旭川学力テスト事件
子どもの学習権を基礎に、親・教師・国の教育権能の範囲を画し、国の教育内容決定権能を必要かつ相当な範囲で認めた大法廷判決
出題:司法H22・司法H23・司法H25・司法H26・司法H27・司法H28・司法H29・司法H30・司法R2・司法R3・司法R4・司法R5・司法R6・予備H30・予備R2・予備R4・予備R5・予備R6・予備R7・予備R8
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 昭和43(あ)1614 建造物侵入、暴力行為等処罰に関する法律違反
- 裁判
- 判決・その他
- 判例集
- 刑集 第30巻5号615頁
- 参照法条
- 地方教育行政の組織及び運営に関する法律23条,地方教育行政の組織及び運営に関する法律32条,地方教育行政の組織及び運営に関する法律43条,地方教育行政の組織及び運営に関する法律54条2項,刑法95条1項,憲法13条,憲法23条,憲法26条,憲法92条,教育基本法 前文,教育基本法10条,学校教育法38条,学校教育法106条,学校教育法施行規則54条の2
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一、地方教育行政の組織及び運営に関する法律五四条二項と昭和三六年度全国中学校一せい学力調査の手続上の適法性 二、憲法と子どもに対する教育内容の決定権能の帰属 三、教育行政機関の法令に基づく教育の内容及び方法の規制と教育基本法一〇条 四、昭和三六年当時の中学校学習指導要領(昭和三三年文部省告示第八一号)の効力 五、昭和三六年度全国中学校一せい学力調査と教育基本法一〇条 六、教育の地方自治と昭和三六年度全国中学校一せい学力調査の適法性
裁判要旨
一、地方教育行政の組織及び運営に関する法律五四条二項は、文部大臣に対し、昭和三六年度全国中学生一せい学力調査のような調査の実施を教育委員会に要求する権限を与えるものではないが、右規定を根拠とする文部大臣の右学力調査の実施の要求に応じて教育委員会がした実施行為は、そのために手続上違法となるものではない。 二、憲法上、親は一定範囲においてその子女の教育の自由をもち、また、私学教育の自由及び教師の教授の自由も限られた範囲において認められるが、それ以外の領域においては、国は、子ども自身の利益の擁護のため、又は子どもの成長に対する社会公共の利益と関心にこたえるため、必要かつ相当と認められる範囲において、子どもの教育内容を決定する権能を有する。 三、教育行政機関が法令に基づき教育の内容及び方法に関して許容される目的のために必要かつ合理的と認められる規制を施すことは、必ずしも教育基本法一〇条の禁止するところではない。 四、昭和三六年当時の中学校学習指導要領(昭和三三年文部省告示第八一号)は、全体としてみた場合、中学校における教育課程に関し、教育の機会均等の確保及び全国的な一定水準の維持の目的のために必要かつ合理的と認められる大綱的な遵守基準を設定したものとして、有効である。 五、昭和三六年度全国中学校一せい学力調査は、教育基本法一〇条一項にいう教育に対する「不当な支配」として同条に違反するものではない。 六、文部大臣が地方教育行政の組織及び運営に関する法律五四条二項の規定を根拠として教育委員会に対してした昭和三六年度全国中学校一せい学力調査の実施の要求は、教育の地方自治の原則に違反するが、右要求に応じてした教育委員会の調査実施行為自体は、そのために右原則に違反して違法となるものではない。
解説
事案
文部省は昭和35年秋ころ、全国の中学2・3年の全生徒を対象とする昭和36年度の一せい学力調査(学テ)を企画した。地教行法54条2項に基づき、都道府県教委を通じて市町村教委に実施を求め、旭川市教委は同法23条17号を根拠に、市立各中学校長をテスト責任者として実施を命じた。
被告人らは学テを阻止する目的で、数十名の説得隊員とともに旭川市立E中学校に赴いた。校長の制止を振り切って校舎内に侵入し、学テ実施中に各教室を見回る校長に暴行を加えるなどしたため、建造物侵入罪・公務執行妨害罪等で起訴された。
第一審・原審は、学テは文部省を実質上の主体とする調査であると捉えた。そのうえで、教基法10条1項の「不当な支配」に当たり、手続上も地教行法54条2項を根拠にできないとして、学テを違法とした。その結果、公務執行妨害罪の成立を否定し、共同暴行罪のみを認めた。検察官が上告した。
争点
- 憲法上、子どもの教育内容を決定する権能は誰に帰属するか(国家教育権説と国民教育権説の当否)
- 憲法26条の趣旨と子どもの学習権
- 憲法23条の学問の自由は普通教育の教師の教授の自由を含むか、その範囲
- 法令に基づく教育行政機関の行為も教基法10条1項の「不当な支配」に当たりうるか、教育内容への行政の関与の限界
- 中学校学習指導要領の法的効力
- 地教行法54条2項と学テの手続上の適法性、教育の地方自治の原則との関係
判旨
学テは手続上も実質上も適法であり、校長の学テ実施は適法な公務の執行に当たる。したがって公務執行妨害罪が成立する(破棄自判)。
- 教育権の所在:国家教育権説・国民教育権説はいずれも「極端かつ一方的」として排斥した。
- 親・教師・私学の自由:親は一定範囲で子女の教育の自由を有する。私学教育の自由、教師の教授の自由も限られた範囲で認められる。
- 国の権能:それ以外の領域では、国は子ども自身の利益の擁護のため、または子どもの成長に対する社会公共の利益と関心にこたえるため、必要かつ相当と認められる範囲で教育内容を決定する権能を有する。
- 介入の限界:国家的介入はできるだけ抑制的であるべきである。誤った知識や一方的な観念を植えつける教育の強制は、憲法26条・13条上許されない。
- 教基法10条:教育行政機関の行為も「不当な支配」に当たりうる。ただし、許容される目的のために必要かつ合理的な規制は、教育内容・方法に関するものでも同条の禁止するところではない。
- 学習指導要領:全体としてみれば、機会均等の確保と全国的な一定水準の維持のための大綱的基準として有効である。
判決文から
「子どもの教育は、教育を施す者の支配的権能ではなく、何よりもまず、子どもの学習をする権利に対応し、その充足をはかりうる立場にある者の責務に属するものとしてとらえられているのである。」
26条の背後に子どもの学習権を見出した部分
「このような親の教育の自由は、主として家庭教育等学校外における教育や学校選択の自由にあらわれるものと考えられるし」
親の教育の自由の現れる場面(短答頻出)
「普通教育における教師に完全な教授の自由を認めることは、とうてい許されないところといわなければならない。」
一定範囲の教授の自由は肯定しつつ完全な自由は否定
「憲法上は、あるいは子ども自身の利益の擁護のため、あるいは子どもの成長に対する社会公共の利益と関心にこたえるため、必要かつ相当と認められる範囲において、教育内容についてもこれを決定する権能を有するものと解さざるをえず」
国の教育内容決定権能の規範
「例えば、誤つた知識や一方的な観念を子どもに植えつけるような内容の教育を施すことを強制するようなことは、憲法二六条、一三条の規定上からも許されないと解することができるけれども」
国の介入の憲法上の限界
「許容される目的のために必要かつ合理的と認められるそれは、たとえ教育の内容及び方法に関するものであつても、必ずしも同条の禁止するところではないと解するのが、相当である。」
教基法10条下での行政介入の許容基準
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
