最判昭和51年7月19日
遺言の執行として既にされた遺贈の登記の抹消を相続人が求める訴えでは、遺言執行者がいても受遺者が被告となる。
出題:司法H25・予備H30・予備R7
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 昭和51(オ)17 所有権移転仮登記抹消登記手続本訴等請求
- 裁判
- 判決・その他
- 判例集
- 民集 第30巻7号706頁
- 参照法条
- 民法1012条,民法1015条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
遺言執行者がある場合に相続人が遺贈による登記の抹消登記手続を求める訴と受遺者の被告適格
裁判要旨
相続人が遺言の執行としてされた遺贈による所有権移転登記の抹消登記手続を求める訴については、遺言執行者がある場合でも、受遺者を被告とすべきである。
解説
事案
遺言により不動産が遺贈され、遺言執行者がいた。遺言の執行として、受遺者宛てに遺贈を原因とする所有権移転仮登記が既にされていた。
相続人側(本訴原告)は、遺言執行者を被告として次の2つを請求した。
- 遺言無効確認請求
- 上記仮登記の抹消登記手続請求
これに対し、被告側は反訴を提起した。
原審(東京高裁)は判決理由で、抹消登記手続請求は遺言執行者を被告とする点で不適法だとした。ところが主文では、本訴請求と反訴請求をいずれも「棄却」と表示していた。これに対して上告がされた。
争点
- 遺言執行者がある場合に、遺言の執行として既にされた受遺者宛ての遺贈による登記の抹消を相続人が求める訴えでは、誰が被告適格を有するか
- 被告適格を有しない遺言執行者を被告とした訴えの処理
判旨
上告棄却。ただし原判決主文を更正し、遺言無効確認請求は棄却、仮登記抹消登記手続請求は訴え却下とした。
規範
- 遺贈の目的不動産について、遺言の執行として既に受遺者宛てに遺贈による所有権移転登記(仮登記を含む)がされている場合がある。この場合に相続人がその登記の抹消登記手続を求めるときは、遺言執行者ではなく受遺者を被告とすべきである。
- 受遺者を被告とすべきなのに遺言執行者を被告として提起された訴えは、不適法として却下すべきである。
なお、同じ事件の遺言無効確認請求は、遺言執行者を被告とする訴えとして本案判断(棄却)がされている。
判決文から
「相続人は、遺言執行者ではなく、受遺者を被告として訴を提起すべきであると解するのが相当である」
本判決の結論。被告適格は受遺者にある
「遺言執行者において、受遺者のため相続人の抹消登記手続請求を争い、その登記の保持につとめることは、遺言の執行に関係ないことではないが、それ自体遺言の執行ではない」
登記保持は遺言の執行でないという理由①
「一旦遺言の執行として受遺者宛に登記が経由された後は、右登記についての権利義務はひとり受遺者に帰属し、遺言執行者が右登記について権利義務を有すると解することはできない」
登記後の権利義務は受遺者のみという理由②
「受遺者を被告とすべきときに遺言執行者を被告として提起された訴は不適法としてこれを却下すべきである」
被告適格を欠く訴えは却下(棄却ではない)
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