東大ルンバール事件
訴訟上の因果関係の証明度は「高度の蓋然性」であり、自然科学的証明は要しないことを示した
出題:司法H22・司法H23
- 裁判所
- 最高裁判所第二小法廷
- 事件番号
- 昭和48(オ)517 損害賠償請求
- 裁判
- 判決・破棄差戻
- 判例集
- 民集 第29巻9号1417頁
- 参照法条
- 民法709条,国家賠償法1条1項,民訴法185条,民訴法394条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
医師が化膿性髄膜炎の治療としてしたルンバール(腰椎穿刺による髄液採取とペニシリンの髄腔内注入)の施術とその後の発作等及びこれにつづく病変との因果関係を否定したのが経験則に反するとされた事例
裁判要旨
重篤な化膿性髄膜炎に罹患した三才の幼児が入院治療を受け、その病状が一貫して軽快していた段階において、医師が治療としてルンバール(腰椎穿刺による髄液採取とペニシリンの髄腔内注入)を実施したのち、嘔吐、けいれんの発作等を起こし、これにつづき右半身けいれん性不全麻癖、知能障害及び運動障害等の病変を生じた場合、右発作等が施術後一五分ないし二〇分を経て突然に生じたものであつて、右施術に際しては、もともと血管が脆弱で出血性傾向があり、かつ、泣き叫ぶ右幼児の身体を押えつけ、何度か穿刺をやりなおして右施術終了まで約三〇分を要し、また、脳の異常部位が左部にあつたと判断され、当時化膿性髄膜炎の再燃するような事情も認められなかつたなど判示の事実関係のもとでは、他に特段の事情がないかぎり、右ルンバ一ルと右発作等及びこれにつづく病変との因果関係を否定するのは、経験則に反する。
解説
事案
化膿性髄膜炎で入院した3歳の幼児Xは、次第に重篤状態を脱し、一貫して軽快していた。その段階で、医師Fがルンバール(腰椎穿刺による髄液採取とペニシリンの髄腔内注入)を行った。
- 施術はF医師の学会出席に間に合わせるため、通例は避ける昼食後20分以内に行われた。
- 泣き叫ぶXに看護婦が馬乗りになって固定し、何度も穿刺をやり直して約30分を要した。
- Xはもともと血管が脆弱で、入院当初から出血性傾向があった。
施術の15〜20分後、Xは突然、嘔吐・けいれんの発作を起こした。その後、右半身けいれん性不全麻痺、知能障害、運動障害等の後遺症が残った。
- 脳波・臨床所見から、脳の異常部位は左部と判断された。
- 主治医は退院まで、発作の原因を脳出血と判断して治療していた。
- 化膿性髄膜炎が再燃する蓋然性は通常低く、再燃をうかがわせる特別の事情もなかった。
Xは病院経営者に損害賠償を請求した。原審は、発作の原因が脳出血か髄膜炎の再燃か判定し難く、ルンバールが原因とは断定し難いとして、請求を棄却した。
争点
- 訴訟上の因果関係の立証に要求される証明の程度(証明度)
- 本件事実関係のもとでルンバールと発作・後遺症との因果関係を否定することは経験則に反するか
判旨
原判決を破棄し、原審に差し戻した。
規範:訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではない。経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することである。その判定は、通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りる。
あてはめ:本件の事実関係を総合すると、他に特段の事情が認められないかぎり、経験則上、発作と後遺症の原因は脳出血であり、それはルンバールによって発生したといえる。したがって因果関係を肯定するのが相当である。これを否定した原判決は、因果関係に関する法則の解釈適用を誤り、経験則違背・理由不備の違法がある。
担当医師らの過失の有無等はなお審理が必要であるとして、差し戻した。
判決文から
「訴訟上の因果関係の立証は、一点の疑義も許されない自然科学的証明ではなく、経験則に照らして全証拠を総合検討し、特定の事実が特定の結果発生を招来した関係を是認しうる高度の蓋然性を証明することであり」
証明度=高度の蓋然性という規範の核心
「その判定は、通常人が疑を差し挟まない程度に真実性の確信を持ちうるものであることを必要とし、かつ、それで足りるものである。」
「必要とし、かつ、それで足りる」の両面
「結局、上告人の本件発作及びその後の病変と本件ルンバールとの間に因果関係を肯定するのが相当である。」
間接事実の総合による因果関係の肯定
「因果関係に関する法則の解釈適用を誤り、経験則違背、理由不備の違法をおかしたものというべく」
経験則違反が破棄理由となること
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
