最判昭和48年7月3日
本人が無権代理人を相続した場合、追認を拒絶できる地位にあっても、相続した民法117条の責任は免れない
出題:司法H26・予備H26
- 裁判所
- 最高裁判所第三小法廷
- 事件番号
- 昭和46(オ)138 貸金請求
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第27巻7号751頁
- 参照法条
- 民法113条,民法117条,民法896条
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
民法一一七条と無権代理人を相続した本人の責任
裁判要旨
無権代理人を相続した本人は、無権代理人が民法一一七条により相手方に債務を負担していたときには、無権代理行為について追認を拒絶できる地位にあつたことを理由として、右債務を免れることができない。
解説
事案
貸金請求事件である。無権代理人が行った無権代理行為について、無権代理人は民法117条により相手方に対して責任(債務)を負っていた。その後、無権代理人が死亡し、本人を含む複数の者が無権代理人を共同相続した。
原審は、相続人ら(上告人ら)が117条の責任を承継すると判断した。判決はこれを「損害賠償債務、責任」と表現したが、最高裁は、これが履行債務・履行責任も含む趣旨であると説明している。
上告人らは、最判昭和37年4月20日を引用して上告した。主張の要旨は、本人は無権代理行為の追認を拒絶できる地位にある以上、117条の債務を免れる、また本人以外の共同相続人も債務を免れるというものである。
争点
- 無権代理人が民法117条により負う債務は、本人が無権代理人を相続した場合にも本人に承継されるか
- 本人が追認拒絶できる地位にあることを理由に、承継した117条の債務を免れることができるか
- 共同相続人の一人が本人である場合、本人以外の相続人は117条の債務を承継するか
- 最判昭和37年4月20日との関係
判旨
上告棄却。
規範:民法117条による無権代理人の債務は相続の対象となる(民法896条)。このことは、本人が無権代理人を相続した場合でも変わらない。したがって、本人は相続によりこの債務を承継する。本人として無権代理行為の追認を拒絶できる地位にあったからといって、この債務を免れることはできない。
共同相続の場合:共同相続人のうち一人が本人であっても、本人以外の相続人が無権代理人の債務を相続しないとか、債務を免れうると解すべき理由はない。
責任の内容:承継される117条の責任には、損害賠償責任だけでなく履行責任も含まれる。
先例との関係:最判昭和37年4月20日は、本人が無権代理人を相続しても無権代理行為が当然に有効となるわけではないと判示したにとどまる。117条の債務を負う無権代理人を相続した本人の責任には触れていないから、本判決と抵触しない。
判決文から
「民法一一七条による無権代理人の債務が相続の対象となることは明らかであつて、このことは本人が無権代理人を相続した場合でも異ならない」
117条債務の相続性を本人相続型にも及ぼした核心部分
「本人として無権代理行為の追認を拒絶できる地位にあつたからといつて右債務を免れることはできないと解すべきである。」
追認拒絶権と117条責任の承継を切り分けた結論
「まして、無権代理人を相続した共同相続人のうちの一人が本人であるからといつて、本人以外の相続人が無権代理人の債務を相続しないとか債務を免れうると解すべき理由はない。」
本人以外の共同相続人も117条債務を承継する
「原判示のいう損害賠償債務、責任は履行債務、責任を含む趣旨であることが明らかである。」
承継する責任に履行責任も含まれることを示す
「本人が無権代理人を相続した場合、無権代理行為が当然に有効となるものではない旨判示したにとどまり」
昭和37年判決との棲み分けを明示
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