法H30・司法R1・司法R4・司法R6・司法R8・予備H23・予備H30・予備R8
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 昭和55(し)91 再審請求棄却決定に対する即時抗告棄却決定に対する特別抗告
- 裁判
- 決定・棄却
- 判例集
- 刑集 第34巻6号396頁
- 参照法条
- 刑法35条,刑法204条,刑法211条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 被害者の承諾と傷害罪の成否 二 被害者の承諾が傷害行為の違法性を阻却しないとされた事例
裁判要旨
一 被害者が身体傷害を承諾した場合に傷害罪が成立するか否かは、単に承諾が存在するという事実だけでなく、右承諾を得た動機、目的、身体傷害の手段、方法、損傷の部位、程度など諸般の事情を照らし合せて決すべきである。 二 過失による自動車衝突事故であるかのように装い保険金を騙取する目的で、被害者の承諾を得てその者に故意に自己の運転する自動車を衝突させて傷害を負わせた場合には、右承諾は、当該傷害行為の違法性を阻却するものではない。
解説
事案
被告人は、過失による自動車衝突事故であるかのように装って保険金を騙取する目的で、被害者の承諾を得たうえ、故意に自己の運転する自動車を被害者に衝突させ、傷害を負わせた。
原判決はこれを業務上過失傷害罪(刑法211条)として有罪とした。
その後、刑訴法435条6号(無罪または原判決より軽い罪を認めるべき明らかな証拠の発見)を理由とする再審請求がされたが、棄却された。即時抗告も広島高裁岡山支部で棄却された。弁護人は憲法39条違反等を主張して特別抗告した。
最高裁は、抗告趣意は実質において単なる法令違反の主張であり、抗告理由に当たらないとした。そのうえで「なお」書きで、被害者の承諾と傷害罪の成否について判断を示した。
争点
- 被害者が身体傷害を承諾した場合に傷害罪(刑法204条)が成立するか、その判断基準
- 保険金騙取目的で得た被害者の承諾が傷害行為の違法性を阻却するか
判旨
結論:特別抗告棄却。本件では、原判決が認めた業務上過失傷害罪に代えて、より重い傷害罪が成立する。したがって刑訴法435条6号の「無罪又は軽い罪を認める」べき場合に当たらず、再審請求は理由がない。
規範:
- 被害者が身体傷害を承諾した場合に傷害罪が成立するか否かは、承諾があるという事実だけでなく、①承諾を得た動機・目的、②身体傷害の手段・方法、③損傷の部位・程度など、諸般の事情を照らし合わせて決すべきである。
- 過失事故を装い保険金を騙取する目的で、承諾を得て故意に自動車を衝突させ傷害を負わせた場合、その承諾は違法な目的に利用するために得られた違法なものである。よって当該傷害行為の違法性を阻却しない。
判決文から
「被害者が身体傷害を承諾したばあいに傷害罪が成立するか否かは、単に承諾が存在するという事実だけでなく、右承諾を得た動機、目的、身体傷害の手段、方法、損傷の部位、程度など諸般の事情を照らし合せて決すべきものである」
同意傷害の判断枠組み(総合考慮)を示した部分
「右承諾は、保険金を騙取するという違法な目的に利用するために得られた違法なものであつて、これによつて当該傷害行為の違法性を阻却するものではないと解するのが相当である」
目的の違法性から承諾の違法性阻却効を否定した当てはめ
「原判決の認めた業務上過失傷害罪にかえて重い傷害罪が成立することになる」
承諾があっても傷害罪が成立するという帰結
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
