衆議院議員定数不均衡訴訟(衆議院議員定数配分規定違憲判決)
投票価値の平等を憲法上の要求と認め、約5対1の較差の定数配分規定を全体として違憲としつつ、事情判決の法理で選挙は無効としなかった。
出題:司法H24・司法H28・司法H29・司法R1・司法R2・司法R8・予備H28・予備H29・予備H30・予備R2・予備R5・予備R8
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 昭和49(行ツ)75 選挙無効請求
- 裁判
- 判決・破棄自判
- 判例集
- 民集 第30巻3号223頁
- 参照法条
- 憲法14条1項,憲法15条1項,憲法15条3項,憲法44条但書,公職選挙法13条,公職選挙法204条,公職選挙法205条1項,公職選挙法219条,公職選挙法(昭和50年法律第63号による改正前のもの)別表第1,公職選挙法(昭和50年法律第63号による改正前のもの)附則7項,公職選挙法(昭和50年法律第63号による改正前のもの)附則8項,公職選挙法(昭和50年法律第63号による改正前のもの)附則9項,行政事件訴訟法31条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一、憲法一四条一項、一五条一、三項、四四条但し書と国会両議院議員の選挙における選挙人の投票価値の平等 二、公職選挙法一三条、同法(昭和五〇年法律第六三号による改正前のもの)別表第一及び附則七項ないし九項による選挙区及び議員定数の定めの合憲性 三、衆議院議員選挙が憲法に違反する公職選挙法の選挙区及び議員定数の定めに基づいて行われたことにより違法な場合において行政事件訴訟法三一条一項の基礎に含まれている一般的な法の基本原則に従い選挙を無効とする旨の判決を求める請求を棄却するとともに当該選挙が違法である旨を主文で宣言すべきものとした事例
裁判要旨
一、憲法一四条一項、一五条一項、三項、四四条但し書は、国会両議院の議員の選挙における選挙権の内容、すなわち各選挙人の投票の価値が平等であることを要求するものであり、右各選挙につき国会が定めた具体的な選挙制度において、国会が正当に考慮することができる重要な政策的目的ないし理由に基づく結果として合理的に是認することができない投票価値の不平等が存するときは、憲法の右規定の違反となる。 二、公職選挙法一三条、同法(昭和五〇年法律第六三号による改正前のもの)別表第一及び附則七項ないし九項による選挙区及び議員定数の定めは、昭和四七年一二月一〇日の衆議院議員選挙当時、全体として憲法一四条一項、一五条一項、三項、四四条但し書に違反していたものである。 三、衆議院議員選挙が憲法に違反する公職選挙法の選挙区及び議員定数の定めに基づいて行われたことにより違法な場合であつても、それを理由として選挙を無効とする判決をすることによつて直ちに違憲状態が是正されるわけではなく、かえつて憲法の所期するところに必ずしも適合しない結果を生ずる判示のような事情などがあるときは、行政事件訴訟法三一条一項の基礎に含まれている一般的な法の基本原則に従い、選挙を無効とする旨の判決を求める請求を棄却するとともに当該選挙が違法である旨を主文で宣言すべきである。
解説
事案
昭和47年12月10日の衆議院議員選挙は、公選法13条・別表第1・附則7項〜9項(昭和50年改正前)の定数配分規定に基づいて行われた。この規定は主に昭和39年改正によるもので、選挙区ごとの議員1人あたり人口の開きをほぼ2倍以下にとどめることを目的としていた。しかし本件選挙当時、議員1人あたり選挙人数の全国平均との偏差は、下限47.30%、上限162.87%に達し、開きは約5対1になっていた。公選法別表第1の末尾には、施行後5年ごとに直近の国勢調査結果で更正するのを例とする旨の規定があった。それにもかかわらず、昭和39年改正後8年余り改正はされなかった。
千葉県第一区の選挙人は、この規定が憲法14条1項に違反するとして、公選法204条に基づき同区の選挙の無効を求めて提訴した。原審の東京高裁は選挙を適法として請求を棄却し、選挙人が上告した。
争点
- 憲法は選挙権の内容の平等(投票価値の平等)まで要求するか
- 議員定数配分規定の合憲性の判断基準と、本件規定の合憲性
- 人口変動により事後的に違憲となる場合の判断(合理的期間論)
- 違憲部分のみか、配分規定全体が違憲となるか(可分・不可分)
- 定数配分規定の違憲を公選法204条の選挙無効訴訟で争えるか
- 違憲の配分規定に基づく選挙の効力(事情判決の法理の適用)
判旨
原判決を変更して請求を棄却し、主文で千葉県第一区の選挙は違法であると宣言した。
- 投票価値の平等:憲法14条1項、15条1項・3項、44条但書は、選挙人資格の差別禁止にとどまらず、各選挙人の投票価値の平等も要求する。ただし数字的な完全同一までは要求しない。投票価値の平等は、国会が正当に考慮できる他の政策的目的・理由と調和的に実現されるべきものである。
- 判断基準:投票価値の不平等が、国会において通常考慮しうる諸般の要素をしんしゃくしてもなお、一般的に合理性を有するとはとうてい考えられない程度に達しているときは、国会の合理的裁量の限界を超えたものと推定される。この不平等を正当化する特段の理由が示されない限り、違憲となる。
- 合理的期間:人口の漸次的変動による場合は、合理的期間内の是正が憲法上要求されているのにそれが行われないとき、初めて違憲となる。
- 全体違憲:配分規定は不可分一体であるから、全体として違憲の瑕疵を帯びる。
- 選挙の効力:行政事件訴訟法31条1項の基礎にある一般的な法の基本原則(事情判決の法理)に従い、選挙は無効とせず、違法を主文で宣言する。
判決文から
「選挙権の内容、すなわち各選挙人の投票の価値の平等もまた、憲法の要求するところであると解するのが、相当である。」
投票価値の平等が憲法上の要求であることを明示
「国会において通常考慮しうる諸般の要素をしんしやくしてもなお、一般的に合理性を有するものとはとうてい考えられない程度に達しているときは、もはや国会の合理的裁量の限界を超えているものと推定されるべきものであり」
較差の違憲判断の規範(第1段階)
「人口の変動の状態をも考慮して合理的期間内における是正が憲法上要求されていると考えられるのにそれが行われない場合に始めて憲法違反と断ぜられるべきものと解するのが、相当である。」
合理的期間論(第2段階)
「単に憲法に違反する不平等を招来している部分のみでなく、全体として違憲の瑕疵を帯びるものと解すべきである。」
配分規定の不可分一体・全体違憲
「およそ国民の基本的権利を侵害する国権行為に対しては、できるだけその是正、救済の途が開かれるべきであるという憲法上の要請に照らして考えるときは」
公選法204条訴訟で違憲を争えるとした根拠
「選挙を無効とする旨の判決を求める請求を棄却するとともに、当該選挙が違法である旨を主文で宣言するのが、相当である。」
事情判決の法理による判決主文の形
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
