東京都中央卸売市場事件
行政財産の使用許可を本来の用途上の必要から撤回しても、使用権喪失そのものは特別の事情がない限り補償を要しない
出題:司法H23・司法H26・予備H23
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 昭和44(オ)628 借地権確認土地引渡等請求
- 裁判
- 判決・破棄差戻
- 判例集
- 民集 第28巻1号1頁
- 参照法条
- 憲法29条3項,国有財産法19条,国有財産法24条,地方自治法238条の4,地方自治法238条の5,地方自治法(昭和38年法律第99号による改正前のもの)213条1項,東京都都有財産規則(昭和19年東京都規則第4号)3条,東京都都有財産条例(昭和23年東京都条例第3号)3条,東京都都有財産条例(昭和29年東京都条例第17号)12条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
都有行政財産である土地についての使用許可の取消と損失補償
裁判要旨
都有行政財産である土地について建物所有を目的とし期間の定めなくされた使用許可が当該行政財産本来の用途又は目的上の必要に基づき将来に向つて取り消されたときは、使用権者は、特別の事情のないかぎり、右取消による土地使用権喪失についての補償を求めることはできない。
解説
事案
東京都(上告人)の所有地1800坪は、中央卸売市場築地本場の指定区域内にある行政財産であった。被上告人は昭和21年、この土地について使用許可を受けた。許可の内容は、期間の定めなく、クラブ・レストラン・喫茶等を営むための建物を建築所有する目的とするものであった。この使用関係は私法上の契約ではなく、市場業務規程に基づく行政財産の使用許可処分によるものである。
その後、進駐軍の接収のため756坪の許可が取り消された。被上告人は残りの1044坪の一部に店舗を建てて喫茶店等を営んだが、その余の部分は事業計画が都の承認を得られず、利用されないままであった。
朝鮮戦争のころから市場への入荷が急増し、市場自らが土地を使う必要が生じた。また、被上告人の土地使用は不必要・不適切と認められた。そこで都は昭和32年、960坪について使用許可を取り消し、行政代執行で建物を取消対象外の84坪上に移転して土地を回収した。
原審は、使用権喪失は特別の犠牲に当たるとして憲法29条3項に基づく補償を認め、補償額を更地価格の60%として請求を一部認容した。これに対し都が上告した。
争点
- 都有行政財産の使用許可の取消(撤回)による損失補償の根拠(法令・条例に規定がない場合)
- 期間の定めのない使用許可の撤回による使用権喪失そのものが補償の対象となるか
判旨
原判決中都敗訴部分を破棄差戻し。
- 補償の根拠:当時の地方自治法・都条例には補償規定がない。しかし、国有財産法24条(貸付期間中の契約解除による損失補償。同法19条で行政財産に準用)は、公平の原則から都有行政財産の使用許可にも類推適用される。期間の定めがなくても、許可の目的・内容・条件に照らして一応の使用予定期間を認めうるとき(建物所有目的など)は類推適用が肯定される。したがって、直接憲法29条3項に基づいて論ずるまでもない。
- 補償の要否(規範):使用権者が受忍すべき損失は、補償を要する損失に当たらない。期間の定めのない行政財産の使用権は、当該行政財産本来の用途または目的上の必要が生じたときは原則として消滅すべきものであり、その制約が権利自体に内在している。したがって、そのような必要に基づく取消による使用権喪失は、特別の事情がない限り補償を要しない。
- 特別の事情の例:①使用権者が対価を支払ったが、使用収益によりその対価を償却するに足りない期間内に必要が生じた場合、②許可に際し別段の定めがある場合など。
判決文から
「国有であれ都有であれ、行政財産に差等はなく、公平の原則からしても国有財産法の右規定は都有行政財産の使用許可の場合にこれを類推適用すべきものと解するのが相当であつて」
補償規定の欠缺を国有財産法の類推で埋めた部分
「本件損失補償については、これを直接憲法二九条三項にもとづいて論ずるまでもないのである。」
憲法直接請求ではなく法律の類推で処理した点
「使用許可の取消に際して使用権者に損失が生じても、使用権者においてその損失を受忍すべきときは、右の損失は同条のいう補償を必要とする損失には当たらないと解すべき」
受忍すべき損失は補償不要という一般論
「当該行政財産本来の用途または目的上の必要を生じたときはその時点において原則として消滅すべきものであり、また、権利自体に右のような制約が内在しているものとして付与されているものとみるのが相当である。」
内在的制約論の核心。短答で頻出の文言
「使用権者が使用許可を受けるに当たりその対価の支払をしているが当該行政財産の使用収益により右対価を償却するに足りないと認められる期間内に当該行政財産に右の必要を生じた」
補償が必要となる特別の事情の典型例
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
