SaySayLaw

最判昭和49年4月26日

限定承認を認めた留保付判決の確定後、基準時前の法定単純承認事実を主張して無留保判決を求める後訴は許されないとした判例

民事訴訟法判決の効力・既判力処分権主義本試験で 2 問(短答 1・論文 1)

出題:司法H29・予備H28

裁判所
最高裁判所第二小法廷
事件番号
昭和46(オ)411 否認権行使による損害賠償請求
裁判
判決・棄却
判例集
民集 第28巻3号503頁
参照法条
民法921条,民法922条,民訴法199条1項,民訴法545条2項

判示事項・裁判要旨

裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)

判示事項

相続財産の限度での支払を命ずる判決が確定した場合における判決の効力

裁判要旨

被相続人に対する債権につき、債権者と相続人との間の前訴において、相続人の限定承認が認められ、相続財産の限度での支払を命ずる判決が確定しているときは、債権者は相続人に対し、後訴によつて、右判決の基礎となる事実審の口頭弁論終結時以前に存在した限定承認と相容れない事実を主張して右債権につき無留保の判決を求めることはできない。

判決全文(裁判所ウェブサイト)

解説

事案

上告人Xは、亡Dの相続財産管理人B1を被告として金銭の支払を求める訴え(前訴)を提起した。前訴では、相続人による限定承認が認められた。その結果、「相続財産の限度で……支払え」との給付判決(留保付判決)が最高裁まで争われたうえで確定した。

前訴第一審でXは400万円とこれに対する年5分の損害金を請求した。第一審は、相続財産の限度で66万9000円と損害金の支払を命じ、その余を棄却した。Xは敗訴部分の取消しを求めて控訴したが、控訴の趣旨では棄却された333万1000円の元本のみを請求し、損害金の支払は求めなかった。

その後Xは、Dの相続人であるB1・B2・B3らに対し本訴を提起した。Xは、前訴の第二審口頭弁論終結時以前に存在した法定単純承認(民法921条)の事由を主張し、前訴で認容された債権について留保のない支払を求めた。

なお、本訴の控訴状には第一審被告B4の氏名・住所の記載がなく、控訴の趣旨にもB4に対する請求の記載がなかった。Xは控訴期間経過後に「控訴状補正申立」をした。

争点

  • 相続財産の限度で支払を命ずる留保付判決が確定した後、債権者が基準時前の限定承認と相容れない事実(法定単純承認)を主張して、無留保の判決を求める後訴を提起できるか
  • 債権者が自ら留保付で請求し留保付判決がされた場合も同様か
  • 第一審の請求棄却部分の一部についてのみ控訴の趣旨で支払を求めた場合、残部(損害金部分)は確定するか
  • 控訴状に被控訴人として記載のない共同被告に対し、控訴期間経過後に補正で控訴を追加できるか

判旨

上告棄却。

判決主文での留保の明示

  • 被相続人の債務について相続人に対する給付訴訟で、債務の存在とともに限定承認が認められたときは、裁判所は判決主文で「相続財産の限度で」支払を命ずべきである。債務名義上、相続人の限定責任を明らかにするためである。

基準時前の事実による蒸し返しの禁止(規範)

  • 留保付判決が確定した後、債権者が、前訴の事実審口頭弁論終結時以前に存在した限定承認と相容れない事実(例:民法921条の法定単純承認の事実)を主張して、無留保の判決を求める新訴を提起することは許されない。
  • 限定承認の存在・効力についての前訴の判断には、既判力に準ずる効力がある。
  • この理は、相続人の限定承認の主張が認められた場合でも、債権者が自ら留保付で請求した場合でも異ならない。

本件へのあてはめ

  • 相続財産管理人に対する前訴判決の効力は、相続分に応じて相続人に及ぶ。
  • 本訴の当該請求部分は、前訴確定判決に抵触し、またこれに遮断されて許されず、不適法として却下を免れない。

付随的判断

  • 第一審の請求棄却部分のうち、控訴の趣旨で支払を求めなかった部分(損害金部分)は、控訴がなく確定する。
  • 控訴状にB4の記載がない以上、B4との関係では第一審判決が確定しており、控訴期間経過後の補正は認められない。

判決文から

「判決主文において、相続人に対し相続財産の限度で右債務の支払を命ずべきである。」

限定承認は主文で明示される(留保付判決)

「限定承認の存在及び効力についての前訴の判断に関しては、既判力に準ずる効力があると考えるべきであるし」

訴訟物外の判断に既判力に準ずる効力を認めた核心

「権利関係の安定、訴訟経済及び訴訟上の信義則等の観点から、判決の基礎となる口頭弁論において主張することのできた事由に基づいて判決の効力をその確定後に左右することは許されないとするにある」

請求異議の遮断規定の趣旨を第二の根拠とする

「債権者がみずから留保付で請求をし留保付判決がされた場合であるとによつて異なるところはないと解すべきである。」

留保が誰の主張によるかを問わない

「第一審判決の請求棄却部分のうち、原告(控訴人)において右支払を求めなかつた部分については、原告(控訴人)の控訴はなく確定したものと解すべきである。」

控訴の趣旨で求めない部分は確定する

この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。