全逓名古屋中郵事件
公労法17条1項の争議行為一律禁止を合憲とし、違反する争議行為への労組法1条2項の適用を否定して全逓東京中郵判決を変更した
出題:司法H28・司法R5・司法R8
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 昭和44(あ)2571 郵便法違反幇助、建造物侵入、公務執行妨害
- 裁判
- 判決・その他
- 判例集
- 刑集 第31巻3号182頁
- 参照法条
- 憲法28条,刑法第1編第7章,刑法35条,刑法130条,公共企業体等労働関係法17条1項,労働組合法1条,労働組合法3条,郵便法79条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一、公共企業体等労働関係法一七条一項と憲法二八条 二、公共企業体等労働関係法一七条一項違反の争議行為と労働組合法一条二項の適用 三、公共企業体等労働関係法一七条一項違反の争議行為と刑事法上の処罰阻却 四、郵政職員の争議行為に参加を呼びかけた行為が郵便法七九条一項の罪の幇助罪による処罰を阻却されないとされた事例 五、公共企業体等労働関係法一七条一項違反の争議行為に際しこれに付随して行われた犯罪構成要件該当行為について違法性阻却事由の有無を判断する一般的基準 六、公共企業体等労働関係法一七条一項違反の争議行為に際しこれに付随して行われた建造物侵入行為が刑法上の違法性を欠くものではないとされた事例
裁判要旨
一 公共企業体等労働関係法一七条一項は、憲法二八条に違反しない。 二 公共企業体等労働関係法一七条一項違反の争議行為には、労働組合法一条二項の適用はない。 三 公共企業体等労働関係法一七条一項違反の争議行為が犯罪構成要件に該当し、違法性があり、責任がある場合であつても、それが同盟罷業、怠業その他単なる労務不提供のような不作為を内容とするものであつて、同条項が存在しなければ正当な争議行為として処罰を受けることのないようなものであるときには、争議行為の単純参加者に限り、その罰則による処罰を阻却される。 四 郵政職員が争議行為として行つた勤務時間内二時間の職場大会に参加を呼びかけた本件行為は、郵便法七九条一項の罪の幇助罪による処罰を阻却されない。 五 公共企業体等労働関係法一七条一項違反の争議行為に際しこれに付随して行われた犯罪構成要件該当行為について違法性阻却事由の有無を判断するにあたつては、その行為が同条項違反の争議行為に際しこれに付随して行われたものであるという事実を含めて、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを考察しなければならない。 六 公共企業体等労働関係法一七条一項違反の争議行為に参加を呼びかけるため行われた本件建造物侵入行為は、刑法上の違法性を欠くものではない。
解説
事案
昭和33年3月20日、全逓名古屋中央郵便局支部が、勤務時間内に2時間食い込む職場大会を開いた。組合役員で郵政事務官である被告人らは、郵便局の地下食堂で集配課職員9名に「組合が全責任を持つから出て行つて下さい」などと参加を呼びかけた。職員らは職場を離れ、速達書留82通、普通通常郵便約2万8900通の配達をしなかった。被告人らはまた、ピケ員を指揮して局舎内に立ち入るなどした。
起訴罪名は郵便法79条1項の罪の教唆、建造物侵入罪、公務執行妨害罪である。
- 第一審:職員らは既に参加を決意していたとして教唆に代えて幇助罪を認め、建造物侵入罪も有罪とした。公務執行妨害罪は否定した。
- 原審:全逓東京中郵判決に従い、郵便不取扱いも建造物侵入も正当な争議行為であるとして全員無罪とした。
検察官が上告した。
争点
- 公労法17条1項による現業国家公務員・三公社職員の争議行為一律禁止は憲法28条に違反するか
- 公労法17条1項に違反する争議行為が他の罰則(郵便法79条1項)の構成要件に該当する場合、労組法1条2項による違法性阻却が認められるか
- 違法な争議行為の単純参加者・指導者の刑事処罰の範囲
- 違法な争議行為に付随して行われた犯罪構成要件該当行為の違法性阻却の判断基準
判旨
原判決のうち郵便法違反幇助と建造物侵入の部分を破棄し、第一審の有罪判決を維持した。公務執行妨害の部分は上告棄却である。
- 合憲性:公労法17条1項は憲法28条に違反しない。五現業・三公社職員も憲法28条の勤労者にあたる。しかし、非現業国家公務員について全農林警職法判決が示した理は、これらの職員にも「直ちに又は基本的に」妥当する。
- 違法性阻却:公労法17条1項違反の争議行為には労組法1条2項の適用がない。この点で全逓東京中郵判決を変更した。
- 単純参加者:争議行為が同盟罷業・怠業など単なる労務不提供の不作為を内容とし、かつ同条項がなければ正当な争議行為として処罰されないものであるときは、単純参加者に限り処罰が阻却される。あおりにあたる指導的行為をした者は、郵便法79条1項の教唆・幇助犯として処罰される。
- 付随行為:争議行為に付随する構成要件該当行為については、付随して行われたという事実を含め、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮し、法秩序全体の見地から許容されるかを判断する。
判決文から
「右の理は、公労法の適用を受ける五現業及び三公社の職員についても、直ちに又は基本的に妥当するものということができる。」
全農林判決の法理を現業・三公社に及ぼした核心部分
「私企業の労働者の場合のような労使による勤務条件の共同決定を内容とする団体交渉権の保障はなく、右の共同決定のための団体交渉過程の一環として予定されている争議権もまた、憲法上、当然に保障されているものとはいえないのである。」
財政民主主義から団交権・争議権の憲法保障を否定
「これは、協約締結権を含む団体交渉権を付与しながら争議権を否定する場合の代償措置として、よく整備されたものということができ、右の職員の生存権擁護のための配慮に欠けるところがないものというべきである。」
公労委の仲裁制度等を代償措置として評価
「以上の理由により、公労法一七条一項違反の争議行為についても労組法一条二項の適用があり、原則としてその刑事法上の違法性が阻却されるとした点において、S事件判決は、変更を免れないこととなるのである。」
全逓東京中郵判決の明示的変更
「ここで単純参加行為に対する処罰の阻却を肯定するのは、もとよりその行為を適法、正当なものと認めるからではなく、違法性を阻却しないけれども、右に述べた諸般の考慮から刑事法上不処罰とするのが相当であると解されるからなのである。」
違法性阻却ではなく処罰阻却であることの明示
「その行為が同条項違反の争議行為に際し付随して行われたものであるという事実を含めて、行為の具体的状況その他諸般の事情を考慮に入れ、それが法秩序全体の見地から許容されるべきものであるか否かを考察しなければならないのである。」
付随行為の違法性阻却の一般的判断基準
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
