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最決昭和54年3月27日

麻薬を覚せい剤と誤認して輸入した事案で、構成要件の実質的重なり合いにより麻薬輸入罪の成立と、関税法上の軽い無許可輸入罪の成立を認めた

刑法故意・錯誤生命・身体に対する罪本試験で 2 問(短答 2・論文 0)

出題:司法R4・予備H26

裁判所
最高裁判所第一小法廷
事件番号
昭和52(あ)836 麻薬取締法違反、関税法違反
裁判
決定・棄却
判例集
刑集 第33巻2号140頁
参照法条
刑法38条1項,刑法38条2項,麻薬取締法12条1項,麻薬取締法64条1項,麻薬取締法64条2項,覚せい剤取締法13条,覚せい剤取締法41条1項1号,覚せい剤取締法41条2項,関税法109条1項,関税法111条1項,関税定率法21条1項

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

一 営利の目的で麻薬であるジアセチルモルヒネの塩類粉末を覚せい剤と誤認して輸入した場合とその罪責 二 税関長の許可を受けないで麻薬を覚せい剤と誤認して輸入した場合とその罪責

裁判要旨

一 営利の目的で、麻薬であるジアセチルモルヒネの塩類粉末を覚せい剤と誤認して輸入した場合には、麻薬取締法六四条二項、一項、一二条一項の麻薬輸入罪が成立する。 二 税関長の許可を受けないで、麻薬を覚せい剤と誤認して輸入した場合には、関税法一一一条一項の無許可輸入罪が成立する。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

被告人は、ほか2名と共謀のうえ、次の2つの行為をした。

  • (一) 営利の目的で、麻薬であるジアセチルモルヒネの塩類の粉末を覚せい剤と誤認して本邦内に持ち込み、輸入した。
  • (二) 税関長の許可を受けないで、同じ麻薬を覚せい剤と誤認して輸入した。

第一審の処理は次のとおりである。

  • (一)について、麻薬取締法64条2項・1項・12条1項の該当を認めた。そのうえで、犯情の軽い覚せい剤を輸入する意思で犯したことを理由に、刑法38条2項・10条により覚せい剤取締法41条2項・1項1号・13条の罪の刑で処断した。
  • (二)について、覚せい剤を無許可で輸入する意思で、輸入禁制品である麻薬を輸入した(関税法109条1項にあたる事実の実現)と認定しつつ、関税法111条1項のみを適用した。

原審はこれを肯認し、被告人が上告した。最高裁は上告趣意をいずれも適法な上告理由にあたらないとし、職権で法令適用の当否を判断した。

争点

  • 営利目的で麻薬を覚せい剤と誤認して輸入した場合、麻薬輸入罪の故意が認められるか。認められる場合、どの罪の刑で処断すべきか
  • 無許可で覚せい剤を輸入する意思で輸入禁制品である麻薬を輸入した場合、関税法上いかなる罪が成立するか

判旨

(1) 麻薬輸入罪について

  • 抽象的事実の錯誤の場面では、両罪の構成要件が実質的に重なり合うかを問う。本件のように実質的に全く重なり合うときは、錯誤は生じた結果についての罪の故意を阻却しない。
  • 麻薬輸入罪と覚せい剤輸入罪は、目的物が異なるだけで、その余の構成要件要素が同一であり、法定刑も全く同一である。麻薬と覚せい剤の類似性も考えると、両罪の構成要件は実質的に全く重なり合う。
  • したがって、麻薬を覚せい剤と誤認した錯誤は麻薬輸入罪の故意を阻却せず、麻薬輸入罪が成立する。刑も当然に同罪の刑による。覚せい剤輸入罪の刑で処断した原判決は誤りだが、判決に影響を及ぼさない。

(2) 関税法違反について

  • 覚せい剤の無許可輸入罪(関税法111条1項)と、輸入禁制品である麻薬の輸入罪(同法109条1項)は、通関手続を履行しないでした類似貨物の密輸入行為を処罰する限度で構成要件が重なり合う。
  • 被告人には重い禁制品輸入罪の故意がないから同罪は成立しない。重なり合う限度で、軽い無許可輸入罪が成立する。

判決文から

「麻薬と覚せい剤との間には、実質的には同一の法律による規制に服しているとみうるような類似性があるというべきである。」

重なり合いを基礎づける客体の類似性の認定

「両罪の構成要件は実質的に全く重なり合つているものとみるのが相当であるから、麻薬を覚せい剤と誤認した錯誤は、生じた結果である麻薬輸入の罪についての故意を阻却するものではないと解すべきである。」

実質的重なり合いによる故意肯定の規範

「原判決が麻薬輸入罪の成立を認めながら、犯情の軽い覚せい剤輸入罪の刑によつて処断すべきものとしたのは誤りといわなければならない」

成立罪と処断刑を分離する処理を否定

「両罪の構成要件が重なり合う限度で軽い覚せい剤を無許可で輸入する罪の故意が成立し同罪が成立するものと解すべきである。」

法定刑が異なる場合は軽い罪の限度で成立

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。