最判昭和49年9月26日
詐欺による農地売買の買主から条件付権利を譲り受け、仮登記移転の附記登記を得た善意者を96条3項の第三者とした判例
出題:司法H23・司法H28・司法H30・司法R2・司法R6・司法R7・予備R6
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 昭和45(オ)344 所有権移転登記請求
- 裁判
- 判決・破棄自判
- 判例集
- 民集 第28巻6号1213頁
- 参照法条
- 民法96条3項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
民法九六条三項にいう第三者にあたる場合
裁判要旨
甲を欺罔してその農地を買い受けた乙が、農地法五条の許可を条件とする所有権移転仮登記を得たうえ、右売買契約上の権利を善意の丙に譲渡して右仮登記移転の附記登記をした場合には、丙は民法九六条三項にいう第三者にあたる。
解説
事案
被上告人Xは、昭和41年6月、自己所有の本件農地を含む6筆の土地を、建売住宅の敷地とする目的のE社に売却した。本件農地には農地法5条の許可を条件とする所有権移転仮登記がされ、その他の土地には所有権移転登記がされた。同年7月初旬、Eは、F社に対する債務の売渡担保として本件土地をFに譲渡した。本件農地については仮登記移転の附記登記がされ、その他の土地については所有権移転登記がされた。
XE間の売買はEの代表者の詐欺に基づくものであった。Xは同年7月27日、Eに対して売買の意思表示を取り消した。Fは、売渡担保契約の時点で詐欺の事実を知らなかった。
Xは、本件農地の附記登記の抹消登記手続を求めた。原審は、第三者として保護されるのは、目的物を善意で転得し、その所有権取得について対抗要件を備えた者に限られるとした。そのうえで、本件農地ではEもFも所有権を取得しておらず、Fは対抗要件も備えていないとして、Xの請求を認容した。
争点
- 民法96条3項の「第三者」は、物権の転得者で対抗要件を備えた者に限られるか
- 農地法の許可前の農地売買における買主の条件付権利を譲り受け、仮登記移転の附記登記を得た者は、同項の第三者に当たるか
判旨
結論:Fは民法96条3項の第三者に当たる。原判決のうち原審被控訴人(F)敗訴の部分を破棄し、その部分についてXの控訴を棄却した(Xの請求は失当。全員一致)。
規範:
- 96条1項・3項は、詐欺被害者に取消権を与えて救済を図る。他方で、取消しの効果を善意の第三者との関係で制限し、当該意思表示の有効なことを信頼して新たに利害関係を有するに至った者の地位を保護する趣旨である。
- したがって第三者の範囲はこの立法趣旨に照らして合理的に画定すべきである。必ずしも所有権その他の物権の転得者で、かつ対抗要件を備えた者に限定する理由はない。
あてはめ:
- 農地売買は許可前でも無効ではなく、買主は許可申請協力請求権などの条件付権利を取得し、これを仮登記で保全できる。
- Fはこの権利を売渡担保として譲り受け、附記登記を経由した。この売渡担保契約は当事者間では有効であり、Fは、許可がありEが所有権を取得すれば、その所有権を正当に転得できる地位を得た。
- よってFは、売買契約から発生した法律関係について新たに利害関係を有するに至った者として、96条3項の第三者に当たる。
判決文から
「当該意思表示の有効なことを信頼して新たに利害関係を有するに至つた者の地位を保護しようとする趣旨の規定である」
96条3項の趣旨。第三者の定義の基礎
「右の第三者の範囲は、同条のかような立法趣旨に照らして合理的に画定されるべきであつて、必ずしも、所有権その他の物権の転得者で、かつ、これにつき対抗要件を備えた者に限定しなければならない理由は、見出し難い。」
物権取得・対抗要件具備を要件としない中核部分
「その所有権を正当に転得することのできる地位を得たものということができる。」
条件付権利の譲受人も利害関係人となる理由
「被控訴会社は、以上の意味において、本件売買契約から発生した法律関係について新たに利害関係を有するに至つた者というべきであつて、民法九六条三項の第三者にあたると解するのが相当である。」
結論部分。あてはめの型
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