日光太郎杉事件
土地収用法20条3号の事業認定につき、考慮不尽・他事考慮・過大評価による判断過程の過誤を理由に違法とした高裁判決
出題:司法H22・司法H23・司法H24・司法H26・予備R5
- 裁判所
- 東京高等裁判所
- 事件番号
- 昭和44(行コ)12 事業の認定,土地細目の公告及び土地収用裁決取消請求控訴事件
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
1 建設大臣が土地収用法に基づき国立公園日光山内特別保護地区の一部に属する土地についてした事業認定を,土地収用法20条3号の要件を満たしていないのにされた違法があるとして取り消した事例 2 土地収用法による事業認定及び土地細目の公告は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たるか 3 土地収用法による事業認定及び土地細目の公告の取消しの訴えの提起後これに併せて収用裁決の取消しを求める訴えが提起された場合においても,先行処分たる事業認定等の取消しを求める訴えの利益は失われないとした事例 4 土地収用法20条3号にいう事業認定の要件である「事業計画が土地の適正且つ合理的な利用に寄与するものであること」の解釈
裁判要旨
2 土地収用法による事業認定及び土地細目の公告は,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たる。 4 土地収用法20条3号にいう事業認定の要件である「事業計画が土地の適正且つ合理的な利用に寄与するものであること」とは,当該土地がその事業の用に供されることによって得られるべき公共の利益と,当該土地がその事業の用に供されることによって失われる利益(この利益は私的なもののみならず,ときによっては公共の利益をも含む。)とを比較衡量した結果,前者が後者に優越すると認められる場合をいう。
解説
事案
栃木県知事(起業者)は、交通量の増加に対処するため、国道120号のうち神橋付近の約280メートルの区間を拡幅する事業を計画した。建設大臣はこれについて土地収用法に基づく事業認定をし、続いて土地細目の公告、さらに収用裁決がされた。
収用の対象となったのは東照宮の境内地である。この土地は国立公園日光山内特別保護地区の一部に属し、日光発祥の史実・伝説をもつ。計画が実施されると、丘陵部が削り取られ、太郎杉を含む巨杉15本が伐採され、蛇王権現は後方へ移転し、跡地には二段の石垣が構築される。
起業者は、現道拡幅のA案のほか、B・C・D案(トンネル・バイパス等)を比較した。そのうえで、事業費が最も安く(約4300万円、C案は約13億5100万円)、工期が最も短いA案を採用した。申請では東京オリンピック開催に伴う交通量増加も理由に挙げていた。自然公園審議会は、昭和38年の強風による倒木で景観が荒廃した状況を見たうえで、条件付きで現状変更を可決した。
東照宮は、事業認定・土地細目の公告の取消訴訟を提起し、その係属中にされた収用裁決の取消訴訟も併合された。第一審は請求を認容し、控訴審である本判決は控訴を棄却した。
争点
- 土地収用法による事業認定及び土地細目の公告は抗告訴訟の対象となる処分か
- 後に収用裁決の取消訴訟が提起・併合された場合、先行処分(事業認定等)の取消しを求める訴えの利益は失われるか
- 土地収用法20条3号「事業計画が土地の適正且つ合理的な利用に寄与するものであること」の意義
- 同号の判断に関する建設大臣の裁量判断の違法性の審査方法
判旨
結論:本件事業認定は土地収用法20条3号の要件を欠き違法であり、取り消される。後続の土地細目の公告・収用裁決も違法として取り消される(控訴棄却)。
訴訟要件
- 事業認定及び土地細目の公告は、取消訴訟の対象となる行政処分である。
- 先行処分の取消訴訟の係属中に収用裁決がされ、その取消訴訟が提起・併合されても、先行処分の取消しを求める訴えの利益は失われない。
20条3号の規範
- 同号の要件は、その土地を事業の用に供することで得られる公共の利益と、それによって失われる利益(私的利益のみならず、時として公共の利益を含む)とを比較衡量し、前者が後者に優越すると認められる場合に存在する。
裁量審査の規範
- この判断には一定の裁量がある。
- しかし、行政庁が、本来最も重視すべき諸要素・諸価値を不当、安易に軽視して当然尽くすべき考慮を尽くさず、または本来考慮に容れるべきでない事項を考慮し、もしくは本来過大に評価すべきでない事項を過重に評価し、これにより判断が左右されたと認められる場合には、裁量判断の方法ないし過程に誤りがあるものとして違法となる。
判決文から
「その土地がその事業の用に供されることによつて失なわれる利益(この利益は私的なもののみならず、時としては公共の利益をも含むものである。)とを比較衡量した結果前者が後者に優越すると認められる場合に存在する」
20条3号の比較衡量の規範
「本来最も重視すべき諸要素、諸価値を不当、安易に軽視し、その結果当然尽すべき考慮を尽さず、または本来考慮に容れるべきでない事項を考慮に容れもしくは本来過大に評価す、べきでない事項を過重に評価し」
判断過程統制の三類型を示した核心部分
「これらの過誤がなく、これらの諸点につき正しい判断がなされたとすれば、控訴人建設大臣の判断は異なつた結論に到達する可能性があつたものと認められる」
過誤が結論を左右したことを違法の要件とする
「先行の行政処分が適法に行なわれることが、後続する処分の要件をなし、先行処分に瑕疵があつて違法であるときは、後続の処分は当然に違法となるものというべきである」
一連の収用手続における先行処分と後続処分の関係
「行政処分の適否は、処分当時を基準として判定さるべきものである」
処分後の事情は直接の違法事由にならない
この解説は AI が作成しています。判決全文に基づいて書き、別の AI が全文と照合して確認していますが、誤りが残っている可能性があります。 判決文の引用は全文と一字一句照合したものだけを載せています。大事な点は判決全文で確かめてください。
