杉山事件
接見交通権を憲法34条に由来する重要な権利・弁護人の固有権と位置づけ、接見指定のあり方を示した判決
出題:司法H22・予備R8
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 昭和49(オ)1088 国家賠償
- 裁判
- 判決・破棄差戻
- 判例集
- 民集 第32巻5号820頁
- 参照法条
- 憲法34条前段,刑訴法39条1項,刑訴法39条3項,国家賠償法1条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 弁護人から被疑者との接見の申出があつた場合に捜査機関のとるべき措置 二 弁護人の被疑者に対する接見の申出を拒んだ警察官の行為が国家賠償法一条一項にいう違法な行為にあたらないとされた事例
裁判要旨
一 捜査機関は、弁護人から被疑者との接見の申出があつたときは、原則として何時でも接見の機会を与えるべきであり、現に被疑者を取調中であるとか、実況見分、検証等に立ち会わせる必要があるなど捜査の中断による支障が顕著な場合には、弁護人と協議してできる限り速やかな接見のための日時等を指定し、被疑者が防禦のため弁護人と打ち合せることのできるような措置をとるべきである。 二 被疑者取調中に弁護人から接見の申出を受けた警察官が、接見の日時等の指定権限を内部的に制限されているため、右弁護人に対し権限を有する捜査本部の捜査主任官の指定を受けるよう求め、かつ、右申出を捜査本部に伝達したなど、判示の事情があるときには、右警察官が捜査主任官の指定のないことを理由に接見を拒んでも、国家賠償法一条一項にいう違法な行為にあたらない。
解説
事案
昭和40年4月25日、し尿処理場設置反対運動に伴う威力業務妨害等の被疑者として地元住民3名が逮捕され、3つの警察署に分けて留置された。捜査本部は枚岡署に置かれ、接見の日時等を指定する権限は、内部的に捜査主任官Iとその補佐Hに限られていた。
弁護士である被上告人は、Hとの電話で「指定書がないとあきまへんで」と言われ、言い争いになった。午後4時30分頃、被上告人は布施署で、「弁護人となろうとする者」として被疑者Eとの接見を求めた。Eは弁護人選任の意思を表明したが、Eを取調べ中の警察官Dは、指定権限がないことを理由に、「捜査主任官の指定を受けるか指定書を持ってこい」と接見を拒否した。被上告人が取調室に向かおうとしてもみ合いになり、被上告人は負傷した。DはHに再三電話で状況を報告し、被上告人とHとの電話も2度あったが、感情的な応酬に終わった。午後7時30分頃にHが来署し、午後8時25分から10分間の接見が実現した。
原審は、Dの接見拒否を違法として上告人に慰謝料10万円の支払を命じた。
争点
- 弁護人等から接見の申出があった場合に、捜査機関がとるべき措置(刑訴法39条3項による接見指定の要件・方法)
- 指定権限を内部的に制限された警察官が、捜査主任官の指定がないことを理由に接見を拒んだことが、国家賠償法1条1項上違法か
判旨
原判決中上告人敗訴部分を破棄し、大阪高等裁判所に差し戻した。
規範
- 接見交通権は、憲法34条前段の保障に由来する。身体拘束を受けた被疑者にとって刑事手続上最も重要な基本的権利であり、弁護人にとってはその固有権の最も重要なものの一つである。
- 刑訴法39条3項の接見指定は、必要やむをえない例外的措置である。被疑者の防禦準備権を不当に制限してはならない(同項ただし書)。
- 捜査機関は、弁護人等から接見の申出があれば、原則としていつでも接見の機会を与えなければならない。
- 現に取調べ中である、実況見分・検証等に立ち会わせる必要があるなど、捜査の中断による支障が顕著な場合には、弁護人等と協議して、できる限り速やかな接見の日時等を指定し、被疑者が防禦のため弁護人等と打ち合わせられる措置をとるべきである。
あてはめ
- 接見をあらかじめ一般的に禁止して許可制とし、速やかに指定しなかったHの措置は違法である。
- 指定権限のないDが、捜査主任官の指定を受けるよう求めて接見を拒んだことは、国家賠償法1条1項上違法と評価できない。
判決文から
「この弁護人等との接見交通権は、身体を拘束された被疑者が弁護人の援助を受けることができるための刑事手続上最も重要な基本的権利に属するものであるとともに、弁護人からいえばその固有権の最も重要なものの一つであることはいうまでもない。」
接見交通権の性質(基本的権利・弁護人の固有権)
「捜査機関のする右の接見等の日時等の指定は、あくまで必要やむをえない例外的措置であつて、被疑者が防禦の準備をする権利を不当に制限することは許されるべきではない」
接見指定は例外的措置であるとの位置づけ
「捜査機関は、弁護人等から被疑者との接見の申出があつたときは、原則として何時でも接見の機会を与えなければならないのであり」
原則いつでも接見させるという原則論
「現に被疑者を取調中であるとか、実況見分、検証等に立ち会わせる必要がある等捜査の中断による支障が顕著な場合には、弁護人等と協議してできる限り速やかな接見のための日時等を指定し」
指定の要件(顕著な支障)と方法(協議・速やかな指定)
「被疑者と弁護人等との接見をあらかじめ一般的に禁止して許可にかからしめ、しかも被上告人の接見要求に対して速やかに日時等の指定をしなかつた捜査本部のHの措置は違法といわざるをえない」
一般的禁止・許可制の運用を違法と判断
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
