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長沼ナイキ基地訴訟控訴審

札幌高判昭和51年8月5日

代替施設の完成で訴えの利益が消滅したとして訴えを却下した。平和的生存権の裁判規範性を否定し、自衛隊の合憲性は統治行為とした

憲法違憲審査制・憲法訴訟天皇・平和主義本試験で 3 問(短答 3・論文 0)

出題:司法H25・司法R1・予備H29

裁判所
札幌高等裁判所
事件番号
昭和48(行コ)2 保安林解除処分取消請求控訴事件

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

1 農林大臣のした水源かん養保安林の指定解除処分により,農業用水及び飲料水の確保並びに水害防止につき直接影響を受ける地域内の耕地の権利者及び居住者は,右処分を争う法律上の利益を有するとした事例 2 保安林の指定解除処分により,地元住民が生命,身体の安全を侵害される不利益は,えん堤等の洪水防止施設によって補償,代替されるに至ったものであって,右地元住民らは,右処分の取消しを求める訴えの利益を失ったものとした事例 3 訴えを不適法として却下したが,一審以来の当事者の主張の経過及び一審判決の判断にかんがみ,本案における争点の一つである自衛隊等の憲法適合性に関する司法審査の可否について判断を示した事例 4 保安林指定解除処分後,立木竹がほぼ全面的に伐採され,その跡地に航空自衛隊第3高射群の施設等が建設されていても,右跡地は,その地形,周辺の状態及び利用状況等から見て,木竹の集団的な生育に供される土地として,その森林性を失っていないとした事例

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

農林大臣(控訴人)は、昭和44年7月7日、北海道長沼町の馬追山にある水源かん養保安林の一部について、保安林の指定を解除した。目的は、航空自衛隊第三高射群の施設と連絡道路の敷地にすることであり、国家の防衛は森林法26条2項の「公益上の理由」に当たるとされた。

地元住民(被控訴人)らは、この解除処分の取消しを求めて提訴した。住民らは、自衛隊とその根拠法である自衛隊法は憲法9条2項、前文の平和的生存権等に違反するから、基地設置は「公益上の理由」に当たらないと主張した。

第一審(札幌地裁)は、自衛隊は憲法9条2項の「戦力」に当たり違憲であるとして、請求を認容した。農林大臣が控訴した。

解除に伴い、防衛施設庁の計画に基づき、国の直轄工事または全額国庫補助による長沼町・土地改良区等の工事によって、代替施設として、用水路の補修・導水揚水施設・上水道の引水、砂防堰堤7基、洪水調節用の富士戸一号堰堤などを完成させた。

争点

  • 保安林指定解除処分の取消訴訟における地元住民の原告適格(行政事件訴訟法9条の「法律上の利益」)
  • 憲法前文の平和的生存権が裁判規範として具体的権利性を持ち、原告適格の根拠となるか
  • 代替施設の完成により訴えの利益が消滅するか
  • 自衛隊・自衛隊法の憲法9条適合性が司法審査の対象となるか(統治行為論)

判旨

原判決を取り消し、訴えを却下した。

原告適格

  • 法律上の利益には、法目的達成のために特に実現が予定された事実上の利益も含まれうる。
  • これに当たるとされたのは、農業用水・飲料水の確保について直接影響を受ける地域の耕地権利者・居住者と、洪水から生命・身体の安全を守られるべき馬追運河排水機場流域の居住者である。これらの者には原告適格がある。
  • 流域外の居住者には原告適格がない。

平和的生存権

  • 前文は法的性質を有する。しかし平和は理念・目的としての概念にとどまり、平和的生存権は裁判規範として現実的・個別的内容を持たない。
  • 9条は国家機関に対する一般的な禁止命令であって、その保護法益は公益である。
  • したがって、平和的生存権は原告適格の根拠とならない。

訴えの利益

  • 用水不足や洪水の危険という不利益は、代替施設によって補填・代替された。よって原告適格を有する者も訴えの利益を失った。

統治行為(傍論)

  • 自衛隊の設置・運営は統治事項である。一見極めて明白に違憲・違法でない限り、司法審査の対象とならない。
  • 9条2項は、自衛のための戦力の保持について一義的に明確でない。また、自衛隊は一見極めて明白に侵略的なものともいえない。よって裁判所は判断しない。

判決文から

「前文中に定める「平和のうちに生存する権利」も裁判規範として、なんら現実的、個別的内容をもつものとして具体化されているものではないというほかないものである。」

平和的生存権の裁判規範性を否定した核心部分

「憲法第九条は、前文における平和原則に比し平和達成のためより具体的に禁止事項を列挙してはいるが、なお、国家機関に対する行為の一般禁止命令であり、その保護法益は一般国民に対する公益というほかなく」

9条から個人の権利を導けないとした理由

「本件保安林部分の解除により、その生命、身体の安全を侵害される不利益は、富士戸一号堰堤等の洪水防止施設により補填、代替されるに至り、同被控訴人らも、また、本件解除処分を争う具体的な利益を失つたものというべきである。」

却下の直接の理由(訴えの利益の消滅)

「右政策決定を組成する前記立法行為及び行政行為は、正に統治事項に関する行為であつて、一見極めて明白に違憲、違法と認められるものでない限り、司法審査の対象ではないといわなければならないものである。」

自衛隊に統治行為論を適用した規範

「結局自衛のための戦力の保持に関する憲法第九条第二項前段は、一義的に明確な規定と解することができないものといわなければならない。」

大前提である9条2項の不明確性を認定

「行訴法第九条にいう法律上の利益は、単なる実体法上の権利ないし保護利益にとどまらず、行政処分が法の趣旨に基づいてなされた際、法目的達成のために特にその実現が所期されたと認め得る事実上の利益も含み得るものと解すべく」

原告適格の判断基準

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。