最決昭和51年3月16日
強制手段の意義を示し、それに至らない有形力の行使も必要性・緊急性等を考慮して相当な限度で任意捜査として許されるとした決定
出題:司法H26・司法H27・司法H30・司法R2・司法R6・予備H24・予備H25・予備H29・予備R5・予備R7
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 昭和50(あ)146 道路交通法違反、公務執行妨害
- 裁判
- 決定・棄却
- 判例集
- 刑集 第30巻2号187頁
- 参照法条
- 刑法95条1項,刑訴法197条1項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一 任意捜査において許容される有形力の行使の限度 二 任意捜査において許容される限度内の有形力の行使と認められた事例
裁判要旨
一 任意捜査における有形力の行使は、強制手段、すなわち個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段にわたらない限り、必要性、緊急性などをも考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度において、許容される。 二 警察官が、酒酔い運転の罪の疑いが濃厚な被疑者をその同意を得て警察署に任意同行し、同人の父を呼び呼気検査に応じるよう説得を続けるうちに、母が警察署に来ればこれに応じる旨を述べたので、連絡を被疑者の父に依頼して母の来署を待つていたところ、被疑者が急に退室しようとしたため、その左斜め前に立ち、両手でその左手首を掴んだ行為(判文参照)は、任意捜査において許容される限度内の有形力の行使である。
解説
事案
被告人は早朝、酒酔い運転で物損事故を起こした。臨場したA・B両巡査から運転免許証の提示と呼気検査を求められたが、いずれも拒否した。そこで両巡査は、道路交通法違反の被疑者として取り調べるため、被告人をパトロールカーで警察署へ任意同行した。被告人は顔が赤く酒のにおいが強く、身体もふらついていた。
署内で被告人は免許証の提示には応じたものの、呼気検査は再三の説得にも応じなかった。両巡査の要請で来署した父の説得も聞き入れず、「母が来れば応じる」と答えたため、父は母を呼びに戻った。母の到着を待つ間、被告人は「マッチを取ってくる」と言って急に出入口へ小走りに向かった。A巡査は逃走を懸念し、被告人の左斜め前に近寄り、「風船をやってからでいいではないか」と言って両手で左手首を掴んだ。
被告人はこれを振り払い、A巡査の襟首を掴んで肩章を引きちぎり、顔面を殴打した。そのため公務執行妨害罪の現行犯人として逮捕された。第一審は、手首を掴んだ行為を違法な強制力の行使とし、正当防衛を認めた。これに対し原審は、手首の把持を相当な実力行使として公務執行妨害罪を認めた。
争点
- 刑訴法197条1項ただし書の「強制の処分」(強制手段)の意義
- 強制手段に当たらない有形力の行使が任意捜査として許容される限度
- 任意同行後、退室しようとした被疑者の手首を掴んだ行為の適法性(公務執行妨害罪における職務の適法性)
判旨
上告棄却。公務執行妨害罪の成立を認めた原判決を正当とした。
規範
- 強制手段は、法律の根拠規定がある場合に限り許容される(刑訴法197条1項ただし書)。
- 強制手段とは、有形力の行使を伴う手段を意味するのではない。個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段をいう。
- この程度に至らない有形力の行使は、任意捜査においても許容される場合がある。ただし、何らかの法益を侵害し、または侵害するおそれがあるから、常に許容されるわけではない。必要性、緊急性などをも考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容される。
あてはめ
A巡査の行為は、呼気検査に応じるよう説得するための抑制措置であり、程度もさほど強くない。したがって、強制手段には当たらず、許容範囲を超えた不相当な行為ともいえない。
判決文から
「捜査において強制手段を用いることは、法律の根拠規定がある場合に限り許容されるものである。」
強制処分法定主義の確認
「強制手段とは、有形力の行使を伴う手段を意味するものではなく、個人の意思を制圧し、身体、住居、財産等に制約を加えて強制的に捜査目的を実現する行為など、特別の根拠規定がなければ許容することが相当でない手段を意味するものであつて」
強制処分の定義そのもの。答案に必須
「強制手段にあたらない有形力の行使であつても、何らかの法益を侵害し又は侵害するおそれがあるのであるから、状況のいかんを問わず常に許容されるものと解するのは相当でなく」
任意捜査にも限界があることの理由
「必要性、緊急性などをも考慮したうえ、具体的状況のもとで相当と認められる限度において許容されるものと解すべきである。」
任意捜査の適法性判断基準(相当性)
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
