マクリーン事件
外国人の人権は権利性質説で保障されるが、在留制度の枠内にとどまる。在留更新の判断は法務大臣の広い裁量に委ねられるとした
出題:司法H22・司法H23・司法H25・司法H26・司法H28・司法H29・司法R2・司法R6・司法R8・予備H24・予備H28・予備H29・予備R8
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 昭和50(行ツ)120 在留期間更新不許可処分取消
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第32巻7号1223頁
- 参照法条
- 憲法第3章,憲法19条,憲法21条,憲法22条1項,出入国管理令21条3項,行政事件訴訟法30条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 外国人のわが国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利と憲法の保障の有無 二 出入国管理令二一条三項に基づく在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無の判断と法務大臣の裁量権 三 出入国管理令二一条三項に基づく法務大臣の在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無についての判断と裁判所の審査の限界 四 わが国に在留する外国人と政治活動の自由に関する憲法の保障 五 外国人に対する憲法の基本的人権の保障と在留の許否を決する国の裁量に対する拘束の有無 六 外国人の在留期間中の憲法の保障が及ばないとはいえない政治活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由がないとした法務大臣の判断が裁量権の範囲を超え又はその濫用があつたものということはできないとされた事例
裁判要旨
一 外国人は、憲法上、わが国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されていない。 二 出入国管理令二一条三項に基づく在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無の判断は「法務大臣の裁量に任されているものであり、上陸拒否事由又は退去強制事由に準ずる事由に該当しない限り更新を不許可にすることが許されないものではない。 三 裁判所は、出入国管理令二一条三項に基づく法務大臣の在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無の判断についてそれが違法となるかどうかを審査するにあたつては、右判断が法務大臣の裁量権の行使としてされたものであることを前提として、その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により右判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合に限り、右判断が裁量権の範囲を超え又はその濫用があつたものとして違法であるとすることができる。 四 政治活動の自由に関する憲法の保障は、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても及ぶ。 五 外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、在留の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障すなわち、在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情として斟酌されないことまでの保障を含むものではない。 六 上告人の本件活動は、外国人の在留期間中の政治活動として直ちに憲法の保障が及ばないものであるとはいえないが、そのなかにわが国の出入国管理政策に対する非難行動あるいはわが国の基本的な外交政策を非難し日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものが含まれており、法務大臣が右活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断したとしても、裁量権の範囲を超え又はその濫用があつたものということはできない。
解説
事案
米国籍の上告人は、語学学校の英語教師として在留資格を得て昭和44年に上陸した(在留期間1年)。しかし入国後わずか17日で同校を退職し、別の財団法人に英語教師として無届で転職した。また外国人ベ平連に所属し、ベトナム戦争反対、日米安保反対、出入国管理法案反対などの集会・デモ・ビラ配布に参加した。これらの活動はいずれも平和的・合法的な域を出ず、参加の態様も指導的・積極的ではなかった。
上告人が1年の更新を申請したところ、法務大臣(被上告人)は出国準備期間として120日間のみ更新を許可した。さらに1年の更新を申請すると、法務大臣は「更新を適当と認めるに足りる相当の理由」(出入国管理令21条3項)がないとして不許可処分をした。主な理由は無届転職と政治活動であり、とりわけ政治活動が重視された。上告人が処分の取消しを求めたが、一審判決を経て原審は請求を退けたため、上告した。
争点
- 外国人に入国・在留の権利(引き続き在留を要求しうる権利)が憲法上保障されるか(憲法22条1項)
- 出入国管理令21条3項の更新事由の判断における法務大臣の裁量の広さと、裁判所の審査方法(行政事件訴訟法30条)
- 裁量権行使の準則(裁量基準)に違背した処分は違法となるか
- 外国人に憲法上の人権、特に政治活動の自由の保障が及ぶか
- 人権保障を受ける在留中の行為を、更新の際に消極的事情として考慮できるか
判旨
上告棄却(本件不許可処分は適法)。
- 入国・在留の権利:外国人は、憲法上、入国の自由も、在留の権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利も保障されていない。
- 裁量の広さ:更新事由の判断は法務大臣の広汎な裁量に任されている。上陸拒否事由・退去強制事由に準ずる事由に該当しない限り不許可にできない、というものではない。
- 審査基準:判断が全く事実の基礎を欠き、又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかな場合に限り、裁量権の逸脱・濫用として違法となる。裁判所は、重要な事実の誤認等により全く事実の基礎を欠くか、事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかかを審理する。
- 裁量基準:準則違背は原則として当不当の問題にとどまり、当然に違法とはならない。
- 人権保障:基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみを対象とするものを除き外国人にも及ぶ。政治活動の自由も、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等を除き保障される。
- 在留制度の枠内:ただしその保障は外国人在留制度の枠内で与えられるにすぎない。保障を受ける行為を更新の際に消極的事情として斟酌されないことまでは保障されない。
判決文から
「憲法上、外国人は、わが国に入国する自由を保障されているものでないことはもちろん、所論のように在留の権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されているものでもないと解すべきである。」
入国・在留の権利を否定した部分
「その判断が全く事実の基礎を欠き又は社会通念上著しく妥当性を欠くことが明らかである場合に限り、裁量権の範囲をこえ又はその濫用があつたものとして違法となるものというべきである。」
裁量審査の規範(社会観念審査)
「処分が右準則に違背して行われたとしても、原則として当不当の問題を生ずるにとどまり、当然に違法となるものではない。」
裁量基準違反の効果
「憲法第三章の諸規定による基本的人権の保障は、権利の性質上日本国民のみをその対象としていると解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても等しく及ぶものと解すべきであり」
権利性質説の定式
「政治活動の自由についても、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、その保障が及ぶものと解するのが、相当である。」
外国人の政治活動の自由の範囲
「外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、右のような外国人在留制度のわく内で与えられているにすぎないものと解するのが相当であつて」
人権保障の限界(在留制度の枠内)
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
