防護柵幼児転落事件
営造物の通常の用法に即しない、設置管理者が通常予測できない行動による事故について、国賠法2条1項の瑕疵を否定した判例
出題:司法R5・予備H29・予備R7
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 昭和53(オ)76 損害賠償
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第32巻5号809頁
- 参照法条
- 国家賠償法2条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
営造物の通常の用法に即しない行動の結果生じた事故と営造物の設置管理の瑕疵
裁判要旨
営造物の通常の用法に即しない行動の結果事故が生じた場合において、その営造物として本来具有すべき安全性に欠けるところがなく、右行動が設置管理者において通常予測することのできないものであるときは、右事故が営造物の設置又は管理の瑕疵によるものであるということはできない。
解説
事案
上告人(当時6歳)は、昭和44年8月、被上告人が管理する神戸市内の道路の南側端の防護柵を越えて、約4m下の高校校庭に転落し、頭蓋骨陥没骨折等の傷害を負った。
- 設置の経緯:この道路は、土砂の流入や舗装工事で路面が次第に高くなった。子どもの転落事故が数件起き、住民の声もあったため、被上告人は昭和40年に本件防護柵を設置した。
- 柵の構造:高さ80cmのコンクリート柱に上下2本の丸棒状の鉄パイプを通したもの。路面から上段手摺まで65cmで、市内の同種の柵(52〜65cm)と同程度であった。幼児の遊び道具に好適なものではなかった。
- 利用状況:付近に遊び場がなく、道路が子どもの遊び場になっていた。親は柵で遊ばないよう注意していた。
- 事故の態様:上告人は上段手摺に後ろ向きに腰かけて遊ぶうち、誤って転落したと推認された。柵の設置後、他の転落事故や住民の陳情はなかった。
上告人は国家賠償法2条1項に基づき損害賠償を求めた。原審は瑕疵を否定し、上告人が上告した。
争点
- 国家賠償法2条1項の「設置又は管理に瑕疵」の判断方法
- 営造物の通常の用法に即しない行動の結果生じた事故について、設置管理者は責任を負うか
判旨
上告棄却(瑕疵否定)。
- 規範①(判断方法):国家賠償法2条1項の瑕疵があったかどうかは、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して、具体的個別的に判断すべきである。
- 規範②(裁判要旨):営造物の通常の用法に即しない行動の結果事故が生じた場合でも、次の2つを満たすときは、事故が営造物の設置又は管理の瑕疵によるものとはいえない。
- その営造物が本来具有すべき安全性に欠けるところがないこと
- その行動が設置管理者において通常予測することのできないものであること
- あてはめ:本件防護柵は、材質・高さ・構造からみて、通行時の転落防止という目的に照らし安全性に欠けるところがない。上告人の転落は、危険判断能力に乏しい6歳の幼児の行動であっても、通常予測できない行動に起因する。よって設置管理者は責任を負わない。
判決文から
「国家賠償法二条一項にいう営造物の設置又は管理に瑕疵があつたとみられるかどうかは、当該営造物の構造、用法、場所的環境及び利用状況等諸般の事情を総合考慮して具体的個別的に判断すべきものである」
瑕疵判断の考慮要素。答案の規範としてそのまま使える
「上告人の転落事故は、同人が当時危険性の判断能力に乏しい六歳の幼児であつたとしても、本件道路及び防護柵の設置管理者である被上告人において通常予測することのできない行動に起因するものであつたということができる」
幼児の行動でも通常予測不可能と評価した点
「右営造物につき本来それが具有すべき安全性に欠けるところがあつたとはいえず、上告人のしたような通常の用法に即しない行動の結果生じた事故につき、被上告人はその設置管理者としての責任を負うべき理由はないものというべきである」
通常の用法に即しない行動による事故の責任を否定
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