SaySayLaw

びょう打銃事件

最判昭和53年7月28日

方法の錯誤で法定的符合説を採り、予期しない通行人にも殺意を認めて強盗殺人未遂罪を成立させた判例

刑法故意・錯誤罪刑法定主義過失本試験で 14 問(短答 14・論文 0)

出題:司法H23・司法H24・司法H25・司法H26・司法H28・司法R1・司法R2・司法R4・司法R6・予備H23・予備H25・予備H28・予備H30

裁判所
最高裁判所第三小法廷
事件番号
昭和52(あ)623 強盗殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反、火薬類取締法違反
裁判
判決・棄却
判例集
刑集 第32巻5号1068頁
参照法条
刑法38条1項,刑法240条,刑法243条

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

強盗殺人未遂罪といわゆる打撃の錯誤

裁判要旨

犯人が強盗の手段として人を殺害する意思のもとに銃弾を発射して殺害行為に出た結果、犯人の意図した者に対して右側胸部貫通銃創を負わせたほか、犯人の予期しなかつた者に対しても腹部貫通銃創を負わせたときは、後者に対する関係でも強盗未遂罪が成立する。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

被告人は、警ら中の巡査Bからけん銃を奪おうと決め、Bの後をつけた。東京都新宿区の歩道上で周囲に人影が見えなくなったとみると、Bを殺すかもしれないと認識しつつあえてこれを認容した(未必の殺意)。そのうえで、建設用びょう打銃を改造しびょう1本を装てんした手製装薬銃を構え、Bの背後約1メートルに近づいて右肩部付近をねらい、ハンマーで撃針後部をたたいてびょうを発射した。

  • Bは右側胸部貫通銃創を負ったが死亡せず、被告人はけん銃も奪えなかった。
  • Bの身体を貫通したびょうが、約30メートル右前方の道路反対側の歩道を通行中のAの背部に命中し、Aも腹部貫通銃創を負った。

原判決は、Bには少なくとも未必的殺意を認めた。一方、Aについては未必的殺意も暴行の未必的故意もないとして過失を認定した。そのうえでA・B双方につき強盗殺人未遂罪(刑法240条後段・243条)を適用した。弁護人は、強盗殺人未遂罪は殺意を要するのに過失で同罪を認めたのは判例違反だとして上告した。

争点

  • 強盗殺人未遂罪(刑法240条後段・243条)の成立に殺意を要するか
  • 方法の錯誤(打撃の錯誤)の場合に、認識していない客体に生じた結果について故意(殺意)を認めうるか(刑法38条1項)
  • 意図した客体と予期しない客体の双方に結果が生じた場合に、双方について故意犯が成立するか

判旨

上告棄却。Aに対する所為についても強盗殺人未遂罪が成立する。

  • 強盗殺人未遂罪の成立要件:強盗犯人が強盗の機会に人を殺害しようとして遂げなかった場合に成立する。したがって、Aの傷害結果について同罪を認めるには殺意が必要である。
  • 故意の規範(法定的符合説):故意には罪となるべき事実の認識を要する。ただし、認識した事実と現実に発生した事実が具体的に一致する必要はなく、法定の範囲内で一致すれば足りる。
  • 方法の錯誤への当てはめ:人を殺す意思で殺害行為に出た以上、犯人が認識しなかった人に結果が生じた場合も、その結果について殺人の故意がある。
  • 本件の結論:意図したBに対する殺人未遂罪が成立する。同時に、予期しなかったAについても、殺害行為と傷害結果との間に因果関係がある以上、殺人未遂罪が成立する。いずれも強盗の手段として行われたから、強盗との結合犯としてB・A双方に強盗殺人未遂罪が成立する。

判決文から

「犯人が認識した罪となるべき事実と現実に発生した事実とが必ずしも具体的に一致することを要するものではなく、両者が法定の範囲内において一致することをもつて足りるものと解すべきである」

法定的符合説の規範そのもの

「人を殺す意思のもとに殺害行為に出た以上、犯人の認識しなかつた人に対してその結果が発生した場合にも、右の結果について殺人の故意があるものというべきである。」

方法の錯誤で予期しない客体にも故意を認める

「強盗殺人未遂の罪は強盗犯人が強盗の機会に人を殺害しようとして遂げなかつた場合に成立するものであることは、当裁判所の判例とするところであり」

強盗殺人未遂罪には殺意が必要

「強盗との結合犯として、被告人のBに対する所為についてはもちろんのこと、Aに対する所為についても強盗殺人未遂罪が成立するというべきである。」

意図した客体・予期しない客体の双方に故意犯成立

「強盗殺人未遂罪の成立について過失で足りるとの判断を示したものとはみられない。」

過失では強盗殺人未遂罪は成立しない前提

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。