猿払事件
国家公務員の政治的行為の禁止と刑罰を、目的・合理的関連性・利益均衡の三点で審査し合憲とした大法廷判決
出題:司法H24・司法H25・司法H30・司法R1・司法R3・予備H30
- 裁判所
- 最高裁判所大法廷
- 事件番号
- 昭和44(あ)1501 国家公務員法違反
- 裁判
- 判決・破棄自判
- 判例集
- 刑集 第28巻9号393頁
- 参照法条
- 国家公務員法102条1項,国家公務員法110条1項19号,人事院規則14―7,人事院規則5項3号,人事院規則6項13号,憲法15条1項,憲法16条,憲法21条,憲法31条,憲法41条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一、国家公務員法一〇二条一項、人事院規則一四―七・五項三号、六項一三号による特定の政党を支持する政治的目的を有する文書の掲示又は配布の禁止と憲法二一条 二、国家公務員法一一〇条一項一九号の罰則と憲法三一条 三、国家公務員法一一〇条一項一九号の罰則と憲法二一条 四、国家公務員法一〇二条一項における人事院規則への委任の合憲性 五、国家公務員法一〇二条一項、人事院規則一四―七・五項三号、六項一三号の禁止に違反する文書の掲示又は配布に同法一一〇条一項一九号の罰則を適用することが憲法二一条、三一条に違反しないとされた事例
裁判要旨
一、国家公務員法一〇二条一項、人事院規則一四―七・五項三号、六項一三号による特定の政党を支持する政治的目的を有する文書の掲示又は配布の禁止は、憲法二一条に違反しない。 二、国家公務員法一一〇条一項一九号の罰則は、憲法三一条に違反しない。 三、国家公務員法一一〇条一項一九号の罰則は、憲法二一条に違反しない。 四、国家公務員法一〇二条一項における人事院規則への委任は、同法八二条による懲戒処分及び同法一一〇条一項一九号による刑罰の対象となる政治的行為の定めを一様に人事院規則に委任しているからといって、憲法に違反する立法の委任ということはできない。 五、国家公務員法一〇二条一項、人事院規則一四―七・五項三号、六項一三号の禁止に違反する本件の文書の掲示又は配布(判文参照)に同法一一〇条一項一九号の罰則を適用することは、たとえその掲示又は配布が、非管理職の現業公務員であって、その職務内容が機械的労務の提供にとどまるものにより、勤務時間外に、国の施設を利用することなく、職務を利用せず又はその公正を害する意図なく、かつ、労働組合活動の一環として行われた場合であつても、憲法二一条、三一条に違反しない。
解説
事案
被告人は、北海道の鬼志別郵便局に勤める郵政事務官で、地区労働組合協議会の事務局長であった。昭和42年の衆議院議員選挙に際し、協議会の決定に従い、日本社会党を支持する目的で、同党公認候補者の選挙用ポスター6枚を自ら公営掲示場に掲示した。そのほか、合計約184枚のポスターの掲示を他人に依頼して配布した。この行為が国公法102条1項、人事院規則14-7の5項3号・6項13号の政治的行為にあたるとして、国公法110条1項19号違反で起訴された。
第一審は、被告人の行為について次の点を認定した。
- 非管理職の現業公務員で、職務内容が機械的労務の提供にとどまる者の行為である。
- 勤務時間外に、国の施設を利用せず、職務を利用せずその公正を害する意図もなく行われた。
- 労働組合活動の一環として行われた。
そのうえで、このような行為に刑罰を科すことは、適用される限度で合理的にして必要最小限の域を超え、憲法21条・31条に違反するとして無罪とした。原審もこれを是認したため、検察官が上告した。
争点
- 国公法102条1項・規則5項3号・6項13号による政治的文書の掲示・配布の禁止が憲法21条に違反するか
- 禁止違反に刑罰を科す国公法110条1項19号が憲法31条・21条に違反するか
- 懲戒処分の対象と刑罰の対象を区別せず一律に人事院規則に委任することが違憲な委任か
- 非管理職・現業・勤務時間外・組合活動等の事情のもとで罰則を適用することが違憲か(適用違憲の可否)
判旨
破棄自判で、被告人を罰金5000円に処した。
規範
- 公務員の政治的中立性を損なうおそれのある政治的行為の禁止は、合理的で必要やむをえない限度にとどまる限り、憲法上許される。
- その判断は、①禁止の目的、②目的と禁止される行為との関連性、③禁止により得られる利益と失われる利益との均衡、の三点から検討する。
当てはめ
- 目的(行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼の確保)は正当である。
- 職種・職務権限、勤務時間の内外、国の施設利用の有無等を区別しなくても、合理的関連性は失われない。
- 意見表明への制約は、行動の禁止に伴う間接的・付随的制約にすぎず、利益の均衡も失しない。
罰則・委任・適用違憲
- 罰則の要否と法定刑は立法政策の問題であり、裁量の著しい逸脱はないので、憲法31条・21条に違反しない。
- 懲戒と刑罰の対象を一様に人事院規則に委任しても、違憲な委任ではない。
- 本件の事情のもとで罰則を適用しても、憲法21条・31条に違反しない。
判決文から
「公務員の政治的中立性を損うおそれのある公務員の政治的行為を禁止することは、それが合理的で必要やむをえない限度にとどまるものである限り、憲法の許容するところであるといわなければならない。」
合憲性判断の基本命題
「禁止の目的、この目的と禁止される政治的行為との関連性、政治的行為を禁止することにより得られる利益と禁止することにより失われる利益との均衡の三点から検討することが必要である。」
いわゆる猿払基準(三点審査)
「たとえその禁止が、公務員の職種・職務権限、勤務時間の内外、国の施設の利用の有無等を区別することなく、あるいは行政の中立的運営を直接、具体的に損う行為のみに限定されていないとしても、右の合理的な関連性が失われるものではない。」
一律禁止でも合理的関連性ありとした部分
「単に行動の禁止に伴う限度での間接的、付随的な制約に過ぎず、かつ、国公法一〇二条一項及び規則の定める行動類型以外の行為により意見を表明する自由までをも制約するものではなく」
間接的・付随的制約論
「このような見解は、違法性の程度の問題と憲法違反の有無の問題とを混同するものであつて、失当というほかはない。」
弊害軽微論を違法性の問題とした
「懲戒処分と刑罰とは、その目的、性質、効果を異にする別個の制裁なのであるから、前者と後者を同列に置いて比較し、司法判断によつて前者をもつてより制限的でない他の選びうる手段であると軽々に断定することは、相当ではないというべきである。」
LRAの基準による原審の判断を否定
「法令が当然に適用を予定している場合の一部につきその適用を違憲と判断するものであつて、ひつきよう法令の一部を違憲とするにひとしく」
下級審の適用違憲の手法への批判
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
