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印鑑証明書事件

最判昭和51年5月6日

補助公務員が手続違反で印鑑証明書を作成しても、授権の基本的条件内なら作成権限内で公文書偽造罪は不成立

刑法文書偽造罪本試験で 3 問(短答 3・論文 0)

出題:司法R3・司法R5・予備R7

裁判所
最高裁判所第一小法廷
事件番号
昭和50(あ)1621 有印公文書偽造、同行使
裁判
判決・破棄差戻
判例集
刑集 第30巻4号591頁
参照法条
刑法155条1項

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

補助公務員による手続違反の公文書作成につき公文書偽造罪の成立が否定された事例

裁判要旨

市長の代決者である課長を補助し、一定の手続に従つて印鑑証明書の作成にあたつていた補助公務員が、右手続の要求する申請書の提出と手数料の納付をせずに、自己の用に供するため印鑑証明書を作成した行為は、判示の事情のもとにおいては、作成権限に基づくものとして、公文書偽造罪を構成しない。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

被告人は秋田市役所本庁の市民課調査係長であった。自宅新築資金の借入れに印鑑証明書が必要になり、自ら作成して使おうと考えた。そこで、申請書を提出せず、手数料も納めずに、備付けの用紙に名義人の氏名等を記入して印鑑を押捺し(D宛・E宛は、あらかじめ本人に記入・押印してもらった用紙を用い)、作成年月日のゴム印と市長公印を押して、秋田市長名義の印鑑証明書6通を作成し、行使した。

  • 印鑑証明書は市長名義だが、本庁での作成発行は事務決裁規程により市民課長の専決事項であった。
  • 正規の手続は、申請書の提出→受付→印影照合→市長公印押捺→手数料と引換えに交付、という流れである。申請書は翌朝に課長らが一括して決裁する事後決裁であった。
  • 慣行上、被告人を含む市民課員全員が作成事務をとる権限を有していた。
  • 6通のうちC宛の1通は、F出張所で作成発行すべきもので、本庁では作成できなかった。
  • 残る5通は印影が印鑑簿と同一で、正規の手続によれば当然交付されるものであった。

第一審は、市民課市民係に属しない被告人が手続省略の恣意から作成したもので、正当な分担援助による作成とはいえないとして、公文書偽造罪の成立を認めた。原審は、慣行上は被告人にも作成事務をとる権限があったとしつつ、正規の手続を履践せず専ら私用のため作成した権限の濫用であるとして、同罪の成立を認めた。

争点

  • 公文書偽造罪(刑法155条1項)における「偽造」の意義
  • 代決者でない補助公務員に作成権限が認められるか、認められるとしてその範囲
  • 申請書不提出・手数料不納付という手続違反があっても作成権限内といえるか

判旨

原判決を破棄し、仙台高裁に差し戻した。

  • 規範1(偽造の意義):公文書偽造罪における偽造とは、公文書の作成名義人以外の者が、権限なしに、その名義を用いて公文書を作成することをいう。
  • 規範2(作成権限を持つ者):作成権限は、作成名義人の決裁を待たずに自らの判断で作成できる代決者だけが持つものではない。一定の手続を経由するなど特定の条件のもとで作成が許されている補助者も、内容の正確性の確保など、その者への授権を基礎づける一定の基本的な条件に従う限度で作成権限を有する。
  • あてはめ:内容が正確で、通常の手続を経れば当然交付される5通については、申請書不提出・手数料不納付の手続違反があっても作成権限に基づく作成である。権限の濫用として内部規律違反の責任を問われるのは別として、公文書偽造罪は成立しない。
  • なお、管轄外のC宛1通は、作成権限がなかったことが明らかであるとした。

判決文から

「公文書偽造罪における偽造とは、公文書の作成名義人以外の者が、権限なしに、その名義を用いて公文書を作成することを意味する。」

偽造の定義。作成権限の有無に帰着させる前提

「一定の手続を経由するなどの特定の条件のもとにおいて公文書を作成することが許されている補助者も、その内容の正確性を確保することなど、その者への授権を基礎づける一定の基本的な条件に従う限度において、これを有しているものということができる。」

補助公務員の作成権限の規範。答案の中核

「申請書の提出は、主として印鑑証明書の内容の正確性を担保するために要求されているものと解されるので」

手続の趣旨から基本的条件か否かを判断

「手数料の納付も、市の収入を確保するためのものであつて、被告人の作成権限を制約する基本的な条件とみるのは妥当でない。」

手数料不納付は権限を制約しないとした点

「内部規律違反の責任を問われることはかくべつ、公文書偽造罪をもつて問擬されるべきではないと解するのが相当である。」

権限濫用は内部規律の問題で偽造ではない

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。