最判昭和48年4月5日
同一事故・同一身体傷害による財産的損害と精神的損害の賠償請求の訴訟物は1個であり、一部請求の過失相殺は外側説によるとした判例
出題:司法H22・予備H27・予備R4・予備R6・予備R8
- 裁判所
- 最高裁判所第一小法廷
- 事件番号
- 昭和43(オ)943 損害賠償請求
- 裁判
- 判決・棄却
- 判例集
- 民集 第27巻3号419頁
- 参照法条
- 民訴法186条,民訴法224条1項,民法709条,民法710条,民法722条2項
判示事項・裁判要旨
裁判所ウェブサイトの判例情報より(原文のまま)
判示事項
一、身体傷害による財産上および精神上の損害の賠償請求における請求権および訴訟物の個数 二、不法行為による損害賠償の一部請求と過失相殺
裁判要旨
一、同一事故により生じた同一の身体傷害を理由として財産上の損害と精神上の損害との賠償を請求する場合における請求権および訴訟物は、一個である。 二、不法行為に基づく一個の損害賠償請求権のうちの一部が訴訟上請求されている場合に、過失相殺をするにあたつては、損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額をこえないときは右残額を認容し、残額が請求額をこえるときは請求の全額を認容することができるものと解すべきである。
解説
事案
交通事故で負傷したBは、相手方である上告人に損害賠償を請求した。事故についてはBにも過失があった。
- 第一審:Bは療養費約29万円、逸失利益約1128万円、慰謝料200万円の損害を主張した。そのうち療養費・慰謝料の全額と逸失利益の内金150万円、合計約379万円を請求した。第一審は損害総額約1145万円を認定し、3割の過失相殺と保険金10万円の控除をしても約791万円となるとして、請求全額を認容した。
- 控訴審:Bは附帯控訴で請求を約422万円拡張した。上告人は、拡張部分について消滅時効の抗弁を出した。原審は財産上の損害約945万円から7割を減じて約283万円とし、慰謝料はBの過失を斟酌して70万円とした。保険金を控除した約343万円の支払を命じ、その余を棄却した。拡張部分は、損害額を超えるとして時効の判断をせずに棄却した。
- 原審の認容額のうち財産上の損害部分は、当初の請求で財産上の損害として示された額を超えていた。上告人は、申し立てていない事項について判決したもので違法だとして上告した。
争点
- 同一事故による同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害の賠償請求権・訴訟物は1個か(処分権主義、旧民訴法186条・現246条)
- 費目ごとの請求額を超えて認容することが、申立事項を超える判決にあたるか
- 一部請求の場合に、過失相殺による減額の基礎を損害全額とするか請求額とするか
判旨
上告棄却。
- 訴訟物の個数:同一事故で生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害は、原因事実と被侵害利益が共通である。したがって賠償請求権は1個であり、両者をあわせて請求する場合も訴訟物は1個である。そのため、費目ごとに示された金額を超えて財産上の損害を認めても、請求総額の範囲内であれば申し立てない事項について判決したことにはならない。
- 一部請求と過失相殺(外側説):1個の損害賠償請求権の一部が訴訟上請求されている場合、過失相殺はまず損害の全額から過失割合による減額をして行う。その残額が請求額を超えないときは残額を認容し、超えるときは請求の全額を認容することができる。
- 原審の認定額は当初の請求額の範囲内であるから、拡張部分は理由がない。拡張部分に対する消滅時効の抗弁は判断不要である。
判決文から
「本件のような同一事故により生じた同一の身体傷害を理由とする財産上の損害と精神上の損害とは、原因事実および被侵害利益を共通にするものであるから、その賠償の請求権は一個であり」
請求権1個の理由は原因事実・被侵害利益の共通性
「損害の全額から過失割合による減額をし、その残額が請求額をこえないときは右残額を認容し、残額が請求額をこえるときは請求の全額を認容することができるものと解すべきである。」
外側説の規範そのもの
「このように解することが一部請求をする当事者の通常の意思にもそうものというべきであつて」
外側説の根拠は一部請求者の合理的意思
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