昭和女子大事件(昭和女子大学事件)
人権規定は私立大学と学生の関係に直接適用されないとし、学則による政治活動規制と退学処分を有効とした判例
出題:司法H28・司法R4・予備H28・予備R3
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 昭和42(行ツ)59 身分確認請求
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第28巻5号790頁
- 参照法条
- 学校教育法11条,学校教育法施行規則13条3項4号
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一、私立大学における学生の政治的活動に対する規制の合理性 二、学生の退学処分と学長の裁量権 三、私立大学の学生に対する退学処分の効力が是認された事例
裁判要旨
一、私立大学において、その建学の精神に基づく校風と教育方針に照らし、学生が政治的目的の署名運動に参加し又は政治的活動を目的とする学外団体に加入するのを放任することは教育上好ましくないとする見地から、学則等により、学生の署名運動について事前に学校当局に届け出るべきこと及び学生の学外団体加入について学校当局の許可を受けるべきことを定めても、これをもつて直ちに学生の政治的活動の自由に対する不合理な規制ということはできない。 二、学校教育法施行規則一三条三項四号により学生の退学処分を行うにあたり、当該学生に対して学校当局のとつた措置が本人に反省を促すための補導の面において欠けるところがあつたとしても、それだけで退学処分が違法となるものではなく、その点をも含めた諸般の事情を総合的に観察して、退学処分の選択が社会通念上合理性を認めることができないようなものでないかぎり、その処分は、学長の裁量権の範囲内にあるものというべきである。 三、学生の思想の穏健中正を標榜する保守的傾向の私立大学の学生が、学則に違反して、政治的活動を目的とする学外団体に無許可で加入し又は加入の申込をし、かつ、無届で政治的目的の署名運動をした事案において、これに対する学校当局の措置が、学生の責任を追及することに急で、反省を求めるために説得に努めたとはいえないものであつたとしても、他方、右学生は、学則違反についての責任の自覚歩うすく、学外団体からの離脱を求める学校当局の要求に従う意思はなく、説諭に対して終始反発したうえ、週刊誌や学外集会等において公然と学校当局の措置を非難するような行動をしたなど判示の事情があるときは、学校教育法施行規則一三条三項四号により右学生に対してされた退学処分は、学長に認められた裁量権の範囲内にあるものとしてその効力を是認すべきである。
解説
事案
被上告人大学は、学生の思想の穏健中正を標榜する保守的傾向の私立大学である。同大学の学則の細則である生活要録には、次の規定があった。
- 六の六:学生の署名運動は事前に学校当局に届け出て指示を受ける
- 八の一三:学校当局の許可なく学外団体に加入することを禁止する
上告人A1は無許可で左翼的政治団体D同盟に加入し、上告人A2は加入を申し込んだ(後に正式加入)。A2は無届で、学内において政治的暴力行為防止法反対の請願署名運動も行った。
大学は昭和36年10月下旬ごろこれを知り、D同との関係を絶つよう強く要求し、事実上登校を禁止するなどした。上告人らは説諭に終始反発した。
昭和37年1月下旬、上告人A1が週刊誌記事中に仮名で取調べ状況の日記を発表し、上告人らは学外の討論集会やラジオ放送(同年2月9日)でも経過や取調べの模様を述べた。大学はこれを学外での誹謗と認め、同年2月12日、学校教育法施行規則13条3項4号・学則36条4号(「学校の秩序を乱し、その他学生としての本分に反した」)により退学処分をした。
上告人らは学生の身分確認を求めたが、原審は処分を有効とし、上告人らが上告した。
争点
- 憲法19条・21条・23条等の自由権規定は、私立大学と学生の関係に直接適用されるか
- 私立大学が学則で学生の政治的活動(署名運動の届出制・学外団体加入の許可制)を規制することは合理的か
- 退学処分の前に反省を促す補導を経ることは法的義務か。学長の懲戒裁量の審査基準は何か
- 本件退学処分は裁量権の範囲内か
判旨
上告棄却(退学処分は有効)。
- 人権規定の効力:自由権的基本権の保障規定は、専ら国・公共団体と個人の関係を規律するもので、私人相互間に当然には適用・類推適用されない。私立大学の生活要録が直接憲法に違反するかを論ずる余地はない。
- 規律権能:大学は国公立・私立を問わず、設置目的達成に必要な事項を学則等で一方的に制定し、学生を規律する包括的権能を有する。ただしこの権能は無制限ではなく、在学関係設定の目的と関連し、かつ内容が社会通念に照らして合理的な範囲でのみ是認される。
- 政治活動の規制:保守的校風の私立大学が、学内外の政治的活動にかなり広範な規律を及ぼしても、直ちに社会通念上不合理とはいえない。本件の届出制・許可制は無効ではない。
- 退学処分の裁量:懲戒処分は学長の合理的裁量に委ねられる。補導の過程を経ることは、学則等に格別の定めがない限り、特別の場合を除き法的義務ではない。補導に欠ける点があっても、諸事情を総合して処分選択が社会通念上合理性を認められないものでない限り、裁量権の範囲内である。
判決文から
「憲法一九条、二一条、二三条等のいわゆる自由権的基本権の保障規定は、国又は公共団体の統治行動に対して個人の基本的な自由と平等を保障することを目的とした規定であつて、専ら国又は公共団体と個人との関係を規律するものであり」
三菱樹脂事件を引き私人間への直接適用を否定
「その設置目的を達成するために必要な事項を学則等により一方的に制定し、これによつて在学する学生を規律する包括的権能を有するものと解すべきである。」
大学の包括的規律権能(国公立・私立共通)
「在学関係設定の目的と関連し、かつ、その内容が社会通念に照らして合理的と認められる範囲においてのみ是認されるものである」
包括的権能の限界を示す規範
「学内及び学外における学生の政治的活動につきかなり広範な規律を及ぼすこととしても、これをもつて直ちに社会通念上学生の自由に対する不合理な制限であるということはできない。」
私立大学の政治活動規制の合理性
「当該学生に改善の見込がなく、これを学外に排除することが教育上やむをえないと認められる場合にかぎつて退学処分を選択すべきであるとの趣旨において、その処分事由を限定的に列挙したものと解される。」
退学処分事由の限定列挙の趣旨
「その退学処分の選択が社会通念上合理性を認めることができないようなものでないかぎり、同処分は、懲戒権者の裁量権の範囲内にあるものとして、その効力を否定することはできないものというべきである。」
退学処分の裁量審査基準
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
