最判昭和54年12月25日
拘禁場損壊による加重逃走罪は、逃走の手段としての損壊を開始した時点で実行の着手があるとした判例
出題:司法H23・司法H27・司法H30・司法R8
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 昭和54(あ)965 窃盗、詐欺、加重逃走未遂
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 刑集 第33巻7号1105頁
- 参照法条
- 刑法43条,刑法98条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 拘禁場又は械具の損壊による加重逃走罪における実行の着手 二 拘禁場又は械具の損壊による加重逃走罪につき実行の着手があつたとされた事例
裁判要旨
一 拘禁場又は械具の損壊による加重逃走罪については、逃走の手段としての損壊が開始されたときには、逃走行為自体に着手した事実がなくとも、実行の着手がある。 二 未決の囚人が、逃走の目的をもつて、拘禁場である木造舎房の房壁に設置された換気孔の周辺のモルタル部分を削り取り損壊したが、脱出可能な穴を開けることができず、逃走の目的を遂げなかつた場合(判文参照)には、加重逃走罪の実行の着手があつたといえる。
解説
事案
被告人ほか3名は、未決の囚人として松戸拘置支所の同じ房に収容されていた。4名は共謀のうえ、逃走の目的で、房の一隅にある便所の房壁に設置された換気孔の周辺を削った。房壁は外側が下見板張り、内側がモルタル塗りの木造で、厚さ約14.2cmである。換気孔は縦横各約13cmで、パンチングメタルが張られていた。
4名は、ドライバー状に研いだ鉄製の蝶番の芯棒を使い、換気孔周辺のモルタル部分(厚さ約1.2cm)3か所を、最大幅約5cm、最長約13cmにわたって削り取り損壊した。しかし、房壁の芯部に木の間柱があったため、脱出可能な穴を開けられず、逃走の目的を遂げなかった。
原審は加重逃走罪(刑法98条)の実行の着手を認め、加重逃走未遂罪の成立を肯定した。被告人側が上告した(罪名は窃盗、詐欺、加重逃走未遂)。
争点
- 拘禁場または械具の損壊による加重逃走罪(刑法98条)の実行の着手時期
- 逃走行為自体に着手していなくても、損壊の開始によって加重逃走未遂罪(刑法102条)が成立するか
- 換気孔周辺のモルタルを削ったが脱出可能な穴を開けられなかった本件で、実行の着手が認められるか
判旨
上告棄却。
規範:刑法98条の加重逃走罪のうち、拘禁場または械具の損壊によるものは、逃走の手段としての損壊が開始されたときに実行の着手がある。逃走行為自体に着手した事実は不要である。
あてはめ:未決の囚人である被告人らは、共謀して逃走目的で房壁の換気孔周辺のモルタル部分3か所を削り取り損壊した。間柱に阻まれて脱出可能な穴は開けられなかったが、この事実関係のもとで加重逃走罪の実行の着手を認めた原審の判断は正当である。
したがって、加重逃走未遂罪(刑法102条・98条)が成立する。
なお、共犯者の供述は憲法38条3項の「本人の自白」と同一視されない(大法廷判例の引用)として、補強証拠に関する上告趣意も退けた。
判決文から
「刑法九八条のいわゆる加重逃走罪のうち拘禁場又は械具の損壊によるものについては、逃走の手段としての損壊が開始されたときには、逃走行為自体に着手した事実がなくとも、右加重逃走罪の実行の着手があるものと解するのが相当である。」
着手時期の規範そのもの。答案にそのまま使える
「右房壁の芯部に木の間柱があつたため、脱出可能な穴を開けることができず、逃走の目的を遂げなかつた」
脱出可能な穴がなくても着手を肯定した事実関係
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
