最判昭和51年4月9日
復代理人が受領物を代理人に引き渡せば、特別の事情がない限り、本人に対する受領物引渡義務も消滅する。
出題:司法H29・予備H29
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 昭和49(オ)1026 受取物等引渡請求
- 裁判
- 判決・破棄自判
- 判例集
- 民集 第30巻3号208頁
- 参照法条
- 民法104条,民法107条2項,民法646条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
復代理人が委任事務を処理するにあたり受領した物を代理人に引き渡した場合と復代理人の本人に対する受領物引渡義務
裁判要旨
本人代理人間で委任契約が締結され、代理人復代理人間で復委任契約が締結された場合において、復代理人が委任事務を処理するにあたり受領した物を代理人に引き渡したときは、特別の事情がない限り、復代理人の本人に対する受領物引渡義務は消滅する。
解説
事案
被上告人X(本人)は、Dを代理人とした。そして、E保険会社に対する自賠法に基づく損害賠償金の請求・受領に関する一切の権限を委任し、あわせて復代理人を選任する権限も与えた。DはFを復代理人として同じ権限を委任し、復代理人選任権限も与えた。さらにFは、上告人Y(復々代理人)に請求・受領の権限を委任した。
Yは、昭和47年12月7日、自己名義の普通預金口座に賠償金249万円の振込みを受けた。Yはこれを払い戻し、同月11日ごろFに交付した。Fは同月24日、これをDに交付した。
Xは、Yに対し受領金の引渡し等を請求した。
- 一審:請求を全部棄却した。
- 原審:旧民法107条2項によりXとYの間にはXとDの間と同一の内部関係が生じ、Xは受領金の引渡しをYにだけ請求できると判断した。そのため、YがFに交付したか否かを問わずYはXに引渡義務を負うとし、内金129万円と弁護士費用13万円等の限度で請求を認容した。
Yが上告した。
争点
- 本人・代理人間の委任と代理人・復代理人間の復委任がある場合に、復代理人は本人と代理人のいずれに受領物を引き渡す義務を負うか
- 復代理人が受領物を代理人に引き渡したとき、本人に対する受領物引渡義務は存続するか
- 復代理人がさらに適法に復代理人を選任した場合(復々代理)にも同じ理が妥当するか
判旨
結論:破棄自判。Xの控訴を棄却し、原審での予備的請求(事務管理に基づく引渡請求等)も棄却した。
規範
- 旧民法107条2項(現106条2項)により本人と復代理人の間に直接の権利義務が生じる場合でも、復代理人が委任事務処理にあたり金銭等を受領したときは、特別の事情がない限り、本人に対して受領物を引き渡す義務を負う。
- それとともに、代理人に対しても引き渡す義務を負う。
- 復代理人が代理人に引き渡したときは、代理人に対する受領物引渡義務が消滅し、それとともに本人に対する受領物引渡義務も消滅する。
- この理は、復代理人がさらに適法に復代理人を選任した場合(復々代理)にも妥当する。
あてはめ:復々代理人Yは受領金を復代理人Fに交付しており、特別の事情の主張・立証もない。したがって、XはYに受領金の引渡しを求めることができない。弁護士費用の請求も、引渡請求権を前提とするから理由がない。
判決文から
「右の規定は、復代理人の代理行為も代理人の代理行為と同一の効果を生じるところから、契約関係のない本人復代理人間にも直接の権利義務の関係を生じさせることが便宜であるとの趣旨に出たものであるにすぎず」
旧107条2項(現106条2項)の趣旨を便宜と位置づけた部分
「復代理人は、特別の事情がないかぎり、本人に対して受領物を引渡す義務を負うほか、代理人に対してもこれを引渡す義務を負い」
本人と代理人の双方に引渡義務を負うとした点
「もし復代理人において代理人にこれを引渡したときは、代理人に対する受領物引渡義務は消滅し、それとともに、本人に対する受領物引渡義務もまた消滅するものと解するのが相当である。」
本判決の核心。代理人への引渡しで本人への義務も消滅
「以上の理は、復代理人がさらに適法に復代理人を選任した場合についても妥当するものというべきである。」
復々代理にも射程が及ぶことを明示
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